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観劇雑記「海王星」

寺山修二の世界観を踏襲する
舞台セットや衣装、白塗りの出演者たち。
昭和歌謡のエッセンスを感じる楽曲や
詩的なセリフにふと、20代の頃に観た
「薔薇の葬列」を思い出した。

父、息子、父の婚約者の魔子。
救いようのない三角関係は
三人を取り巻く女たち(なみやソバカス)
の存在によって
いつしか多角形に変わっていく。
そして、二輪の薔薇は、嫉妬という炎に囲まれ
焼き尽くされてしまった。

最後に魔子が言い放った
「かわいそうなアタシ」
このセリフがこの悲劇の根幹を物語っているように感じた。

だから、最後まで
父は、息子への「親子愛」を貫き
息子は、魔子への「恋愛」に身を焦がし
魔子は、自分への「自己愛」を守り続けた。
そんな風に私には思えた。

残された女たちは何を思い生きていくのだろうか。
きっと、なみは、重い十字架を背負い続け、
ソバカスは、若き日の旅の思い出話として語り続けるだろう。

そして、魔子は、今度は二晩泣いて、
また新しい恋を見つけるのだと思う。

それは、決して彼女が魔性の女ではなく
自分への普遍の愛がほしいと願う無垢な女だから。
これからも、満たされることはないかもしれないけれど
それでも愛する自分と生きていくために
他者からの「愛」を探し続けるのだと思う。

[DATA]
音楽劇「海王星」
1月16日 13:00
富山・オーバードホール

作:寺山修司
演出:眞鍋卓嗣
音楽・音楽監督:志磨遼平(ドレスコーズ)

出演:山田裕貴 松雪泰子 清水くるみ 伊原六花 佐藤誓 冨永竜 山岸門人 澤魁士 眼鏡太郎 野々山貴之 内田慈 坪井木の実 白木原しのぶ 小山雲母 片桐美穂 金井美樹 島ゆいか 吉井乃歌 大谷亮介 中尾ミエ ユースケ・サンタマリア

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