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Stones alive complex (Hymimalayan Crystal)


「アビギャ君てば、大当たりの巻ってか・・・」

亜火ノ聖命は、すっかり冷えてしまったハーブティーをすする。

予言と預言は、似て非なるものだ。
後者である可能性も、無きにしも非ず。
アングロサクソンのミッション情報も、とうの昔に広まっていたことだし。

陰謀論がどんどん一般論化してゆく時流。
しかし、表世界と裏世界の境目が透けてゆくにも関わらず、不可侵の奥の院は不可視のまま。
強力な実用性を秘めた儀礼儀式テクノロジーは、確実に行使されているだろう。
この事案に、関わってないはずがない。

ハーブティーの残り香が、喉奥から鼻腔へ抜ける。
知恵熱は、やや治まってきた。

一大白王制度は、死守せねばならん要のシステム。
疑問をはさむ余地は皆無。
されど・・・その大前提に疑問が生じていた。
王見白王は、真の正統なる一大白王の血統なのか?

王見。

大。

王。
は、正統なるトゥエル・ウルなのか?

昨今のワイドショーレベルなディープステータス具合からしても、絶大なる権威が闇堕ちしてしまいそうな気配。言い方を変えれば、正統な霊格の権威者であるのなら逆に、闇堕ちすることなど不可能のはず。

その流れからの~平将門を適材適所だしな。
単一民族幻想が解けねば、奥の院は覗けない。

真実とは。信じたものが真実になる。
信が真になる脳科学のトラップ。
個々の自己存在意識や世界観や価値観は、信じているものの集合体を前提として組み立てられている。
だがもし。
あらゆる信じていたものが、
信じていたとおりでなかったら?
アイデンティティの基盤が崩壊し、自分すべての判断が信じれなくなるパニックからの~思考停止からの~自閉虚無となってしまう。
「じゃあ。いったい何を信じればいいのか?」
この致命的ストレスを防ごうとする脳の科学は、とてもシンプルで安易な打開策をうつ。
つまり。
「信じていたものが信じていたとおりではなかったことを、断固として信じない!」

参考までに。歴代の大聖者たちはこう言ってる。
「なにを信じればいいのか?」という命題に。
シッダールタは、
「ははっ!そんなもんはねーんだよ!
信じても一瞬でみんな変わっちまうのさ、ははっ!」
なんて、身も蓋もない突き抜けた中二病な厭世でほがらかに笑い。
クロスへ縛られたナザレは、
「唯一絶対の私が説く教えのみを信じよ!
信じれるまで悔い改めよ!」
なんて、眉間にシワを寄せ、断言なさる。

どっちの主張が正しいのか?という問いかけは、それらの教えを割と真面目に実践してきた末裔たちがどうなっているのか?で証明されてしまっているし。
その証明は、あらゆる情報ツールで検索できる時代。説かれた内容よりも、説いた者を神格化する方面へ忙しくしてる。正直あんまし救われてそうにない。

そういう例えで説明するなら、この事案の本質は宗教戦争であった。もちろん一般人が知る由もない、奥の院にある不可視の宗教。その片鱗が現世へと、突き出ようとしている。

「ま、私は。これまでと変わらず。
信じていたものが信じていたとおりでないことを、信じよう。
自分で信じてる自分も信じたとおりでないことを、信じてゆくんだけどね」

聖命はその仕事柄、
崩壊と再構築の繰り返しに慣れていた。

(おわり)

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