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苗字が変わると


私は結婚して苗字が変わり、その後もう一度苗字が変わった。離婚したわけではない。


では何故か。
私の旦那さんは次男で、私と結婚して10年ほど経った頃、旦那さんのお母さん(私からいうと義母)の実家の苗字を継いだ。苗字を継いだとは、旦那さんは自分の祖母(お義母さんのお母さん)と養子縁組をし、祖母の子どもになったのだ。ゆえに戸籍上旦那さんは自分のお母さんと姉弟、なわけ。

ややこしいったら。

そもそも何故そんな事になったかと言うと、これはもう義母のわがままみたいなもんだ。自分はひとり娘で結婚して家を出たもんで実家の苗字は祖母が亡くなるとそこで途絶えてしまう。私が結婚した頃からその事をどうにかしたそうな雰囲気はあった。旦那さんの兄には男の子が2人いたので、その次男に苗字を継がせようかという話もあったが、当時はまだ義父が元気だったので義母はなかなかその事を言えなかったようだ。

義父が亡くなり何年かして祖母が入院した。そのタイミングで、義母の“実家の苗字を途絶えさせたくない”という思いが強くなった。役所に聞きに行ったら、祖母が亡くなったらもう手続きは出来ないと言われた。祖母は既に90歳を越えていたのでいつ何が起きてもおかしくない。義母は焦ったようだ。


そこでうちの旦那さんに白羽の矢が立った。

私は当時その事をそんなに重大に考えていなかった。子どもたちが既に小学校や幼稚園に通っていたので、途中で苗字が変わることへの周りの反応や不安や煩わしさ、家中の名前が記載されているもの全て苗字を変更しなければいけないという手続きの大変さはあったものの、それ以降のことまで頭が回らなかった。


苗字が変わることが決まり、そのことを私は実家の両親に電話で伝えたくらい、軽く考えていた。ところが、私の実父がそのことに対して憤った。びっくりするくらい怒った。


そんな大事なことを決まってしまってから私が報告してきたこと、義母からは何の説明もなかったこと、早くに知っていたら反対しただろうし、義母に最初からそういう思いがあったのなら言っといてほしかった、と。


父は言った。「お前は〇〇家に嫁にやったのであって、△△家(義母の実家)に嫁にやったわけじゃない。」と。


私はこの時初めて苗字が変わるということに付随してくること、そこに父が腹を立てていると知った。それは“△△家のお墓(仏壇)の面倒”を将来私たちがみなくてはいけなくなる、ということだ。もちろんそれは良いことで、誰かずっと面倒をみてくれる人がいればそれに越したことはない。が、それが自分の娘にのしかかってくることを父は心配してくれたのだ。父の気持ちが嬉しかった。だからこそ父にも納得して理解して承諾してもらいたかった。


私はまず旦那さんに、父の憤りを伝えた。旦那さんは思考が義母寄りなので始めは父の気持ちを全く理解できずにいたのだが、私が根気よく説明して、どうにかわかってくれた。そして次にそのことを旦那さんから義母に説明してもらい、義母から父に電話をして父に詫びてもらいたいとお願いした。

旦那さんの横に私が付いて義母に電話をかけてもらった。旦那さんは言った通りに義母にそのことを伝えたのだが、義母はやはり全く悪いと思っていなかったので、何故父に詫びなければいけないのか、〇〇家の親戚からしてみれば〇〇という家(苗字)が一軒減ってしまうことに文句を言う人だっているのに、と逆ギレされた。〇〇に対しては悪いと思っているのに、私の実家に対しては何をそんなに怒ることがあるんだ?という主張だ。

旦那さんは偉かった。義母の主張に対して反論せず、ここは父のために折れてくれ、と義母にお願いしてくれた。やっと義母も納得し、父に電話すると約束してくれた。


こうして揉めに揉めた旦那さんの養子縁組は無事完了した。
そして今、私は〇〇家と△△家、両方のお墓掃除を担っている。

苗字が変わるって、こういうことだったんだな。



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