青色のコンビニで恋をした(2/8〜二.一四
2月8日
コンビニ深夜勤のバイトの子に恋をしている。
先月ようやくガラケーからiPhone4に機種変したんだけど、勝手に電話を掛けてたり(ポケットの中で誤作動)してちょっと困惑気味。
だけどネット検索がバンバンできるので、彼女の故郷である「宮古」のことをつい調べてしまう。
すげえ遠いし、田舎だった。
2月10日
コンビニのバレンタインコーナーが充実している。とは言え、コンビニのチョコなんて明らか義理であろう。
彼女は誰に…
いや、会計する僅かな時間が幸せだったら、それでいいんだ。
コンビニを出て車に。フロントガラス越しにみえる彼女を指で追った。
ガラスに触れた指先は、冷たくて温かい。
2月11日
彼女はバーコードスキャンして、すかさずおにぎりを電子レンジに。
pontaカードをピッと読み取って、レジに金額を打ち込めばガショーンとドロアーが開き、サッとお釣りを渡してくれる。
淀みない動き…。
でも、そうじゃあないんだ。
まだ、あたふたしていたあのころの''キョドキョド笑顔が懐かしい。
「pontaカードはお持ちで、あっハイッ…1円の端数はポイントあっ…」
「こちらは温めても良いで、あっ…」
「レシートは…ハイッ」
いちいちリアクションが小動物っぽかった彼女の愛らしさが、業務に慣れた今ではもう見ることが出来ない。
僕のパターンを覚えてくれている嬉しさと引き換えに、彼女との初々しい時間がなくなってしまった。
贅沢な悩みなのはわかっている。
今はもう、話そうと思えば何かしら会話が出来る関係だ。
だからこそ簡単に話しかけられない空気に怖気づく。
時間は前にしか進まない。止めることも戻すことも出来なくて、そそくさと店を後にした僕は、自分を呪った。
2月12日
角刈りが立ち読みをしている。
レジには春菜。
少し様子がおかしい。
僕が店内をズカズカ歩くと、二人組の客は何も買わずに出て行った。商品が入っているカゴを置きっぱなしにして。
「万引きかぁ…」
気付いてしまった。
深夜だからかな…計画的な窃盗グループ。
コンビニの闇を見てしまった。
2月13日
13日未明。すごく寒い。関東から関西にかけて大雪警報が出ている。14日バレンタインは月曜日だから、電車やバスが動かなくて仕事に影響しそう。
コンビニはどうかな…駐車場も広いし雪かき大変そうだ…と、雪の中に立つ彼女を想像してみる。
雪ん子だ。
いや、そんな妄想してる場合じゃないけれど。
2月14日
すごい雪でコンビニに寄るどころじゃない。
まぁ今日は彼女のHappyをただ祈ろう。チクチクと痛い。
そんなのわかってるじゃないか。
豪雪(といっても関東平野部の雪なんて10cmで大変)なので慎重に運転して帰ろう。
言葉に出来ない恋は行方不明。雪は静かに降り積もり、全てをなかったことにする。
2月15日
品出し中の彼女の視線を感じる。
もしかして、フフッ…と馬鹿な妄想は置いといて、でも確かにこっちをチラッと──
「あのっ…出てます…新しいの!」
いつも新商品を買うの覚えてくれてるのか!
パン棚には(チョコなんちゃらパン)が山積みになっていた。
おじさんひとり、チョロくていいんだぞ!
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