義肢のヒルコ 第34話



――木の神?

木属性の神だということか?

木属性は草、風、雷を司る存在であることが多い。

つまり――。

「――それは、もしかして」

「――木の神で最強と言われる、あの神のことだ。現われろ、タケミカヅチ」

ヒルメ……いや、最高神であるアマテラスは木の神を呼び出した。

木の神で最強と言われるタケミカヅチを。

「そこまでして、勝ちたいか?」

「悪神が善神として生まれ変わるには、それなりの試練が必要だろう……だから、戦って……ヒルコ兄さま。覚悟はできているでしょう?」

「ああ、だから俺は神々と戦うことを決意したんだ。怯えてなんかいないね」

「原初の最弱神である兄さまには過酷な試練となるでしょう。でも、この戦いは必要なこと。悪神は滅ぼさなければいけない存在……だから、この戦いに勝利する必要がある」

「やるよ。だから、タケミカヅチ……戦おう」

「ああ、俺が本気を出したら、一瞬で決まることを教えてやる」

ヒルコである俺は木の神の最強と戦う準備をする。

最弱の神である俺が、二メートルはある巨体の神と……ちゃんと戦えるのか?

ゴォーン! 銅鑼を鳴らすことによる開始の合図が聞こえる。

――俺は、瞬時に技を繰り出す。

「銃化……連弾!」

義手を銃に変形させて弾丸を放つ。

「効かんよ」

タケミカヅチは風の能力を使って、弾丸を逆方向へ飛ばす。

つまり、俺に飛んでいく。

「超障壁」

弾丸の弾道を俺の障壁によって殺した。

「そんな能力が、あるのか……あのときの最弱の神に」

「障壁は戦闘で絶対に必要になるから義肢にプログラムとして組み込んである。そんなことより、わかったよ。弾丸が使えないことがな」

――やはり、こちらから近づかなければ……。

俺はタケミカヅチに近づいて、拳を鉄に変え、また勝負を仕掛ける。

「鉄化……拳」

「こちらの得意な領域に、わざわざ近づくか……いいだろう」

タケミカヅチは俺の拳を受け止めた。

「そんな軟弱な体で格闘主体か。無謀だな」

「無謀……だと?」

「その拳で攻撃したことを後悔させてやる」

ズシャッ! 俺の右手の義手はタケミカヅチの手が変化した剣によって破壊された。

「なっ……!?」

「これは、かつてタケミカヅチである俺がタケミナカタに使った特技だ」

タケミカヅチは俺の左手の義手も握ろうとする。

だけど――。

「剣化――斬」

「……ほう」

「やり返しだよ」

タケミカヅチは俺の剣化した義手の攻撃を少しだけ喰らった。

「超回復」

右手の義手を超回復の術式を使うことにより元通りになっていく。

「タケミカヅチ、戦いは、これからだよ」

「そのようだな」

まだまだ戦いは続きそうだ……まだ一戦目なんだけどな――。

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