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Stones alive complex (Rhodochrosite)

有料放送の余白で、朱に染められた鳥居の影で、重厚な本願寺の瓦の表で、桜の蕾がほころぶ隙間で、昼寝する猫が伸ばす長い腹で、環状線の電車が到着するホームの白線で、かつての日常はエビデンス正しきルーティンで、学級委員長の主義主張で、一枚岩の堅牢な要塞で、うず高く積み上げられた理論武装して、目の前に立っていた。

陰謀論が、論だと茶化されているうちはまだ平和。
それなら、まだ平和のうち。
論とかのフレームをはるかに超えた日常が、見たこともない姿になる。

波長を変えた太陽は、規定を守ってた日常の制服を脱がしにかかる。
ノエルが爪弾くフレーズのエッセンスへ、雨上がりの傘が霞ませる蒸気へ、神聖な路の玉砂利へ、瞬きもできない目へ、指数関数な明日が流れこんでくる。

これまでの日常という現象を成り立たせていた古い前提の、なんと脆いことか。

浄化を懇願する祈りの作法に。
少年が持つ動画サイトの画面に、Tiktokの秒数に合うように、学者たちが発表しない統計の詳細に、賢者たちの談話の裏側に、主に人気映画のセリフに、紛れて更新される前提は、すでに語られていた。

その前提を前提たらしめている前提とは何か?
前提を組み立てているものは誰なのか?

色彩がロードクロサイト鉱石の春。

春の微笑みの柔らかさ。
何事も起こらなくても、どっちみち古い前提はとうに行き詰まっていたのよ。みんなそれは知っていたでしょ?本当は何を知りたかったの?と。

ときめく鼓動は血族の色。
あくまでも慈愛の唇を発射台として飛んでくる、過激な投げキッスは、狭い海を越えて。

冥王星を傾けた者、アステロイドベルトを撒き散らした者、地球を削り取って月にした者、無意識領域へスイッチを仕込んだ者、そのスイッチを切っておいた者、そのスイッチを押しこむ者、裏表で六つの神器にマークされた者は星型のサインになる。

(おわり)

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