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Stones alive complex (Cantera Opal)


人混み少なき帝都の街。

冷気が刃となって、コンクリートの樹海を冷やす。
街の底面にも側面にも天面にも張り巡らされし、文明のモノリス。

それを踏みしめてゆく亜火ノ聖命の草履に、霊気の刃が刺さるようだった。
目的地までの最短距離をとって、
彼はビルディングの側面を道とし、横倒しになって歩む。
反重力の呪法をかけた草履は、重力の方向を自在にできる。

夜行性の動物に似て、
冷却の時期にしか活発に徘徊できない生き物もいる。

「毒虫の増殖は、とうに想定されていたはず。
あるいは、この後手後手は仕組まれていたのか・・・」

我が国の非常事態と、かの国の非常事態。
種が異なるそのふたつの宣言は掘り下げてゆけば、根本原因であるものが同じであった。
さりげに言うならば。
根本原因である者ども、が同じであった。

立体的に千手まで先を読みあう5次元チェス。
盤面の下方は曲面の地上、上方は無次元の宇宙。
ジョーカーゲームとライアーゲームとドクタースリープ(シャイニング続編)とを足して、ダイハードを掛けてぐつぐつ煮込んだごときな展開。
常に、勧善懲悪の対立軸を設定する彼ら両建て主義が行うミッションは、シナリオが複雑怪奇すぎ。

「たとえ虎が勝ったとて、時間稼ぎにしかならないが・・・
まずは、ペロペロがペンペンされるようだな」

昨年は、チュウと鳴く干支の国が影を走り回り。
今年はそれを、牛頭が踏み潰す。
来年はふたたびトラが地平へと吠え。
月まで白ウサギを追いかけ。
そして、
龍の國が天へ昇る。

「卯龍(うだつ)があがる年は、もうちょっと先さ」

なんともはや、驚天動地な暗示の干支周り。
すべては全霊のシナリオどおりに。

かの国の非常事態が収束した時、世界の非常事態が魔法のように連動して収束すれば、天災か人災かが明らかとなり。
根本原因である者どもの正体が証明される。
深淵に身を置きつつ、頂点から見下ろしていた者ども。

「いつの世も民草は、あやつらの身勝手のとばっちりばかり喰わされてきたよ。
正当でまっとうな、人民による人民のための下克上は、ついに成されるのかな・・・」

風雲、急にQを告げる。

(おわり)

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