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Vol.24 企業研究「苦境のANAホールディングス ~今どんな状況?~」

前代未聞のインパクトをもたらしているコロナ禍の中で、ANAホールディングスは生き残りをかけ奮闘している。

ANAホールディングスはかつてリーマンショックによる大きな苦境を経験した。しかし、今回のコロナ禍によるインパクトはその比でない・・・

企業としての生死が問われている状況にあるのだ!

今回は、企業研究と題し調査したANAホールディングスの現状を様々なデータで示しつつ、コロナ禍の苦境を乗り切るための取り組みをピックアップしてみた。

今までの投稿とはカラーが違うが、こうした調査・研究もまた「働くこと」をテーマとする自分のメインテーマに沿ったものであり、業種は違うものの私個人含め皆さんの日々の職務遂行へ大いに参考となるものと感じる。

では、いこう!

■国内線旅客数の推移

国内線はピーク時の1/3ほどで推移している

ANA国内線

ANA月次輸送実績より作成

国内線は2020年度当初を大底とし、緊急事態宣言下による感染率の低下とともに徐々に回復傾向を見せたが、その後は感染の波と同調するかたちで旅客数は上下変動を繰り返しています。

周りを見渡しても利用のメインはビジネスや一時的な帰省といったところで、旅行による利用は極めて少ないのではないだろうか?
私個人としてもコロナ後はまったく利用していない(利用出来ないと言った方が良いかな)。

自由に空の便を使った国内旅行ができる日はいつになることやら。
個人的には空の旅が好きなので、早く収束することを願うばかりである
('ω')ノ

■国内線旅客数の推移

国際線はほぼ壊滅的である

ANA国際線

ANA月次輸送実績より作成

状況は非常に厳しい

2020年当初より国際線は2019年の新型コロナウイルス感染流行前のピーク時と比較し、旅客数は95%も減少しており、依然としてその数は増えていない状況だ。

感染は未だ落ち着かず、世界的にも人の往来が制限されているので当然と言えば当然であるが、活況を見せていたインバウンド需要もすっかり影を潜めてしまい、実に寂しい限りである(+o+)

失礼な話だが、ウザイぐらいいた中国人観光客もいなくなってしまえば恋しい存在だ・・・

■ANA決算の推移

営業益は赤字が続くが・・・

ANA3か月決算の推移

ANA通期業績

ANA決算短信より作成

コロナ感染の流行に合わせ営業益は赤字転換し、四半期決算の推移をみても最近の決算までひたすら赤字を垂れ流し続けています。

しかし、赤字幅は昨年第一四半期と比べて576億円改善しています。また、売上高も前年比63%回復しているので、大きく改善しているといえます。
国内旅客数の増加やコストカット面による寄与が大きいのでしょう。

固定費のコストカットはおそらく一段落している状況だと考えるので、これはからは売上に直結する旅客数、特に国際線の増加がカギとなるのであろう。

■ANAホールディングス株価

現在の株価はボックス圏で推移

ANA株価

tradingviewより抜粋

上記は2018年から現在までの株価の推移である。

新型コロナウイルス感染が世界的に本格化し始めた2019年2月当初より大きく下降しはじめ、その2か月後には底をうち、現在はボックス圏にあります。

個人的には結構頑張っているなーという印象。
2020年度決算は当然のごとくボロクソなのであったのだが、決算が発表されても下がらずに持ちこたえています。ボロクソはすでに織り込み済みといったところか。

すでにドン底の状況は超えこれ以上悪くなることはないとも言えるので、コロナが収束し少しずつインバウンドが戻ってくるにしたがい同調しながら今後は上昇していくのであろうか?

■コストカット計画

①機材計画

機材は縮小傾向が続いている

・機材数の推移
2020年3月末時点 303機
2021年3月末時点 293機(-10機)
2022年3月末時点予想 281機(-12機)

ANAホールディングスは退役予定であった機材を前倒しで退役しながら、導入予定であった機材を後ろ倒し、一時的に事業規模を縮小するかたちで機材のコストカットを進めています。

機材は保有しているだけでも減価償却費、整備費といった維持費コストがかかります。日常的に運行していれば、1年間で1機体にかかる整備コストは約1.5~2億円とも言われその金額は膨大です。
それが功を奏しているのか、赤字幅が昨年度と比べ大きく改善されています。

しかし今後の計画が難航しそうだ。
先を考えると大きくは減らせないが、維持するのにもコストがかかってしまうというジレンマ。

カギは大韓航空※が成功している航空貨物事業だと考えるが、機材計画については今後も注目していきたい。

※大韓航空は貨物輸送が好調で、アジアでは先駆けて黒字転換している。

②人員計画

ANAホールディングス従業員数はコロナ禍でも増加

ANAホールディングス従業員数

海外では昨年度から従業員のリストラを敢行していたが、日本ではお国柄(良くも悪くも温情体質)また今後の需要回復を見据えANA、JALとも基本的にリストラをしないというスタンスを貫いている。

ANAはもともと東京オリンピックが開かれる2020年を見据え大量採用を行っていたが、逆にそれがあだとなり人件費は固定費の実に3割を占めるとも言われ、負担が重くなっているのが現状である。

リストラはしない。その代わりに従業員へは痛みを伴ってもらう。

令和2年度は3割の給与カットであったが、令和3年度は4割の給与カットとなる見通しとなるようだ。夏冬を合わせたボーナスに相当する年間一時金の支給を見送る方針を、労働組合に提示したことが5月に出されています。
う~ん、厳しいな〜

また、新卒採用(2021年度)も当然見送られています。
ちなみに来年度はどうなのか調べてみると、新卒、既卒とも募集は行っていないようです(+_+)
航空業界志望の学生にとっては残念な話だ。

一方で救いの手もある。
それは雇用調整助成金だ!

社員の95%が雇用調整助成金を活用しており、その金額は上場企業の中で最も多く受け取っているとの事で、昨年度は300億円以上も受給されているそうである。

雇用調整助成金は2021年9月末まで延長されるようであるが、その後がとても心配である。現状コロナ感染の収束が見通せておらず、また回復したとしてもその足取りは非常に重いものだと思われるので、固定費負担の重い人件費に思い切ってメスを入れることも検討せざるを得ない状況になるのかもしれない。

コストカットのため、一部の従業員をグループ外企業へ出向させることが昨年度に話題となったが、「行ったきり戻ってこれない」なんて話になってしまっては本末転倒な話である。

■新しい事業展開

一方で「ピンチ」を「チャンス」と捉え、新しい方面へのチャレンジも行い始めています。

①機内食販売

ANAホールディングスでは、国内線や国際線で実際に提供実績のある冷凍機内食を通販で販売しはじめ、1億円以上の売り上げになっているそうである。事業規模を考えれば貢献的には微々たるものであるが、事業の裾野を広げた良いチャレンジだと思う。

機内食販売について気になった方は下記ページを参照してほしい↓

ANAショッピング
https://www.astyle.jp/top/CSfTop.jsp

②遊覧フライト

遊覧フライトが人気らしい

遊覧フライトとは、空港を発着し数時間の遊覧飛行をして再び発着した空港へ戻ってくる流れのフライトである。つまりフライトだけを楽しむのだ。

直近の開催を調べたところ、成田空港において夏休み期間である8月の7日間で「ANA FLYING HONUチャーターフライト」という名称で、遊覧フライトが開催されていたようである。

所要時間は3時間30分。人数も制限されているのでコロナ対策も万全、しかも参加ノベルティグッズや機内食も付いており、航空好きにはたまらない内容であろう!
実際、遊覧フライトの予約はすぐに埋まってしまったらしい。

「ANA FLYING HONUチャーターフライト」の価格設定
(最安)エコノミークラス通路側 29,800円
(最高)ファーストクラス108,000円

高いと思うか?
安いと思うか?

個人的にはアリだ!
普段は狭い機内にストレスを感じながら搭乗しているので、周りを気にせずゆったり座れ食事もできるなんて素晴らしいではないか?
宿泊もセットにし新たな旅のプランとして今後定着するかもしれませんね。良い思い出になりそうです。

飛行機は多くの場合、90日間に一度は実際に離着陸をしないと、より大がかりな重整備をしなければならない規定になっているそうで、コストカットの面からも遊覧フライトのような活用方法は有効で、他社含め今後大いに増えていくかもしれません。

■まとめ

ANAホールディングスは従来のインバウンド頼りのビジネスモデルから脱却すべく「量から質への変化」をスローガンに、ビジネスの多角化を推し進めています。しかし、コストカットは効果が現れているが、多角化の効果はまだ現れていないのが実情である。

株式には「卵は一つのカゴに盛るな」という相場格言がある。卵を一つのカゴに盛ると、そのカゴを落とした場合には、全部の卵が割れてしまうかもしれないという意味である。つまり、リスク分散が大事だという事。

航空業界は東京オリンピック開催を念頭とし、インバウンドを頼りに共に成長してきた。だが過度に依存しすぎていていたようだ。航空業界なのだから旅客数にフォーカスするのは当然ではあるが、今回の苦境はインバウンド需要に依存しすぎた事が大きな要因の一つであると考える。

しかし悔やんでもしょうがない。時間は巻き戻せないのだから。

ANAホールディングスは現状の赤字でも手元には2023年度末まで耐えられる資金が確保されているそうである。まだ余力は十分。であるならば、旅客数に依存しない経営へ向け果敢にチャレンジをしてほしいと考える。

大ピンチではある。
だが、これをチャンスととらえ、未来永劫継続できる骨太で筋肉質な強い企業へ生まれ変わることを期待している。

今後も注目していきたい\(^o^)/

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