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M&P弁護士図鑑 Vol.1:元検事が三浦法律事務所に参画した理由と“理想の弁護士像”(蛯原 俊輔弁護士)

2019年1月に30人の弁護士でスタートした三浦法律事務所(M&P)も、今や100名近い弁護士を抱える法律事務所にまで成長しました。この成長の裏には、ユニークなキャリアと強い志を持った弁護士一人ひとりの思いが存在します。そこで本連載では、M&Pの個性的な弁護士たちに個別取材を決行。普段はなかなか語られない、弁護士たちの素顔を掘り下げてご紹介します。

蛯原 俊輔(えびはら・しゅんすけ)PROFILE:2019年弁護士登録(69期)。14年早稲田大学法学部卒業。16~19年検察庁にて検事として刑事事件の捜査・公判に従事。19~22年岩田合同法律事務所。22年10月に三浦法律事務所参画


――本連載、記念すべき1人目は検事からキャリアをスタートし、2022年10月にM&Pに参画した蛯原俊輔弁護士です。蛯原弁護士が検事になろうと思った理由は?

蛯原 俊輔弁護士(以下、蛯原):子どもの頃から刑事ドラマが好きだったこともあり、大学は法学部を選択したし、刑事法のゼミを選びました。その後、ロースクールに進学し、企業法務があることを知り、おもしろそうだなと感じるようになりました。それで企業法務を扱う弁護士になろうと思って就職活動をしたんですが、司法修習の検察修習がすごく楽しかったし、検察庁の空気感が合うように感じたので、最終的には内定を頂いた事務所を辞退して検事になりました。

――2019年に検事を退官して弁護士に転向したわけですが、その理由は?

蛯原:検事の仕事自体は、本当に楽しかったんですよね。検事の仕事は大きく捜査と公判に分けられますが、私はどちらも好きでした。特に捜査が好きで、毎日取り調べを5~6件やったり、現場に行って実況見分したりしていましたが、そのどれにもやりがいを感じていました。でも、検事の仕事は、扱う法律が限られるので、もう少し世界を広げたいなと思うようになり、ロースクール中におもしろいと感じた企業法務をやってみたいと考えるようになりました。

検事の仕事自体はやりがいもあったし楽しかったので、もう少し経験を積んでから弁護士になる選択肢もありましたが、それだと弁護士になったあとに携われる仕事が検事としての経験を活かした分野のみになってしまいそうであり、気力と体力がある若いうちに幅広い分野で経験を積みたいと思ったので、3年目で弁護士になりました。

――弁護士になってどうでした?また、弁護士と検事では仕事の進め方などに違いはありましたか?

蛯原:最初に入所した法律事務所では、訴訟や不正調査、総会対応やプロキシーファイト、M&Aなどなど、いろいろな仕事を経験させてもらえましたし、企業に出向もしました。

検事の仕事は法律のリサーチというより証拠の収集を含めた立証に関する仕事が多いのですが、弁護士業務では、リサーチする機会が非常に多いという点が検事との大きな違いの一つかなと思います。文献や判例など、あらゆる調べ物をしなければいけないので、その“お作法”に慣れるまで、戸惑いのようなものはありました。あとは、企業法務弁護士の仕事の方がテンポが速く感じます。検事時代は、被疑者の身柄拘束期間の関係で1つの事件捜査に20日間といった期限が設けられることがあったものの、今日来た仕事について明日までに終わらせなければならないということはあまり多くありませんでした。しかし、企業法務だと、今日中あるいは明日中に回答しないといけないというケースも多い上に、いろいろな法律が関係してくるので、そのリサーチを行いながら素早く回答する、というのが大きく異なる点でしょうか。

――蛯原弁護士は2022年の10月からM&Pに参画したわけですが、そのきっかけは?

蛯原:きっかけはM&Pに仲の良い弁護士が複数いて、彼らが話すM&Pの話を聞いて良いなと思ったんです。彼らが、すごく魅力的に、生き生きと話すんですよね。あと、若いうちに分野を絞る必要がなく、幅広くやりたいこと・やりたい分野ができると感じたこともM&Pに興味を持った理由の一つです。

――創業3年目くらいの事務所への参画は不安ではなかった?

蛯原:友人が楽しそうに働いている姿を見ていましたので、あまり不安はなかったです。あと、M&Pは、若手であっても「自分の名前で仕事を取りに行く」というスタンスに寛容な文化があるところが良いなと思いました。M&Pに参画して1年経ちましたが、実際どれだけ動けたかはさておき、そういう環境やマインドがあるのは、やっぱりいいなと思ったんです。

――入所してから感じた事務所の良さはある?

蛯原:これはみんな言うことですが、若手でも新人でも、事務所の全体会議に参加できて、収支から事務所の方針まで全てオープンになっている風通しの良さは事務所の良いところだと思います。「若いうちからいろいろな案件を扱える」と言っている事務所は多いと思いますが、「若手も事務所運営に参加できる」といったことをうたっている事務所は少なく、まして議論や方針決定の場に若手を含めた全員が参加している事務所はそうそうないはずです。M&Pは建前だけでなく、重要な決定事項も全ての年次の弁護士がいる場で議論しますし、私より若い年次の弁護士も積極的に発言しています。

――全員参加で議論することには、スピード感が失われるなどの弊害もありますが、それでも現状のスタイルが良いと思う?

蛯原:そうですね。実際に発言するかどうかはその人次第ですが、年次問わず議論できる場が公式にあることで、風通しが悪くならないと思っています。そういう場が担保されているからこそ、変に疑心暗鬼にならず、信頼感の醸成に繋がっていると思います。この「全員参加」のマインドや、あらゆる面で若手にチャンスを与えようというM&Pの方針は、事務所がどこまで大きくなっても失われてほしくない部分だなと感じています。

――反対に、事務所について改善していきたいポイントなどはある?

蛯原:改善点ではないですが、最終的に事務所の規模をどうしていくか、というのは議論すべき点だと思います。また、この4年で非常に大きな組織に成長したので、ナレッジ管理や知見や情報を共有するための仕組み化がまだまだ十分ではないと感じています。でもそれも、若手弁護士が中心になって新しいテクノロジーを導入したりしているので、今後も年次関係なく全体で議論しながら改善していけたらいいなと考えています。

――蛯原弁護士はリクルート担当でもありますが、一緒に働くメンバーに求めることは?

蛯原:コミュニケーションがとりやすい人と一緒に働きたいですね。会話しながら、きちんと一緒に考えて同じ方向を向いて走れる人がいいです。あとは、案件はチームでやることが多いので、協調性や明るさも大切だと考えています。

――M&Pではどういう仕事をしていますか?また、M&Pに来て初めて携わった業務分野はありましたか?

蛯原:訴訟や危機管理をメインとしつつ、いわゆる“ジェネコ(ジェネラル・コーポレート)”と呼ばれる、日常的にクライアントからご連絡いただく、多岐にわたる法律相談を受けています。M&Pに来て、初めて民事再生案件にも携わりましたし、規模の大きいカルテルの調査や大型の株主代表訴訟など、規模的に初めてのものもありました。あと、執筆もこの事務所に来て増えましたね。英語で執筆するのも初めてで、いい経験でした。

――なりたい弁護士像は?

蛯原:短期的には、もっと経験を積んで、「良い実務家」になりたいですね。検事になる時に、当時の教官に「法律家は5年たって半人前、10年たって一人前」と言われたのを今でも覚えています。私は検事時代から数えると今年8年目ですが、今後も自分の手足を全力で動かして、より知見を積みたいですし、良い実務家になるために、どんな案件にもどこかに学びのきっかけがあると思って取り組んでいます。最終的には、特定の分野に関する知見がしっかりあって、結論を見据えつつ法的な分析もしっかりできて、説得力ある形で考えを伝えられる、柔軟かつ芯の強い実務家になりたい。それが私の考える「良い実務家」ですね。


【おまけコーナー:あの人の“B面”】

――休みの過ごし方や気分転換方法は?

蛯原:ありきたりですが、ゴルフとかサウナとかですかね。長期で休めるなら釣りや旅行にも行きたいです。あとは、わりと料理作るのが好きなんですよね。最近、実家から大量に栗が届いたのでモンブランクリーム作りました。あと、この前はカンジャンケジャンとか、イカをさばいてイカの塩辛を作ったりもしました。「きまぐれクック」のYouTubeを見ながら作ったりします(笑)。料理は気分転換になるし、きちんと向き合えば成果が出るし、確実に上達するし、おすすめです(笑)。

――事務所にいる時間の方が長いと思うんですけど、何か執務環境でこだわっている点は?

蛯原:こだわりアイテムはないですが、なるべく机の上は綺麗にしておくことを心がけています。いろんなものが散乱していると、意識も散漫になってしまう気がするので、なるべく資料を打ち出さずにデータで確認するようにしています。あとは、長い時間座る仕事なので、イスは大事ですね。この事務所は、アソシエイトはイスの購入補助費が出るので、私も入所時に良いイスを買いました。そしたら疲れなくなったので、やはりイスのクオリティは重要だなと感じています。

INTERVIEW & TEXT:YU HIRAKAWA
PHOTO:SHUHEI SHINE

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