LSD《リリーサイド・ディメンション》第45話「地帝との戦い」
*
――割れた断罪の壁から地帝が出現した。
なんてタイミングの悪いオレたち……まだランディアと知り合って間もないのに。
「これが地帝ですの!?」
「ああ、そうみたいだな。マリアン、あの心器を開錠しろ」
「聖母黄金花の鎚ですわね! わかりましたわ!!」
マリアンは空想の箱を構え――。
「――咲《さ》きなさい! 聖母《せいぼ》の黄金《おうごん》の花《はな》よ! 空想の箱、開錠《かいじょう》! 来《き》なさい! 心器《しんき》――聖母黄金花の鎚!!」
オレたちもマリアンに続く――。
「――咲《さ》け! 白百合《しらゆり》の花《はな》よ! 空想の箱、開錠《かいじょう》! 来《こ》い! 心器《しんき》――白百合の剣!!」
「――咲《さ》かせ! 紫苑《しおん》の花《はな》よ! 空想の箱、開錠《かいじょう》! 来《き》たれ! 心器《しんき》――紫苑の小銃!!」
「――咲《さ》いてよね! 花蘇芳《はなずおう》よ! 空想の箱、開錠《かいじょう》! 来《き》てよね! 心器《しんき》――花蘇芳の杖!!」
「――咲《さ》くのです! 有加利《ゆうかり》の花《はな》よ! 空想の箱、開錠《かいじょう》! 来《く》るのです! 心器《しんき》――有加利の指金具!!」
「――咲いて! 透百合の花よ! 空想の箱、開錠! 来て! 心器――透百合の剣!!」
「――咲け! 女王百合の花よ! 空想の箱、開錠! 来い! 心器――女王百合の大剣!!」
オレとチルダ以外は魔剣である心器の形状を変化させたもので戦う準備をする。
「…………!」
地帝の攻撃が始まった。
地帝は土のように黄色い剣を振るって、ノースマウンテンの大地に亀裂を生じさせる。
「マリアンっ!!」
「わかっていますわよっ! くらいなさいっ! 聖母黄金花の鎚!!」
マリアンは地帝と同じ大地の亀裂を発生させた。
亀裂の攻撃と亀裂の攻撃で相殺させる――それがマリアンの目的だった。
「まだまだっ! いきますわよっ!!」
マリアンのレベルは九十九――MAXに達している。
マリアンの放つ攻撃力の高い聖母黄金花の鎚(技名)が地帝を襲う。
地帝の鎧には、すでにヒビが入っていた。
マリアンだけじゃない。
アスターも、メロディも、ユーカリも、チルダも、アリーシャも、それぞれが持つ力を発揮していた。
「流星連弾!!」
「爆発新星!!」
「水流氷結拳・連打!!」
「透百合斬!!」
「女王大百合斬!!」
これらの攻撃で地帝の鎧は粉々に砕けちった。
「百合波刃!!」
オレも彼女たちに続いて技を出す。
地帝は、よろよろと倒れそうになる。
もうすぐ地帝のHPは底を尽きるだろう。
あとは――。
「――ランディアっ! キミが、この戦いの最後の希望だっ! 地玉の指輪を覚醒させるんだっ!!」
「でも、あたし……まだ、あなたのことをなんにも知らないのに」
「キミは、まだ幼いからなあ……そうだっ!」
オレはアリエルたちエルフに連絡を取る。
『なんでしょうか、チハヤお姉さま?』
「アリエル、今からキミとフラミアとミスティでノースマウンテンの最北端にある断罪の壁まで来てくれっ! それと騎士学院の全生徒もノースマウンテンの最北端に全員招集なっ!!」
『わかりました。でも、どうして、わたしたちエルフを?』
「地のエルフであるランディア・アースグラウンドに五光の指輪のひとつである地玉の指輪を形成を手伝ってほしい。お願いなっ!」
『わかったよ、今すぐ、そっちへ行く』
『少し待っていてくださいね』
フラミアもミスティも返事をしてくれている。
とても心強い。
「さて、それまで地帝《ちてい》をくい止めるぞ、みんなっ!!」
『了解っ!!』
*
――アリエルとフラミアとミスティとエンプレシア騎士学院の全生徒が最北端のノースマウンテンまで空の空想の箱を使って来てくれた。
『ユリミチ・チハヤ、騎士学院の全生徒には様々な形の空器を装備させている。地帝の侵略から守ることができるだろう』
「フィリス、ありがとう」
『私にできることは、そのくらいかな。まだ戦闘は続いているんだろ? 早く戦いに向かってくれ』
「フィリス……本当に感謝する。またな」
『ああ、また』
フィリスとの通信が切れる。
「アリエル、フラミア、ミスティ! ランディアに指輪を出すコツを教えてやってくれ! オレへの恋がトリガーだ! それを教えてやってくれ!!」
『了解っ!!』
ランディア以外のエルフたちが返事をしたあと、地帝の周囲に十メートルの魔物が現れる――地家臣だ。
地家臣三体で地帝を守ろうとする。
でも、今のオレたちなら――。
「――いくらでも倒すことができるっ!!」
オレは、あの心器を開錠する。
「――咲《さ》け! 白百合《しらゆり》の花《はな》よ! 空想の箱、開錠《かいじょう》! 来《こ》い! 心器《しんき》――白百合の短剣!!」
十本の白き短剣――白百合の短剣《たんけん》を地家臣に向かって飛ばす。
「くらえっ! 百合千雨っ!!」
十本の白き短剣は千本分の百合の短剣の力がある。
この技で地帝と地家臣の足止めをする。
百合千雨が放たれた瞬間、アスターたちの攻撃も放たれる。
「流星連弾!!」
「爆発新星!!」
「水流氷結拳・連打!!」
「透百合斬!!」
「女王大百合斬!!」
「聖母黄金花の鎚!!」
オレたち神託者は地帝、地家臣、ゴーレムのような地属性の魔物たちを技で蹂躙する。
あとはランディアが地玉の指輪を形成すれば、この戦いに終止符を打つことができる。
もう少しで、この世界は救われる。
「ランディア、好きだっ! だから、がんばれっ! ランディアっ!!」
ひたすらランディアに恋愛感情をぶつける。
「わかったよ、チハヤ。あたしも応える。いくよっ!!」
アリエルたちに指輪の形成のコツを教えてもらったランディアは、黄色い光をまとう。
そしてランディアの胸から地玉の指輪が出現した。
「チハヤ、これでいい?」
「ああ、それが地玉の指輪だ。これで地帝《ちてい》を倒せるはずだ。だから、みんな……いくぞっ!!」
『了解!!』
地帝と地家臣、地属性の魔物たちを倒す――それが百合世界を救う絶対条件。
「もう、なりふり構ってられないっ! 双剣の空想の箱を開錠するぞっ!」
『了解!!』
マリアンのおかげで地帝を守る鎧はなくなった。
あとは双剣の攻撃で終わらせる。
「――咲け! 白百合の花よ! 空想の箱、開錠! 来い! 心器――白百合の双剣!!」
エンプレシア騎士学院の全生徒が双剣の空器を装備し、アスターたち神託者も双剣の空想の箱を開錠した。
「ランディアっ! 指輪を薬指に装備して、祈れっ! オレの双剣に属性付加してくれっ!!」
「わかったっ!!」
ランディアは地の膜をオレの双剣に属性付加させる。
「すべての薔薇世界の魔物はオレたちで倒すっ!!」
オレたちは覚悟を決めて。
「真・魂の結合、実行っ!!」
アスター、マリアン、メロディ、ユーカリ、チルダ、アリーシャを含むエンプレシア騎士学院の全生徒にオレの∞のAPを伝播させる。
「十秒で片をつけるっ!」
エンプレシア騎士学院の全生徒の心がシンクロした瞬間――。
『――壊地之《の》二百合斬!!』
その技は放たれた。
地帝も、地家臣も、地属性の魔物たちも、すべて壊地之《の》二百合斬によって倒された。
これで世界は平和へと導かれることになる……はず、だった――。
「――これで終わるはずだったのに……どうして?」
フィリスも言っていたじゃないか。
第五の帝が存在する可能性を……だけど――。
「――なんで帝《みかど》が、さらに三体も出現するんだよっ!」
それは風帝戦に現れた雷帝、雷帝と同じくらいの大きさの光帝、それらよりも一回り大きい天帝だった。
雷家臣、光家臣、天家臣が三体ずつ現れ、この世界の空は魔物によって侵略されようとしていた――。
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