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鑑賞雑記「ケイコ目を澄ませて」

心待ちにしていた作品。
「ケイコ目を澄ませて」。

盲目のプロボクサー、
ケイコの葛藤や日常を描いた作品。
耳が聴こえないケイコ。
だけど劇中ではさまざまな音が
クローズアップされていたように思えた。

紙に書くボールペンの音
縄跳びの音
誰かの話声
ミットに当たるグローブの音
息を吐く音

何気ない生活音やちょっとした音が
耳にどんどん入ってきた。
ケイコの代わりにそれらの音に
耳を澄ませているかのように。

「逃げ出したい、だけど諦めたくない」

夢を追いかけることや何かを続けることは
苦しくてしんどくて
どんなに好きなことであっても
逃げ出したくなる気持ちをどこかで
隠しながら、抑えながら
闘い続けている人も多いのではないだろうか。

私もそのひとりだ。
いろんな葛藤を抱えながら
「本当にこれが私のやりたいことなのか」
という自問自答は常にまとわりついている。

だから、ケイコを見ていて
心の奥にしまい込んでいる感情をえぐり出されるような思いがした。

迷いながらもトレーニングを続けるケイコ。
その佇まいや仕草、表情、目の動きから
言葉を発さずともケイコのいろんな想いが
痛いくらい伝わってきた。

そんな迷いに一筋の光が見えたとき
ケイコの目の輝きが変わった。
美しかった。とても、とても。

途中から、涙があふれて
止まらなくなってしまった。
客電がついてもなかなか
立ちあがることができなかった。

久しぶりに映画館でぼろ泣きして
リセットのために立ち寄ったカフェで
ジブラルタを飲みながら
こっそり泣いて
帰りの車のなかで声をあげて泣いた。

頭の中が空っぽになった。
でも、心はじんじんと痛みを伴いながらも
やさしく、心地よい熱を帯びている。
最近抱えていた、「迷い」みたいなものは
どこかに飛んで行ってしまったようだ。

感じ方や捉え方はさまざまだと思うから
あまり映画を
人に勧めることはしないんだけれど
率直に「観てほしい」と言える作品。

あと、エンドロールは最後まで観るべし。
スクリーンが真っ暗になるその瞬間まで
ケイコの気配を感じてほしい。

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