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「人間性と志」を磨く

2010年9月11日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先日、フジサンケイクラシック・ゴルフトーナメントにおいて、石川遼選手(18)と薗田峻輔選手(20)が史上最年少の優勝争いを行った。2人は同じ杉並学院高の卒業生。2年後輩の石川選手が最終ホールで薗田選手に追いつき、プレーオフ4ホールの激戦を石川選手が制した。同世代の2人が大舞台で死力を尽くす姿はとてもすがすがしいものだった。

 彼らを見いだし、指導してきた吉岡徹治さんも2人の戦いを感慨深く見守った。杉並学院高の元教員で、現在はジュニアゴルフマジックチームと代々木高校の監督としてジュニアを育成している。
 プレーオフの2日後、スポーツを通じて環境を考える特定非営利活動法人(NPO法人)、グローバルスポーツアライアンス(GSA、三浦雄一郎理事長)の会合で吉岡さんの話を聞いた。石川選手の初優勝までの道のりや、薗田選手との高校時代のやんちゃな一面などを冗談交じりに紹介してくれた。ジュニア選手を発掘・育成するいくつかのポイントにも触れ、ゴルフの才能や頭の良さと並んで「人間性と志が最も重要」という話が印象深かった。
 天性の才能や頭の良さは教えることはできないが、人間性や志は親や教師、そして指導者が導くことができる。選手として必要とされる資質は技術よりもこの「人間性と志」なのだという。大成するには1日8時間の睡眠以外の16時間をゴルフ中心の生活にして、練習と努力を積み重ねていかなければならないわけで、高い志がなければ続かない。

 吉岡氏はジュニアゴルフマジックを通じて年間2千人ほどの子供たちを教えている。ここで大切にしているのが、カウンセラーとして共に仕事をしている奥様と築いた10カ条だ。
 最初に「具体的な目標を持つ」とあり、「できるだけ明るくおおらかに、ポジティブな発信と自信のある態度でふるまおう!」「どんなに小さなことでも、してもらったことには、笑顔でありがとうと言おう!」などと続く。一見ゴルフと関係なさそうに思えるが、現在の石川選手を見ると、この言葉の土台こそが彼の力になっていると感じる。ゴルフというスポーツは自然を相手に自分と向き合い、まじめに努力することだという。言葉は技術的なもの以上に内面成長を促すことができるのだと思った。

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