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Stones alive complex (Black Rutilated Quartz)

最近このシリウス星には、シリウス人のように歩いたり話したりする未知の生き物が急激に増えた。その数はシリウス人の人口を上回っている。
彼らは次元の裂け目に迷い込み地球方向から漂着してきた生き物たちだ、という噂だった。

最初に漂着したひとりの男は、シリウス人たちによく自分の故郷のことを語って聞かせていた。

漂着者の星は、主に二種類の社会システムで運営されているという。

ひとつは共産主義というもの。
これは、
「人が人に搾取される」
という仕組みらしい。

搾取という概念にシリウス人たちはびっくりした。シリウス星には思考具現化装置があって、欲しいものならなんでも無から自力で造り出せるからだ。他者から何かをもらう必要がない。

漂着者の世界にあるもうひとつの社会システムは、共産主義より控えめでオススメな、資本主義というものだそうだ。

それは、
「人が人から搾取できる」という仕組みだった。

シリウス人たちはそのふたつの違いが理解できず、何度も説明を聞いたがぜんぜんチンプンカンプンだった。他者とエネルギーをやり取りする必要がある場合には、等価交換が宇宙の基本原則だ。しかし、漂着者がいた世界では等価性はむしろ必要なく、上位存在が下位層に所有格差のジレンマを与えることによって、エネルギーは上位側へ不可逆に一極集中して吸い上げられてゆく。

世界観が異なる相手への説明に困った漂着者は、

「う~ん・・・
大局に俯瞰したら、とどのつまり。
システムの本質は同じだけど、見た目だけがまったく正反対の対立軸を常に設定して反発し合うようにしとけば、上位存在の目的のみが叶い続けるシステム、というのかなあ・・・」

そう首を傾け、考え込んだあげく。

「どうやら実物で実演した方が、てっとり早く理解してもらえそうだね」

そう言って、シリウス人のおデコに付いてる触覚みたいな思考具現化装置を借りると、実演するために地球人を70億人造ったのだった。

(おわり)

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