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インドネシア最新法令UPDATE Vol.14:オムニバス法によって導入された新コンセプト「リスクベースの許認可」

インドネシア最新法令UPDATE Vol.13:オムニバス法による労働法制への改正-施行規則を踏まえて-では、オムニバス法によりリスクベースの許認可という新たなコンセプトが導入されたことを紹介しました。

2021年2月2日、オムニバス法の施行規則としてリスクベースの許認可に関する政府規則2021年5号が制定されました。これにより、「リスクベースの許認可」の仕組みがより具体的に明らかになりました。そこで本記事では、その内容について紹介します。

リスクベースの許認可においては、リスクの度合いに応じて事業が①低リスク、②中・低リスク、③中・高リスク、④高リスクに分類されます。そして各リスクごとに取得すべき許認可は、以下の通りとされています。

オムニバス法制定前は、どのような事業を行うかに関わらず、必ずビジネスライセンスを取得しなければなりませんでしたが、オムニバス法やその施行規則では、高リスク事業にのみビジネスライセンスが要求されており、許認可の容易化・簡易化が図られています

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オムニバス法においては、具体的に各事業がどのリスク分類に当たるのかという点は明らかではありませんでした。リスクベースの許認可に関する政府規則2021年5号では、この点が明らかにされています。同規則の別紙1および別紙2においては、各KBLIごとにどのリスク分類に該当するか、取得すべき許認可の種類は何か、許認可取得のために満たすべき要件は何か、許認可を取得した事業者がどのような義務を果たす必要があるのか等が一覧表の形で整理されています。別紙1は約2500ページ、別紙2は約8500ページあり、インドネシアのレギュレーションの中では極めて例外的に大部なものとなっています。

例として、新車のディストリビューションについて検討してみます。新車の販売はKBLI:65101に該当します。別紙1と別紙2の中で、KBLI:65101を探すと以下の記載が見つかります。これをみると新車のディストリビューションについては、事業規模に関わらず「低リスク」に該当し、「NIB」のみを取得すれば足りることが分かります。また、「事業者の義務」の箇所で記載されている義務を満たさなければならないということが分かります。必要な許認可は「NIB」のみとされているため、「事業者の義務」は許認可発行の要件として審査されるのではなく、これらを満たしているかは事業者が自ら判断することになると考えられます。その上で当局による事後監督が行われると考えられます。

別紙1【1.7.A.3】

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別紙2【2.7.A.1】

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注意を要すべき点は、別紙1および別紙2において、「KBLI:45101」に関する記載は上記のみに限定されておらず、さまざまな箇所に散らばっているという点になります。一例としては、別紙1の「1.14.B.1」において、「電子通信機器証書」を取得しなければならないKBLIに、KBLI:45101が含まれている点です。これは、いわゆるコネクテッド・カーのように、電子通信機器を含む車両を販売する場合には、電子通信機器証書の取得が必要であることを示すものであると考えられます。このため、インドネシアで事業を実施するにあたっては、該当するKBLI番号につき、別紙1や別紙2を網羅的に検討し、必要な許認可や満たすべき義務を正確に確認しておくことが重要となります。


Author

弁護士 井上 諒一(三浦法律事務所 パートナー)
PROFILE:2014年弁護士登録(第二東京弁護士会所属)。2015~2020年3月森・濱田松本法律事務所。2017年同事務所北京オフィスに駐在。2018~2020年3月同事務所ジャカルタデスクに常駐。2020年4月に三浦法律事務所参画。2021年1月から現職。英語のほか、インドネシア語と中国語が堪能。主要著書に『インドネシアビジネス法実務体系』(中央経済社、2020年)など

この記事は、インドネシアの法律事務所であるARMA Lawのインプットを得て作成しています。





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