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青色のコンビニで恋をした(1/20〜

1月20日

一週間ぶりにコンビニの彼女に出会えた。やったー!だ。

もちろん偶然を装うことはせず、タイミングが悪ければそれまでだから…だからこそ嬉しさがギュッとなるんだ。

今日はからあげクンをふたつ買った。ロスにならないよう彼女を援護射撃…
ていうか、角刈り!お前が揚げ過ぎたんじゃないのか?あ?


1月21日

いつものコンビニに昼間寄ってみた。出勤前に行くのは久しぶりだ。
店内には主婦パートと高校生らしき男の子が働いていた。ちょっと混んでいる。深夜とは全然違う雰囲気。温ケースにはからあげクンが山ほどセットされ、惣菜パンや菓子パンもたくさん。
何故か居心地が悪くて、すぐに退散してしまった。

1月22日

大河の主演女優が叩かれている。まー子役を大人が演じる是非はあれど、僕はいいと思うけどなぁ…。
なんて思いつつ、今日もコンビニ行脚は続いてゆく。ネームプレートから、彼女のことを''ヨネちゃん''と呼んでいたけど、色白で黒目が大きい顔立ちにちなんでこれからは''雪ん子''と呼ぶことにしたい…

1月23日

コンビニ深夜勤のバイトの子に恋をしている。
ペットボトルの品出し中の彼女…「ったっ!」と、割と大きな声。どうやら指を切ったらしい。紙で切ると、深さ以上に痛いのは僕も知っている。

大丈夫?と声をかけたいけれど、ここは我慢だ…でも心配である。風邪は治ったかな?

もはや僕が病気である。

1月24日

お弁当の温めをやりながら、宅急便のレジ作業をスムーズに行うボンビー。
「アサッテノゴゼンチューデスネ」
P ─ P ─ P ─ P ─
「オマチクダサイ」
お弁当を渡し、宅急便の控えも渡す。

中東からの留学生だろうボンビー…すげえよ。ここでは陽気なキャラだけど、本国ではきっと優秀なんだろうな。

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1月25日

コンビニ深夜勤のバイトの子に恋をしている。
春菜と楽しそうに話してる彼女…なんだよ。

今日はビターなチョコをひとつ。

車に乗り込む。濃いカカオが口いっぱいに広がるのを確認してゆっくりとアクセルを踏んだ。YUKIの声が響く。

恋とはドキドキしてワクワクして、ちょっぴりイライラするんだ。

1月27日

ガラス越しに、外をぼんやりと眺めている彼女。
夜半過ぎに見たときは雪だったけれど、いまはもう雨が混じっていて積もりそうにない。
レジのチャイムで彼女が我に帰る。

「そうでもないね」と僕、

「ですね」と彼女。

主語がなくても通じ合う…
それが彼女と初めて言葉を交わした瞬間だったんだ。

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出会った瞬間から別れのカウントダウンは始まっている。愛する人はもちろん、ペットやお気に入りの洋服、時計、果ては自分とも。
目には見えない透明な砂時計が、彼女と僕の間にはあって、それがどれくらいで終わるのかなんてわからない。

もう雨にかわっているのに、いつまでも彼女は外をみていた。

''雪ん子''は、春になったら溶けてなくなってしまうのだろうか。

アスファルトにできた水溜まりは、もう切れそうな電灯のチカチカとした光りを反射している。
その明滅は、遠く誰かに何かを知らせるようなまたたきだった。

さらさらと透明な砂が落ちてゆく。

青色の光りがバックミラーに映った。


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