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歳をとるのも悪くないってば


強がりを言うつもりは無い。若いというのは特権だ。羨ましいし戻りたいと思う。しかし私には、若い頃よりも良くなった事、というより若い頃は欠点だった事が、歳をとって欠点では無くなった、という経験アリなのだ。今日はそんなお話。


人間にとって、年齢とは、その人間の品質を表す数値ではない。つまり、年嵩が増しているからと言って、優秀であるとは限らず、それはただの、肉体の、主に、血管や内臓の使用年数に過ぎない。(『死神の浮力』/伊坂幸太郎)


若い頃の私の顔は、脂性だった。Tゾーンは常にギトついていて、時々鼻のてっぺんに大きなニキビが出来た。隠そうにも隠しようが無い。(今ならマスクで隠せたのに)


忘れもしない、あれは高2の体育祭。クラス対抗の仮装競争で私のクラスは”オリンポスの12神”で優勝したのだが、その時私はゼウスの役をやった。全知全能の神、これは主役と言って良いだろう。クラスメイトが縫った衣装を身に纏い、バッチリメイクで運動場に向かった。しかしその時のお化粧品が合わなかったのか、それ以来顔にニキビが出来るようになった。小鼻の脇からほっぺの下のほうにかけて、左右同じように、なんと表現すればいいか、例えば天の川のように帯状にそこだけに何年もニキビが出続けた。何をやっても治らなかった。


就職して同じ会社に中高の同級生がいる事を知った。彼女とは特別仲良くはなかったが、中学生の時からとにかく肌がキレイだった事が印象に残っていた。社会人になってから仲良くなり、ある日彼女の家に泊まりに行くと彼女のお母さんが私のニキビを見て「良いクリームがあるよ」と言った。

彼女の一家は在日コリアンだったが、良いクリームとは韓国製で真珠の成分が入ったものだ。今で言う韓国コスメだが、当時はまだ韓国コスメの良さはそんなに知られていなかった。試しに使ってごらん、と1つプレゼントされたのだがなんと効果覿面。そのクリームのおかげで長年の悩みの種であった天の川ニキビが治った。しかも治っただけでなく、肌がツルツルになったのだ。彼女もこれをずっと使っていたのか、どうりで肌がキレイだったわけだ。

続けて使いたい!と思ったがそこからはプレゼントではなく購入することになる。値段を聞いてあらビックリ!なんとそのクリーム、1つ3万円だった。しかも小さなサイズ。小指で塗るリップバームくらいのサイズだ。た、た、高えぇ‥。しかし背に腹は変えられない。結局私はそのクリームを5年ほど使った。今思うと、年齢的にニキビもそろそろ治る年頃でクリームのおかげではなかったのかも知れないが、とにかく肌がキレイになった事は事実だった。
脂性で悩んでいた私が近年は冬場に乾燥して顔に粉がふくようになった。乾燥肌なんて言葉、一生縁が無いと思っていたが、かつての天の川あたりが乾燥する。脂が無くなってしまったか?



さて、それはさておき本題だ。若い頃には一度も言われた事が無く、言われたいもんだと憧れてさえいた言葉を、歳をとって言われるようになった。


肌がキレイですね


(え?何?よく聞こえなかった。もういっぺん言ってくれ‥。)

そうなのだ。歳とってまさかこの言葉を聞けるとは。もちろん、隠したいアレやコレやはある。しかし若い頃脂性だったおかげ?で、同年代の人に比べるとシワが少ない(と思う)。若い頃ニキビなんて出た事無いという人は、歳とったら結構シワが多い(と思う)。脂性で良かったかも?いや、どうかな。若い頃からキレイな肌だったらもっと良かったのになとは思う。



私は髪の量が多い。硬くて太くて黒い。うねる。ゴワつく。
若い頃ゆるふわなんて言葉はなかったけど、私はごつごわ、だ。カットする時もいっぱい梳いてもらっていた。
髪が硬いのは悪い事ばかりではない。くるくるドライヤーで巻くとキレイに型が付いたし、聖子ちゃんカットみたいに髪を巻くのはお手の物だった。
ところが、歳をとると髪がだんだん細くなってコシもなくなった。サラサラになったわけではない。あんなにゴワついていたのにボリュームが出なくなったのだ。髪って、頭のてっぺんにボリュームがあるかないかで、若く見えるかどうか差が出る。よく女性用ウィッグで頭のてっぺんだけにちょこっと乗せるタイプがあるが、ビフォアアフターを見れば一目瞭然。
そしてここにもまた、若い頃言われると全く褒め言葉に聞こえなかったが、今は皆から羨望を込めて言われる言葉がある。


髪の毛が多くて羨ましいわぁ


若い頃にはあり過ぎたコシやボリュームが、歳をとった今ちょうど良い加減になった。実はカットしてもらう時にちょっとした工夫をしているのだが、それは皆には内緒にしておこう、と思う。


私の目標は、年齢不詳になる事。変に若作りするとかじゃない。10年前も10年後もあまり変わらずにいられたらいいなあと、そのために努力、というとおこがましいので少しばかりの工夫を加えているのである。しかし考えてみると、髪を染めることは努力なのか工夫なのか?
誰かの言葉を借りるなら、私のこれからの人生では今日の私が1番若い。
てことは、今日の私がベストってこと?..
やっぱり少しは努力しようか。



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