Stones alive complex (Green Amber)
店員から強くおすすめされた商品を、ガチな目で眺めた。
安価だがその形状は、旧ヨーロッパ共同体地域で流行っている人格除霊器のお粗末なパクリだった。
一流メーカーの日章製作所で製造されたものは、姿勢がよく従順そうなのに、目の前のは猫背で態度が斜に構えていて、とっくに耐用年数をすぎているようだ。すぐ近くにライバルの量販店があるというのに、なんでまたこんなものを出してくるのか?
しかし商品仕様書を開いたとたん、気分が高揚し始めた。
どこにでも市販されている中古品にカモフラージュされているが、その昔人格除霊テクノロジーの開発で暗躍した名うての闇エンジニアたちによって四肢内臓が区分けされてセッティングされ、一等級のグレードがつけられたものだった。
仕様書の備考欄のページには、緑色のインクでエンジニアの誰かが書き込みをしていた。
『吸引コネクターにご注目っ!』
意外だった。
各部のパーツは霊長類タイプの人工タンパク質で造られているのに、吸引コネクター部分だけは植物の素材だった。
人格を吸引する接点に、植物素材を採用した設計思想とは?
革新的すぎて理解ができない。
人格注入側の接点はいたってノーマルであり、ルージュ色の皮膜が艶っぽく塗装してある。
見たまんまでこの設計思想を想像するとしたら、この人格除霊器から再憑依される人格は、霊長類のものではないということになる。
・・・素人が考えていても、しょうがない。
2026年の磁場設定に合わせ、産まれた時から慣れ親しんできたこの擬似人格を除霊して、群生対応の概念を受け入れられる新たな人格を再憑依させなければ、どこかの大事なシナプス結合がプッツンしてしまう。
とにかく、購入してみることにしよう。
掘り出し物らしいのは確実だ。
隣のブースにある、この商品のコスチューム棚へ視線を移す。
メイドってーのはベタだから、
ナース服を着せようかな・・・
(おわり)
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