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年4回のご先祖孝行


お盆である。今年は帰省もままならない状況なので、お墓参りを諦めるという人もいるかも知れない。何処にいてもご先祖様へ想いを馳せれば届くと思う。想う事が大事なんだと思う。


私の実家のお墓はお寺の中の墓地にあった。水道はもちろん、掃除道具やバケツ、花切り鋏まで常備されていて、ゴミも焼いてくれるので、お線香とお花だけ持って行けば事足りた。それが普通だと思っていた。

ところが結婚して旦那さん家のお墓に驚いた。旦那さん家のお墓は小高い山の中腹にあり、車では上がれないので山の下に車を置いて山道を登る。距離的には2、3百メートルだが、ゆるゆると登っていくのはなかなか辛い。しかも山の中なので水道などの施設はない。家から水を持って行く。掃除道具も持って行く。両手に荷物を持って山道を登る。それだけである意味、だ。

私が死んだらここに入るのかと思うと、ちょっと嫌かもと思ってしまった。


10年ほど前に義母が平地にお墓の土地を買ってお墓ごと移転した。新しいお墓にも水道は無いが、車ですぐ傍まで行けるので荷物の持ち運びの苦労が無くなった。ありがたい。
それを機に、旦那さんの実家と我が家のお墓、2軒分(旦那さんは次男なので分家、お墓は別々)の掃除は私たちの担当になった。それまでは義母や義姉が掃除からお花を入れるところまで全部やってくれて、私たちはお盆の間にお花の水かえとお参りに行けば良いだけだったのに、これからはよろしく的な感じになった。では義母や義姉は何をするかというと、お花の用意だ。親戚が花屋さんなのでそこへお花を取りに行って、花入れに入れやすいように取り分けて束ねる。2軒分なので花入れもそれなりの数があり、お花のお世話も大変っちゃあ大変、らしい。それまで一切を義母と義姉にやってもらっていたので、掃除は我が家の担当と言われ文句も言えず、今日に至る。春秋のお彼岸とお盆、そしてお正月の年4回のご先祖孝行。


新しくなった墓地には10軒ほどのお墓があるのだが、何故か我が家のお墓の周りだけやたらと雑草が多い。夏は特に驚くほどの成長ぶりだ。草取りは主に旦那さんの担当。ここ1年ほど折りを見ては除草剤を撒いた。暑くなる前に何度か草取りにも行った。おかげで今年の夏は今までとは格段に雑草が減った。
私は墓石担当だ。古くて硬くなったタオルを持参して、墓石を水拭きする。タオルは使い捨てる。墓石4基、灯籠4基。それに周りを囲んでいる石垣。全部隅々まで水拭きする。
山が近いので季節によっては雑草と共に大量の落ち葉に苦労する。
結構な重労働だ。毎回旦那さんと2人で小1時間かかる。


こんな事でも無いとなかなかお墓参りをしないだろうから、こうしてお墓に足を運ばざる得ない状況を与えてもらった事は感謝だ。それに綺麗になったお墓に1番にお参り出来るのは気持ちが良い。ご先祖様もきっと喜んでくれているだろう。


「いつもありがとうございます。どうぞ家族皆が元気でいられますよう、見守ってくださいね。またお彼岸に参ります。」

先日の掃除中、山から駆け下りて走り去っていくテンを目撃した。初めて見た。ご先祖様からのご褒美かと思うほど、毛が見事な金色だった。



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