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Stones alive complex (Fire Quartz)

平常心がたゆとう赤血球川の水面に、酸素スパークが躍っている。

そこにバラけて浮かぶ、小型から中型クラスの海賊クルーザーに乗ったフリーの船乗りたちは、
ネットワークで繋がろう!
呼びかけ合い甲板を駆け回り、互いにネットの網を投げて、船隊を組む。
何か月も研究室にこもってた科学者たちが、生成されたばかりのホムンクルスを連れ、やっと川岸へ出てきて酸素スパークに顕微鏡メガネをしばたたかせている。
川岸を散歩する100日後に相互理解するカップルは、現段階では交わす言葉がなにもかもおしなべて幸せなので有頂天になっていて、間に立ててる厚さ30ミリの移動式強化ガラスを、どうしても外したがっていた。

「なるほどど。
今回学んだ優先順位はは、体よりも心を先に休めなければならんってことだったねね」

独特なエコーの訛りがある「歴史を創る歴史学者」は続ける。

「PCRよりPRS技法ってことだよよ。知ってるかねねね。あのエンジニアたちはは、操縦に取り憑かれていたんだだ。
敷地面積510,100,000 km²もの宮殿をドローンだらけにしいてて、しょっちゅうドローンたちのゼンマイを巻いていたた。
突然ん、深夜に起き出してきてて、パジャマで宮殿じゅうをふらふらしてて、ドローンたちのゼンマイをぜんぶ巻いてまわったりねね。
ドローンたちがが、いつでも命令した時にちゃんと命令どおりに動くかどうかをを、とても気にしていたんだだ」

彼は、肩甲骨まで伸ばした顎ヒゲと、額から巻いて突き出たコブラのくせ毛を指先でていねいに整える。よく見たらそれは木製だった。
この歴史学者は木製の被り物をしているので、声が内部でエコーしているのだとわかった。

「さてて。
ある人Aは、ある出来事Aが起こったとき、それに対してAという反応行動をしたとするる。
A:A→A
別の人Bは、出来事Aに対してBという反応行動をしたとするる。
B:A→B」

「まあ。
人それぞれ、十人十色ですからね」

呪文字を造型し商いする男は川べりのベンチで足を組み、あいづちをうつ。

「単純化するとと。このの、
A→A
という動きはその人の性格というか考え方というかか、価値観のようなものなのだだ。
『A→A』の人からするとと、
『A→B』と動く人は理解ができないい。
逆もまたしかりだだ」

「でしょうね・・・
相互理解とは妥協とほぼ同義ですから」

「そしてだだ。
A→Aという価値観がリーダーをしてる集団のメンバーそれぞれがが、
出来事A→B、C、D、E、F、G、H、I、J、K、L、M、N、O、P、Q、R、S、T、U、V、W
ってて、動くやつらだったらら?」

「当然、集団はまとまらないでしょうね・・・
てか、集団化してる意味すらないのでは?」

「A→Aという価値観のリーダーは、
みんながA→Aとと、
動くように指導しようとするはずだだ」

「リーダーの役目ですからね。
それがリーダーが持つべき、指導力ってやつですよ」

「そしてて。
ここからが話の肝のとこなのだがが。
A→Aという価値観を持ってるはずのリーダーAがが、
なぜだかメンバーたちにに、
A→Z
という反応行動をするように指導し始めたとしたらら??」

「えっ?
どういうことですか?」

「どういうことなんだろうねね??」

「えーと。
A→Aのリーダーは、実はこっそり、
A→Zの価値観だったとか?
なんだかんだあって、
A→Zに考えを改めたとか?」

「その前提はナシでで。
あくまでもも、
リーダーは確固たる信念でもってて、
A→Aだよよ。
これは今後ご、頭の隅に置いておくべき指針となる問いかけだなな」

「う~ん・・・」

なにかヒントはなかろうかと。
呪文字を造型し商いする男は、広大な川べりの景色を見まわした。
赤血球川の向うには、何本か新しい電波塔が立っていて密林のようだ。その隙間を活用するかに点在した住宅は、静かすぎるくらいのどか。
見上げた青い空には、いく筋もの消えない飛行機雲が多角形の図形を描いており。
先ほどの100日後に相互理解するカップルは、強化ガラス越しに口づけを交わしている。

「あっ!
リーダーの奥方様が、
A→Zの人だったとか?」

「リーダーを操作する上位のリーダーの存在ねね!!
それは不可抗力系な可能性のひとつだねね!!
別の可能性もまだまだあるぞぞ。
はははは!はははは!」

(おわり)

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