われ生きるに値せず
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子羊のような贄欲す朝ならばわれを吊るせと叫ぶ兄たち
踏み切りに光りが滅ぶ列車来て遮られてしまうすべてが
かつてまだ恋を知らないときにただもどりたいとはいえぬ残暑がつづく
会わずして十年経ちしいもうとの貌など忘るつかのまの夢
よるべなどなくてひとりのわれがゐる 高所恐怖のまったきふるえ
なぜという声が欲しくて問いかける「詩」を書きためて歩く市街地
まぼろしになれば他人の夢のごとわれを偽る理由はあらず
ふさわしき家庭もあらぬ男とは切断されし枝の断面
ほどかざる両の手ばかり秋の日の罰はきびしといえる幼少
垂木折る舞台の無人確かめてわが罪ありぬ本日休演
なにも知らぬふりをして語る九月の陽だまりに及ぶおもいでなぞを
ことばたらず頭をさげる一瞬のかの女の貌にかげが落ち来る
詩にあらず歌にもあらず一行を書きためてわが人生嗤う
死がやがてわれを蝕むときをいまただ待てり ただ待てり
かげろうの失せた街区をただ歩む われ生きるに値せず
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