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絵本探求講座第4期:第2回振り返り

2023年10月1日(日)絵本探求講座第4期第2回 オンライン受講
講師:東洋大学文学部国際文化コミュニケーション学科
   准教授 竹内美紀先生

遅くなってしまいましたが、第2回のリフレクションを記載します。
今回も、たくさんの情報を教えていただき、絵本の奥深さをさらに考えさせられた講義でした。


1.講義から学んだこと

1)リフレクションについて
最初に前回のリフレクションについて先生からお話があった。

自分のリフレクションを書いてください。そして、今日の自分が次のときに成長してればいいわけで、最初から授業を網羅的にできるわけがないです。
・自分の今までの読んできたものや子育てをベースに、私がお話したところを使えるところをうまくつかみ取って、自分の経験を付加価値をつけて言語化する、そういう時間、そういうチャンスだと思ってください。
・まずは量じゃなくてね、自分の言葉で自分で考えて、自分で書くという姿勢を、身につけてほしいと思います。

ミッキー先生のお言葉より

先生のお話からは、何度も「自分」というお言葉がありました。
自分のリフレクション、自分の経験、自分の言葉、自分で考える。
この文章を1つとっても、コピーではない自分のオリジナリティが大事だと改めて気づかされました。
新しい世界に行くと、知らないことばかりで、その場を何とか乗り切るために誰かの言葉や、あり触れている言葉を容易く借りて安心をしてしまう自分がいたので、それではいけないと、痛感しました。

2)オノマトペの補い
オノマトペは、私の中で擬態語や擬音語と曖昧な位置づけでしかありませんでしたが、今回の講義を通して絵本を翻訳する際に、補填の役割を持っていることは新たな気づきであった。

日本語は動詞が少ないから、その分オノパトペで補っている。
・例えば、歩くっていうウォーク。日本語の場合は、「歩く」しかないか   ら、ブラブラ歩くとかダラダラ歩くとか、ぴょんぴょん歩くとかいろんなオノマトペをつけて歩くを、表現する。
・言葉っていうのは最初に言ってる言葉の方が印象が強い。だけど日本語の場合は動詞が最後。だから動詞は情報量として最後の方に来ちゃうから、その前に、ぴょんぴょん歩くなど、前にその様子の種類をつけつけないと情報が増えない。

第2回講義より

現在、一語文が出てきた1歳3ヶ月の末っ子に読み聞かせをしている際にも、オノパトペに対しての反応の良さや模倣を試みる姿が印象的である。
絵本で犬が登場すれば「ワンワン」、車は「ブーブー」。
初語期にもオノマトペ。子どもの言葉の獲得にも引き続き注目をしていきたい。

3)訳者の注目する点
詩人や作家によって、翻訳の形態も大きく変わることも今回の大きな学びです。
訳者さんによって、得意とする訳が違うといことや、時代とともに、短い言葉が好まれているということが分かり、今後意識して訳者さんの言葉を見ていきたい。
昨年小学校1年生だった長男は教科書の「スイミー」をある時期毎日音読をしていましたが、思い返しても確かに谷川さんの言葉は短く、歯切れが良かった。
言葉も文章も意識していない時は、そのまま流れていってしまいますが、意識一つで随分変わるということも改めて実感しています。

〇散文と韻文
作家散文で訳されることが多い
 例:石井桃子さん、村上春樹さん
詩人は、短い文や少ない文を韻文で訳されることが多い
 例:谷川俊太郎さん・瀬田貞二さん・工藤直子さん
〇時代の変化
・短い言葉
に変わってきている。
 
例:石井さん訳「ですます調」→谷川さん訳「体言止め」
短い言葉をいかに効果的に使うかという意味で、日本の翻訳は詩人が
 多い

第2回講義より

2.絵本の翻訳とは ー講義後調べたことを中心にー

講義後に、絵本の翻訳ついてさらに深めていきたいと思い、参考文献を少しあたってみました。

1)作品の声をきく

絵本は、対象年齢が低いため、用いられる語彙も限られる。そこで活躍するのが、多義的で平易な日常語である。というわけで、絵本の翻訳は、多義的な原語のどの部分を切りとって、どれだけ豊かな日本語に再生できるかという試練と、つねに向き合うことになる。

谷本誠剛・灰島かり(2006)『絵本をひらく 現代絵本の研究』:46-47

「多義的で平易な日常語を豊かな日本語に再生」
ここが訳者のセンスや力量がかかっているのだと思います。
絵本の翻訳というのは一筋縄では行かないからこその醍醐味であると改めて感じました。
そのまま言語を機械的に変換することは、きっと多くの方ができるのでしょう。(私はできませんが…)
しかし、血の通っている人間が、その人のフィルターを通して訳することで、全く違う作品ができあがるということも大きな学びの一つです。
だからこそ、一人の訳者の多くのファンがつくのかもしれませんね。
いかに目の前の子どもの想像を膨らまし、イメージを持てるか…
全ては訳者の腕にかかっていることも分かりました。
灰島先生やミッキー先生も著書の中で翻訳をすることに対して、下記のように記されていました。

まずは英文で書かれている内容をしっかり把握し、その場面のイメージを頭の中でしっかり立ちあげることです。そして立ちあがったその場面のなかで、これは日本語でなんというか考えること。これが基本です。

灰島かり(2021)『新装版 絵本翻訳教室へようこそ』:6

訳者は、原文自体が「声の文化」を継承した「語り」の文体であることを見抜く目、作品の声を聞き取るための深い読解力、「語り」として聞こえる日本語の表現力を兼ね備えていなければならない。

竹内美紀(2014)『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか』:284 

今まで、訳者も気にせず絵本を手に取っていた私にとっては、学ぶことばかりですが、上記参考文献から、翻訳をするにあたって作品を読み取る力(読解力)、想像しイメージする力(想像力)、そして日本語の引き出しから表現する力が必要だと学びました。

オリジナリティという点で大変印象深かった作品は、瀬田貞二さん訳『三びきのやぎにがらがらどん』です。瀬田さんの訳者としての才能やひらめきを大変感じました。

元の英語ではやぎたちの名前はGruffです。これは「しゃがれ声の」という意味。(中略)そこで訳者の瀬田貞二さんが「しゃがれ声=ガラガラ声」から「がらがら」をとって、それに民話調の「どん」をつけて「がらがらどん」としたのでしょう。あまりにもピッタリなネーミングで、これはもう、この呼び方以外では、この民話を考えることはできなくなりました。

灰島かり(2021)『新装版 絵本翻訳教室へようこそ』:144

2)作品を届けたいという想い

・絵本の翻訳は、英語をきちんと読みとって、的確美しい日本語にするというのが基本です。しかし、的確かつ美しいというだけでは不十分で、元の作品の持つ言葉の力(別の言い方をすれば、かな)を十分に伝えなくてはなりません。
・まず作者に共感し、ここに書かれている世界をぜひ読者に届けたい、という気持ちを持つことが大切なのだと思います。

灰島かり(2021)『新装版 絵本翻訳教室へようこそ』:154

様々な作品に触れ、絵本の目利きになることも大事であると同時に、訳者が作品に対して、根底にある「届けたい」という思いが原動力となっていくことも、強く感じさせられました。
想像でしかありませんが、作家も訳者も自分の文章を届けるまでの道のりは孤独なものなのかもしれません。
その中で、やはり子ども達に知ってほしい届けたいという気持ちこそが心に響く作品を産むのだと感じました。

3)時代性や社会性という背景への注目

翻訳を考えるときには、それぞれの作者や訳者個人が抱く子どものイメージとともに、それを取り巻く時代や社会がもたらす子どものイメージをも考察に入れる必要がある。

竹内美紀(2014)『石井桃子の翻訳はなぜ子どもをひきつけるのか』:13 

私は、今までの読み継がれてきた「名作」「古典」と呼ばれるものに惹かれ、長い間たくさんの子ども達に読まれてきた作品はぜひ後世に残し続けたいという思いから、子ども達にも積極的に伝えていきたいと考えていました。
その気持ちは今も変わっていませんが、講義の中でも翻訳の賞味期限というお話もあり、また変化が激しい時代において、「今」この時代に届けなければいけない絵本もあるのではないかと考えるようになりました。
具体的には、『せかいでいちばんつよい国』や、『戦争をやめた人たち』の絵本を我が子に読み聞かせをすることで、子ども達と今世界で行われている戦争の話のきっかけとなり、絵本から想像力も知識も蓄積されているという確信があります。

『せかいでいちばんつよい国』
作:デビッド・マーキー
訳:なかがわちひろ
出版社:光村教育図書(2005年4月)

『戦争をやめた人たち-1914年のクリスマス休戦-』
作:鈴木まもる
出版社:あすなろ書房 (2022年5月)


3.今回選書した絵本について

『ルピナスさん』
作:バーバラクーニー
訳:掛川恭子
出版社:ほるぷ出版(1987年)

『ルピナスさん』の考察は別にこちらに後ほどリンクを貼りたいと思います。(すみません。)

4.今後の課題・抱負

9月から受講させていただいているこちらの絵本探求講座は全てが学びであり、大変面白く感じています。
多くの絵本を読んでみたいし、先生が紹介された参考文献にも目を通してみたい。
ただ、その中で今の私にとって強く感じることは、「時間に対して自分のリソース不足」です。
平たく言うと、「とにかく時間がない」という言葉に尽きます。
子育てや仕事で1日の大半の時間を費やしていまい、絵本の勉強をしたいと思ってもなかなか時間を確保することが難しいという壁。

同時に、「絵本を学んでいきたいという気持ちは揺るがない。」という気持ちも感じています。
全ての時間を絵本に…ということはできないですが、自分のペースで学び続けていこうと改めて決意しました。
できない日があっても良い。まずは継続していくことが大事なのではないかと。
これからも続く長い人生の中で、この絵本に対する探究心を続けていきたいと思っています。

まず当面の目標は、以下2点です。
1.次の講座までには前回のリフレクションを提出する。
2.読んでみたい絵本、手にとってみたい絵本は図書室で借りて子どもと一緒にたくさん読んでみる。

気負わず頑張っていきたいです。



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