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三浦と茅葺き|三浦自伝 番外編

(写真:東山植物園の合掌造りの家にて姉と母と。全然屋根が写っていないが…。)

なぜだろう。茅葺き屋根の下にいると安心するのは。

例えば雨降りの中、雨宿りしてぽたぽたと軒から垂れる雨の滴を眺める時。暑い真夏の太陽から逃げて、茅葺きの土間に入りひんやりした空気を感じる時。

どんな時も茅葺き屋根の下に入れば、人は守られる。そして不思議と心が安らいでくる。そんな力を、茅葺き屋根は持っていると思う。

三浦が初めて茅葺きを見たのはどこであろうかと考えると、小学校に上がるか上がらないかの頃に行った東山動植物園に思い当たる。

名古屋の子どもなら一度ならず行ったことがあるであろう東山動植物園は、昭和12年開園の歴史ある動植物園である。最近だとイケメンゴリラとして話題となったシャバーニがいるところ、と言えばおわかりだろうか。その植物園側に、その昔白川郷から移築されたという合掌造りの茅葺き民家がある。

ちょうど行ったときの写真も残っていた。少なくとも記憶に残る中では、ここが初めての茅葺きとの出合いの場だと思われる。おぼろげながら、茅葺き屋根の家を見て楽しかったことを覚えている。

次に茅葺きに出合うのは、意外かと思われるかもしれないが南アフリカである。10歳から13歳までの3年間を過ごした南アフリカだが、現地の小学校で入っていた寮や食堂の建物が茅葺きだった。

当時は全く気にかけたこともなかったが、よくよく考えてみればあの建物たちは茅葺きだった。身近な素材を使うプリミティヴな建築の一つである茅葺きは、形や様式は違えどヨーロッパやアフリカなどどこにでもある。その一つに無意識に触れていたことに今更気づき、そこはかとなく感動している。

カルチャーショックに耐え、家族が恋しくて毎日のように涙を流した日々も、友人たちと何気ない会話で笑い合った夜も、不味かったり時々美味しかったりした寮の食事時も、茅葺き屋根に守られていたのだ。

どうやら茅葺きには縁があるらしい。

今や本社に茅葺きの家がある会社で働き、飼っている犬の小屋まで茅葺きだ。きっとそれは、守られているということ。平和の象徴とも呼べそうなこの屋根を、今度は自分が守りたいと強く思う。

※三浦編集長 号外<鄙舎茅葺き替え記念>(2017年9月発行)より転載

<余談>

実は先日、会社の古い写真データを整理していたところすごい写真を発見した。なんと会長の松場大吉が名古屋に住んでいた時代、同じ東山植物園の茅葺きで長女を抱いている写真である。

当時の大吉つぁんの痩せっぷりにもびっくりだが、下の写真の赤マル部分にご注目いただければ同じ柱と建具であることが分かることと思う。