猫耳メイドのコスプレをした血のつながらない妹と……(短編小説・前編)※18禁のため閲覧注意

※性的な表現があります。この小説の登場人物は十八歳以上です。

俺と妹に血のつながりはないのだが、それを知ったのは恋人になったあとだった――。

猫耳メイドの格好をした、スレンダーな美少女が立っていた。
「えっと……どちら様?」
俺はその少女に尋ねる。
すると少女は、俺の質問には答えず、
「……お、お兄ちゃん」
と、呟くように言ってきた。
そして、
「えっ? お、お兄ちゃん!?」
俺は素っ頓狂な声を上げた。
――俺のことをそう呼ぶのは、一人しかいない! 俺が驚きで固まっていると、少女は、
「ご、ご主人様……」
と、恥ずかしそうに言ってきた。
そして、頬を赤らめながら、スカートの裾を持ち上げる。
それは、まるでお嬢様が挨拶するときのような仕草だった。
だが、そんな可愛らしい動作とは裏腹に、少女の頭から生えている猫耳がピコピコと動き、お尻からは尻尾が生えていた。
間違いない。
この少女は俺の妹の「凛花《りんか》」だ。
でも、なんで妹はこんなコスプレをしているんだ? それに、なぜ急に現れたんだ? 俺は混乱しながらも、
「ど、どうしたんだ、凛花? そんな恰好をして?」
と、尋ねてみた。
すると、
「そ、それは……」
と、モジモジしながら口籠もってしまう。
そして、意を決したように顔を上げると、
「あ、あの……わ、私、今日からお兄ちゃんのペットになることにしたんです!」
そう言ってきた。
「……へ?」
思わず変な声が出てしまう。
しかし、妹は真剣な眼差しで俺を見つめながら、
「ですから、私の飼い主になってください!」
と言ってきたのだ。
「いや、ちょっと待て、凛花。言っている意味が分からないんだが……」
俺は戸惑いながらも、もう一度尋ねてみる。
すると、妹は、
「だから、私はお兄ちゃんのペットになりたいのです!」
と、強い口調で言い返してきた。
どうやら、冗談やドッキリではないようだ。
それにしても、妹が突然こんなことを言い出すなんて、何があったのだろうか? 
「なあ、凛花。なんでそんなことを言い出したんだ?」
俺は改めて尋ねた。
すると、妹は少し俯き加減になりながら、
「だって、最近お兄ちゃん、全然構ってくれないんだもん……」
と、拗ねたような口調で言った。
確かに最近は受験勉強に追われていて、あまりかまってあげられなかったかもしれない。
だが、それとこれとは関係ない気がするのだが……俺が困惑していると、
「だ、だから、私がお兄ちゃんのペットになれば、きっといっぱい可愛がってくれると思って……」
と、妹は上目遣いで言ってくる。
なるほど、そういうことだったのか。
つまり、寂しいから俺に構ってもらおうとして、ペットになりたがっているということらしい。
まあ、理由は分かったけど、だからといって、すぐに納得できるものではない。
というか、そもそも俺には妹を飼う資格なんてないしな。
でも、ここで断るのも可哀想だし、どうしたものかと考えていると、
「ねえ、ダメかな……?」
と、妹はさらに懇願してきた。
その瞳にはうっすらと涙が浮かんでいるように見える。
これはまずいぞ。
このまま泣かれでもしたら、また家族会議になってしまうので、俺は渋々了承することにした。
「はあ、分かったよ」
俺が溜息交じりに言うと、
「ほ、本当!?」
と、妹は嬉しそうに言った。
そして、
「やったー!!」
と言いながら抱きついてくる。
「ちょっ!? お、おい、離れろって!」
俺が慌てて引き剥がそうとすると、
「やだ! もう絶対に離れないもん!」
と言って、さらに強く抱きしめてきた。
「ぐえっ!?」
あまりの締め付けの強さに、変な声が出てしまう。
ていうか、力強すぎだろ!! 俺はなんとか逃れようと必死にもがくが、妹の腕は全く緩まない。
このままでは窒息してしまうと思い、最後の手段に出ることにした。
「いい加減にしろ!」
俺は大声で怒鳴ると、思いっきり頭突きをした。
ゴツンという鈍い音が部屋中に響き渡る。
「いたっ!?」
すると、妹は小さく悲鳴を上げると、ようやく腕の力を緩めてくれた。
俺はその隙を逃さず、すかさず距離を取る。
そして、息を整えながら、
「いいか、凛花。よく聞けよ」
と、言い聞かせるように話し始めた。
「お前がいくら寂しくても、俺はお前を飼えないんだよ。分かるよな?」
しかし、妹は涙目のまま俯いているだけで、返事をしない。
なので、もう一度同じ言葉を繰り返す。
「だからさ、もうこんなことは――」
「違うもん!」
突然、妹が大きな声を上げた。
俺は驚いて口を噤む。
「え?」
「お兄ちゃんは勘違いしてるもん!」
そう言うと、妹はキッと俺を睨みつけてきた。
「な、何をだよ?」
俺は少し気圧されながらも尋ねる。
すると、妹は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「私はペットじゃなくて、恋人になりたいの!!」
「……へ?」
またもや素っ頓狂な声を上げてしまう。
い、今、何て言ったんだ? 聞き間違いでなければ、「恋人」とか聞こえたような気がするんだけど……いやいや、まさかそんなはずないよな。
一瞬自分の耳を疑ったが、さすがにそれはないだろうと否定する。
そんなことを考えている間も、妹は顔を真っ赤にして何かを呟いていたが、やがて意を決したように顔を上げると、再び俺の目を真っ直ぐ見つめながら言った。
「わ、私、お兄ちゃんのことが好きです! だ、だから、私と付き合ってください!」
その言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になった。
――ど、どういうことだ!? なんで凛花が俺のことを好きだと言っているんだ!? いや、そもそも兄妹で付き合うなんておかしいだろう!! それに、もし仮に付き合ったとしても、世間からどんな目で見られるか分かったもんじゃないし、両親にも何と言われるか分からないぞ。
俺が混乱して固まっていると、妹はさらに畳み掛けてくる。
「そ、それにね、お母さんから聞いたんだけど、ペットになるには飼い主さんにちゃんと可愛がってもらわないとダメなんだって。でも、私には他に飼い主になってくれそうな人はいないし……」
そこで言葉を区切ると、潤んだ瞳で俺を見つめながら、
「だからね、私がペットになってあげる代わりに、私を飼って欲しいの……」
その瞬間、俺の中で何かが弾けたような気がした。
「……そうか」
俺が小さく呟くと、それを聞いた妹の表情が不安そうに曇る。
だが、次の瞬間、俺は妹の肩を掴むと、強引にベッドに押し倒していた。
そのまま覆い被さるような体勢になって、そして――。


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