見出し画像

ちゃまの夢、叶う

ちゃまとは、うちの旦那さんのことだ。うちは娘2人に私という女の中に男性はちゃまだけという、ちゃまにとって長い冬の時代があったが、昨年長女が結婚し長女の旦那さんという同志を得た。そしてそれだけでは飽き足らず、旦那さんのお義兄さんにまで手を出そうとしていた。

お義兄さんは、長女の旦那さんのお姉ちゃんの旦那さん。とにかくお酒を飲むのが好きらしく、ちゃまはそこに惚れた。長女らの結婚式でチラッと会っただけなのに、酒好きのお義兄さんのために、ことあるごとに日本酒や焼酎をことづけていた。たまにあちらからも御礼のお酒が届いたりして、そしたらまたその御礼にとお酒をことづけるということをこの1年繰り返していた。今年のお正月に、長女が旦那さんの実家に新年のご挨拶に伺った際、旦那さんのお姉ちゃんが気を利かせて、ちゃまとお義兄さんが一緒に飲める機会を提案してくださった。ついに訪れた、ちゃまとお義兄さんとのマリアージュ。当日は我が家の近所の居酒屋さんで飲むことが、決定。メンバーは、ちゃま、お義兄さん、そして娘夫婦の4人。私はさすがに、遠慮した。

実は私には心配事があった。ちゃまが調子に乗っていつもより早いペースで飲み進め、飲み過ぎてわけがわからなくなってしまって周りに迷惑をかけてしまうのではないか、と。お正月、長女夫婦の家で鍋パーティーをした時もそうだった。飲み過ぎて手元があやしくなって、取り皿の食べ物を自分の洋服に派手にこぼしてしまったのだ。家を汚さず、自分の洋服だけ汚したことは褒めたい。しかし翌日、このことをちゃまは覚えてなかった。私は、また同様のことが起きないようにちゃまに釘を刺した。「わけが分からなくなるほど飲んだらダメだからね。迷惑かけちゃうから。大人なんだから自分で自制するんだよ。できるよね?」するとちゃまは、「そんなこと言うなら、もう行かないから。断っといて。」と。

「行くなとは言ってない」
「だって、自制できないなら行くなってことだろ」
「できないの?」
「そんなの分からない。酔ったらそんなこと分からない。」
「もうさあ、大人なんだからそれくらい分かるでしょ」
「分からない。お前が行くなって言うんだから行かない。断っといてくれ」

はぁ、埒があかない。その話はそこでおしまい。でも私はお見通しだった。翌日、「飲み会、断われば良いんだよね?」と問うと、「うーん、まあ行ってもいいよ。」「あ、行くの?」「うん、せっかくだから行くわ」ふふ。やっぱりな。こうなると思った。私は笑いを堪えながら「じゃ、断らないでおくね」と部屋を後にし、次女のいる部屋に入って大笑いした。「ちゃま、行くってさ」「やっぱりな」
次女もお見通しだった。

そんなこんなで一悶着あったが、お目付役の長女が一緒に行くので、安心して送り出す。‥2時間半後、ぐでんくでんのちゃまが帰宅。「楽しかった?」「うん、楽しかったよ。」「また行きたい?」「うん。お義兄さん、いい人だったよ」「そうか、そりゃ良かったね」「うん、良かった」

後から長女に聞いたが、特に迷惑をかけるでもなく、「ちゃまとしては上手くやってたよ。」とのこと。私の刺した釘の効果かな。新年早々にちゃまの夢がひとつ叶った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?