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2022年ボカロ10選を紹介したい

 新年あけましておめでとうございます。2023年もよろしくお願い申し上げますっすっすす!(いいねってYEAH!並感)
 というわけで今回は昨年私が悩みに悩んで決めた「2022年ボカロ10選」を紹介したいなと思います。本来ならば2022年中に書き上げたかったのですが、色々ありすぎて大幅に遅れて書いています。本当にごめんなさい。
 2022年のボカロ界隈は、マジカルミライ10th、鏡音オンリーライブ、IA
10thライブ、二度のボカコレ、無色透名祭、多くのユーザー投稿祭などなど多くの出来事がありました。そして無数のボカロ曲が投稿された1年でもありました。そんな2022年投稿作の中で、私が特に気に入った曲、印象に残っている曲を頭を壁に打ち付けながら10曲ピックアップしてみました。この10曲が誰かの心に刺さってくれれば幸いです。ではいきましょう。
(ヘッダー画像はsasakure.UKさんの『フューチャー・イヴ』のMVから拝借しています)


『A』はるふり

 まず一曲目はこちら、はるふりさんの『A』です。この曲、気づいている人もいるでしょうが、とあるボカロPのとある歌へのアンサーソングとなっています。タイトルやサムネの構図はもちろんのこと、投稿日時もリスペクトするという徹底ぶりです。はるふりさん2年ぶりの新曲がこのような形となったことから「リスペクトを表すためにわざと投稿していなかったのでは…?」説も出てきました。
 楽曲そのものは、はるふりさんの真骨頂ともいえる軽快なギターチューンで構成されており、そこにテトの無機質な歌声が響く切ない一曲となっています。
 そして歌詞は、やはり何かを意識させるような言葉が綴られており、それはまるで何かの答えを探すように歌われていきます。

きっとこのまま僕たちは
明日も見えないまま歩いていくんだ
きっとこのまま僕たちは
感情も知らないまま抱きしめていくんだ
あの歌の答えを
僕らの一秒を綴っていく

『A』はるふり

 私自身、「あの歌」が大好きだったので、まさかこんな形で1つの「答え」と出会えるとは思ってもいませんでした。はるふりさんとあの人が好きなリスナーに届いてほしい一曲です。

『仮り詩』霧四面体

 続いて二曲目はこちら、霧四面体さんの『仮り詩』です。チップチューンとロックを掛け合わせたような楽曲構成は、聴いた人の心を掴む心地良さと楽しさがあります。曲のあちこちに散りばめられたピコピコ音が聴いていてとても気持ちが良いです。
 そしてこの曲の聴きどころとして挙げたいのが、ボーカルのさとうささらです。この曲ではCeVIO AIのささらちゃんが使われていますが、その実力の高さが凄い!ちょっとハスキーな声質に調声されたささらちゃんは、もはや人間の域に到達し始めています。どことなく物憂げな雰囲気があるのもヤバい。個人的にささらちゃんって可愛い系統のボイスだと思っていたので、こんなクールな感じになるんだ…!と驚きました。
 また、歌詞の言い回しも中々ユニークなものが多く使われています。

ああ、撃ち込んだ音が偽物だってことくらい知ってる。
頼りにしてるよ 余計な感情が入らないから

『仮り詩』霧四面体

 どことなくVOCALOIDとボカロPの関係性を表すようなこのワンフレーズが個人的には大好きです。霧四面体さんは自身のブログで「少女→美少女アバター(もうおかしい)→メタバース的ディストピア構築論(????)」というテーマで制作したことを述べています。本人曰く歌詞は「情報量重視で一貫性がありません」とのこと。霧四面体さんは積極的に自らの楽曲の解説を書いてくださっているので、ブログを合わせて読むと非常に面白いです。この下にリンクを貼っておきます。

『Reboot』或(aru)

 次に紹介したいのはこちら、イツカのヨルにの或(aru)さんの『Reboot』です。4月に行われた「ボカコレ2022春」の投稿作品となっています。このボカコレでルーキーランキング41位、TOP100ランキング69位という結果も得ており、高い支持を受けました。
 まず特徴的なのは、写真とイラストを組み合わせた優しいMVでしょう。美しい風景写真に、どこかゆるさを感じるミクさんのイラストに心を掴まれます。こういう日常に潜むミクさんという存在がたまらんのです。春の陽気のような優しさを感じるMVは必見です。
 もちろん楽曲も凄く良く、柔らかい雰囲気のギターサウンドとミクのボーカルに詩的な歌詞が美しく映えます。

光散る 道の途中
ボクら やっと出逢えて
ちょっとハッとする
空色の春だった

『Reboot』或(aru)

 たとえばこれは最後のワンフレーズですが、「光散る道」「空色の春」など、明るい印象を持たせる言葉選びが本当に綺麗だなと思うわけですよ。曲を通して季節や情景を、色や光、五感で表現していくのですが、それがとても美しい表現で構成されています。こういうのを文学って呼ぶんでしょうね。

『フューチャー・イヴ』sasakure.UK+有形ランペイジ

 次に紹介したいのはこちら、ささくれPことsasakure.UKさんの『フューチャー・イヴ』です。2022年に10回目を迎えた初音ミクのイベント「マジカルミライ 10th Anniversary」のテーマソングとして書き下ろされた一曲です。
 「終末シリーズ」をはじめ、氏の楽曲は強い世界観を持つものが多く、またそれが魅力になっているのですが、今回の『フューチャー・イヴ』もまた、美しい世界観が描き出されています。革蝉さんの描くMVも非常に美しく、世界観をより高めています。宇宙と幾何学と魔法と初音ミク、様々なモチーフが使われたMVは、見るものの心を奪う力を持っていますね。
 一方、曲調はsasakureさんの真骨頂ともいえる変則的な展開と、「マジカルミライ10th」のテーマである”レトロフューチャー”を感じさせるエレクトロな音色が響き渡ります。また、曲と歌詞にはこれまでのsasakure楽曲を思わせる要素が散りばめられており、聴くものにどこか懐かしさを感じさせます。
 なによりも好きな点として、この初音ミクという存在、「マジカルミライ」をはじめとするミクの文化が続いてきたことをひっくるめて「魔法を信じていた」と表現していることを挙げたいです。

サヨナラも初めましても一緒に謳おうよ、未来を―!
トンデモ宇宙も終末も
全部抱きしめて、アイノウ(i 脳) 相追う
虚無でもいいよ 闇でもいいよ
夢が、まだ“夢”が愛せるなら
間近に在る、ハジマリはずっとずっと
魔法を信じていた

『フューチャー・イヴ』sasakure.UK

 10回目を迎えた「マジカルミライ」を彩る最高の一曲が、『フューチャー・イヴ』で良かったと、心の底から感じています。この「魔法」が、これからの「ミライ」を照らしていきますように。

『ネクストネスト (Magical Mirai 10th edit)』さつき が てんこもり

 次に紹介したいのはさつき が てんこもりさんの『ネクストネスト (Magical Mirai 10th edit)』です。こちらは「マジカルミライ2014」のテーマ曲として制作された一曲を、「マジカルミライ 10th Anniversary」のためにリメイクされた一曲となります。
 この楽曲は初めてのマジカルミライテーマ曲であったにもかかわらず、長きにわたってライブでの演奏がされてきませんでした。しかし、10回目を迎えたマジカルミライにおいて、実に8年越しの初演奏を達成し、会場を大いに沸かせました。
 VOCALOEDM系統で構成された原曲は、アレンジによって重厚感溢れるバンドテイストも加えられ、よりブラッシュアップされた印象を受けます。特にイントロのギターの入りでは、これから始まるライブへのワクワク感を高める唯一無二のクールさを感じることができます。
 MVのイラストを担当したのは、ボカロPとしても知られるOsanziさんで、クールな顔立ちをしたミクさんが描かれました。そびえたつ摩天楼、輝くネオンサイン、そしてマジカルミライ2014のSFチックな衣装を着たミクさんは、見るものにこれから訪れる未来を感じさせてくれます。
 そして、10選に入れることを決心した最大の理由として、ライブでの演奏が最高だったことが挙げられます。1曲目として演奏された『ネクストネスト』はこれ以上ないほどカッコよく、これから最高のマジカルミライが始まる…!と感じさせてくれました。1曲目で泣いたのは後にも先にもこのライブだけです。ミクさんとクリエイターとファンが積み上げてきた「ミライ」の象徴として、この一曲が存在しているのだと思います。

『酔狂』メキメキ地蔵

 次の作品は、1分の楽曲というテーマで行われた投稿祭「IPPUN GRAN PRIX」にて投稿された、メキメキ地蔵さんの『酔狂』です。この投稿祭では、全ての楽曲が1分で構成されており、短い時間で個性を詰め込もうと様々な工夫を施すボカロPが多く参加し、非常に面白い曲たちで溢れていました。ちなみに私が2022年で唯一全曲チェックした投稿祭です。
 そんなIPPUN GP投稿された『酔狂』という楽曲ですが、ボーカルに鏡音リンを使用した以外に使った楽器はチェロのみという非常に挑戦的な構成となっています。最初に聴いたときは「おおマジか!?」と思いました。しかし、少ない楽器構成だからこそ、チェロの荘厳な音色と、リンちゃんのパワフルな歌声が心をグッと掴んできます。1分という短い時間ながら、力強い魅力を発揮する一曲です。
 そして挑戦的な態度は歌詞にも表現されています。

研ぎ澄ませた一太刀で
焼き尽くせ 欲も流行も全部

『酔狂』メキメキ地蔵

 1分という時間でチェロとボーカルだけを使って構成された一曲を「研ぎ澄ませた一太刀」と表現し、現代の音楽シーンに一泡吹かせようという強い意志を感じさせるフレーズです。この「一太刀」を受けた人は、もう無事ではいられないでしょう。それこそ、この曲を最初に聴いたときは、刀で袈裟切りにされたような衝撃がありました。

『○○だけ』友波

 次に紹介したいのは、友波さんの『○○だけ』という楽曲です。2022年に大きくユーザーが増え、何かと話題にもなったKiite Cafeで私は知りました。自分一人では探しきれないような楽曲と出会える最高のサービスなので、皆さんもKiite Cafeを使いましょう(宣伝)。
 曲の話に戻りましょう。『○○だけ』の好きなポイントとして挙げたいのは、やはりノスタルジックな曲調でしょう。夕暮れ時の商店街のような、もしくは下町の裏通りを歩いているような、そんなノスタルジーを感じさせてくれます。いわゆる「お洒落なミクうた」とはまたちょっと違う、でも美しい情景が広がる一曲となっています。

咲かない花に水をやって
枯れない薔薇に毒をやって
めんどいことは明日やって
そんな感じで
のらりくらり
今日が終わります
喜劇も 悲劇も なにひとつない

『○○だけ』友波

 なんてことなく過ぎ去っていく一日、そんな何気ない何もない日々を歌詞に乗せて軽快なサウンドで歌い上げていくのがたまらないです。「何かをしなければいけない」という焦燥感の中で生きている現代において、ホッと一息つくような歌詞がとても優しいと感じます。
 また、MVも特徴的な構成になっており、アニメやドラマのエンディングを思わせるような構成になっています。このMVの雰囲気も、楽曲のノスタルジーさをより印象付けてくれます。

『わたしはボイスロイドです。この作品はポエトリーリーディングです。本当ですか?.mp4』ノートいびき

 無色透名祭の名曲『ポストずんだロックなのだ』や、初音ミクwikiを発端とした「ポエトリーリーディング作品は音楽なのか」騒動など、2022年はポエトリーリーディングも話題によく上がりました。そんなポエトリーリーディングに分類されるであろう楽曲が、ここで紹介したい『わたしはボイスロイドです。この作品はポエトリーリーディングです。本当ですか?.mp4』という楽曲です。
 私の中での印象として、ポエトリーリーディングは無色透名祭の『ポストずんだロックなのだ』やyanagamiyukiさんの『あふれる』など、爽やかなサウンドに詩を合わせるものが多く、ある意味高尚なジャンルだと感じていました。しかし、この『わたしは(以下略』はビート感溢れるサウンドで構成され、思わず体が動いてしまうようなアッパーな楽曲でした。この曲構成は、私のなかの「ポエトリー=爽やか」という既成概念をぶっ飛ばしました。
 また、詩も秀逸な表現が多く、視聴者に問いかけをしているようで、下ネタを突然要求してきたり、真偽不明の統計を教えてくれたりとかなり自由な表現がガンガン出てきます。

世の中の99%の音楽は、
ほかのなにがしかの
音楽の影響を受けています
残りの1%は
ケチャです

『わたしはボイスロイドです。この作品はポエトリーリーディングです。本当ですか?.mp4』
ノートいびき

 そんな自由な構成が用いられたこの曲は、ポエトリーリーディングかくあるべきという考えを木っ端みじんにする一曲ではないでしょうか。ちなみに続編も投稿されたみたいです。

『熱異常』いよわ

 『きゅうくらりん』『パジャミイ』など独特のポップスでお馴染みのいよわさんがボカコレ2022秋に投稿した話題作です。TOP100ランキングでは堂々の1位を獲得しています。
 この楽曲の特徴として、中の人(サンプリング元の人)が不在のUTAUである足立レイを使用したということが挙げられます。AIシンガーの台頭など、人間に近づくことが昨今のボカロシーンの流行りだと思われてきましたが、まさかここで人間とは程遠い存在である足立レイがここまでヒットするとは思わず、ランキング結果を見たときには非常に驚きました。
 MVでも足立レイが佇む構成となっており、トランシーバーを片手に足立レイがじっとこちらを見ているという構図がずっと流れ続けます。動画サムネイルにも同様の構図が用いられています。彼女は何を考え、何を見て、何を伝えようとしているのでしょうか…
 そして最大の魅力は、やはりその楽曲構成にあるでしょう。もはや私ごときには言語化ができない音色が鳴り響きます。そして機械音たる足立レイが、ときに語るように、ときに伸びやかに、ときに畳みかけるように歌い上げていきます。その壮大なサウンドと独自の世界観は、完全にボカロ界にとって新たな境地を開いたものだと思います。曲に対して畏怖を感じたのは、この曲が初めてでした。

『コトダマ』kamome sano

 最後に紹介したいのは、『熱異常』と同じ「ボカコレ2022秋」の投稿作、kamome sanoさん(沙野かもめさん)の『コトダマ』です。「ボカコレ」というタイトルの投稿祭にも関わらず、私が魅力を感じた楽曲はUTAUがボーカルに使われているものでした。
 ギターやトランペット、ピアノの優しい音色を散りばめたテクノポップとなっているこの曲は、聴くものを虜にします。また、テトの電子音らしいボーカルも曲調に最高にマッチしています。それもそのはず、この曲のテーマは「重音テト」なんです。
 2008年に生まれた重音テトは、元々ネット民のエイプリルフールのネタとして生み出されました。いわば「嘘の歌姫」だったわけです。しかしその後、フリーの歌声音声技術であるUTAUのライブラリとして歌声が作られ、彼女も一人のシンガーとしての立ち位置を築くようになりました。今ではUTAUの代表格として活躍し、様々なステージで歌を届けています。
 そんな「噓から出た実」のような存在を歌ったのが、この『コトダマ』なのです。

はじめに嘘があった それだけ
気付けば歌になっていただけ

『コトダマ』kamome sano

 これは歌い出しのフレーズです。「はじめに嘘があった それだけ」という歌い出しは、聴くものを惹きこむフレーズではないでしょうか。2022年名フレーズです。

すべては口から出まかせ
それでも届くなら
はじまりの光を集めて
何れ辿り着くおわりへ
いつかは君の元へ

『コトダマ』kamome sano

はじめに嘘があった それだけ
気付けば歌になっていただけ
この小さなWAVデータが少しだけ変えたこの未来へ

『コトダマ』kamome sano

 ほんの「出まかせ」がやがて一人の歌声を生み出し、誰かのもとにたどり着くなんて、誰が想像できたでしょう。それでも、この生み出された歌声は「少しだけ」未来を書き変えました。そんな重音テトの軌跡を「小さなWAVデータが少しだけ変えたこの未来」と表すのは、とても美しい表現だと思うんです。この表現の美しさが、10選入りの最大の理由です。

おわりに

 いかがでしたか?(まとめサイト)
 ここにピックアップした作品は、2022年のボカロ曲の中のほんの10曲でしかありません。実際にはもっともっと多くのボカロ曲が存在しており、その数だけ誰かの心を打つと思っています。
 そして2023年も1月からたくさんの新曲が投稿され、すでに感情が爆発しそうな勢いです。また、「ボカコレ2023春」をはじめ、多くのイベントが予定されています。まだ見ぬ楽曲に出会うチャンスがそこには眠っているのではないでしょうか。
 最後にはなりますが、この記事が誰かの新たな出会いに貢献できていたら幸いです。ここまで読んでいただきありがとうございました。皆さま、素敵なボカロライフを!


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