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私のヘアスタイル事情


結婚前から通っていた美容院に通うのをやめたのは、次女が生まれてからだ。理由は、シンプルに遠いから。うちから車で1時間ほどかかる。もちろんそれだけの時間をかけてでも通いたいお店ではあったが、どう考えても無理だったので新しいお店を開拓しなければいけなくなった。ちょうど遠縁にあたる散髪屋の息子さんが修行から戻って地元で美容院を開くというのでちょっと行ってみるか、と。そこから30年近く、1度も浮気をせずに通い続けた。

長く通っていたらこちらの好みを理解してくれて気に入るようにしてくれようと努力してくれるし、髪質についても分かってくれているので私がなりたいヘアスタイルと私の髪質が合わなくてもそれなりに折り合いのつくところに仕上げてくれる。なので特に文句はない。


ただ一つだけ気になっていることがある。それは、彼の態度だ。

まず予約の電話。大体いつも、電話の声は不機嫌だ。私が美容院にいる時にも予約の電話がかかってくることがある。電話に出る彼を観察していると、別に機嫌が悪いわけではない。ただ、普段通りのテンション(基本、低い)なだけだ。営業用に、少し高いキーで、必要以上に愛想良くしよう、みたいな気は全く無いらしい。
でも、電話のこちら側で聞く彼の声は、不機嫌な人のそれだ。正直、こっちは客なんですけど、もうちょっと愛想良く出来ないのかい?と言いたくなる。

午前中が良いんだけど、と言う私に「午前中は予約が入ってる」と言えばいいものを「午後なら空いてる」、とかカットとカラーとパーマを一気にして欲しいと伝えた時も「いっぺんには、無理」とか。

ま、いつものことなので、慣れた。素っ気なさは私にだけではないので、それは彼の性格によるものだし、30年も通っているのでそういう素っ気なさはある意味親しみの表れなのかも知れない。


それよりも私は、彼の、彼の父親に対する態度が目に余る。理容師の父親と美容師の彼は、二人で一つの店舗を経営している。お店に入ると右手が散髪屋さんコーナー、正面が美容院コーナーになっている。なのでたまに、私がパーマをかけている斜め後ろでは、おじさんが髭を剃ってもらっている、ということも少なくない。
そんな環境なので、父子が会話するシーンに遭遇する。予約の電話にはお父さんが出ることが多いのだが、息子宛ての電話の場合に例えば、

父「おい、〇〇くんから電話、今日の午後空いとるか?だって」
息子「‥(無言)」しばらくそのまま作業を続け、その後やっと私に対して、「ちょ、待ってて」と声をかけ、電話に出る。もちろん、電話に出た声もテンションは低い。


業者さんからの電話で「おい、△△から電話」と言われても、用事があってお父さんが何か話しかけても、返事もしない。そういう一つ一つが気になる。若い頃はそういうもんだと気にしていなかったが、私も彼も歳をとり、当たり前だけどお父さんも歳をとり、父親に対してその態度はどうなん?と、気になり始めたら気になって仕方がない。気になって、嫌な気持ちになる。


私と同じ美容院に通うママ友がいる。その昔、どこの美容院に行ってるの?と聞かれて教えてあげたら通い始めて、そこからずっと通っている。私と同じ、そのお店一筋だ。そのママ友と話した時に、ママ友も同じことが気になっていると知った。「お父さんに対する態度だけ、どうにかすれば良いのに、っていつも思う」って言ってた。


そうだよね、って。お父さんが気の毒だよね、って。
客にそう感じさせてしまっていることを、彼はわかっていない。教えてあげたほうが良いのかも知れないけど、そこまでの人間関係は構築出来ていない。


じゃあどこか他の美容院に変えたら?と言われると、そう言われてもな、となる。そう言われても何処に行けば良いか、悩む。美容院なんていくらでもある。世の中にはどんどん新しい美容院を利用する人もいる。初回の割引料金で、美容院を渡り歩く人もいる(らしい)。そういう軽やかさは、私には無い。あまりにも長く通いすぎた。

12月に、結婚式にお呼ばれした時、いつもの美容院で髪のセットはしてもらえないので、別の美容院でセットをお願いした。そこは、次女が高校時代に通っていたお店で、成人式のセットもお願いしたし、私も以前セットをお願いしたことがある。とにかくセットがめちゃくちゃ早くてめちゃくちゃ上手。久しぶりにそのお店に行って、美容師さんといろいろ話していて、パーマの話になった。


私が“可愛い”にこだわっていること、女優さんで誰が好き?ヘアスタイルでいうと石田ゆり子さんじゃなくて吉瀬美智子さんに憧れてると話すと、
「あーあれは、家ではなかなか難しいです。やっぱりちゃんとセットしてもらわないとなかなかあぁはならないです」と言われ、それを目指してパーマかけたりしてた今までの私は何だったんだ?と気付かされた。

「ふんわり、みたいなイメージのパーマは1カ月も持てば良いと思っといたほうが良いですよ」と聞き、そっか、パーマが落ちちゃうのは自分の髪質のせいだと思ってたけど、ふんわりを目指してたからすぐに落ちちゃうんだと妙に納得した。

「パーマ、ラクでしょ」
と言われ、そっか、パーマはラクなもんなんだ、と認識を新たにした。たまにパーマをかけると自分の手に負えない時があって、ブロウに時間と気を使うのが当たり前だと思っていたけど、パーマをかけたらお手入れはラクになるもんなんだ、と。


そんな話をしていたら、この人に私の髪をやって欲しいと思いはじめ、

「今度パーマをお願いしようかな」
と思わず言ってしまった。

「ぜひ、ぜひ」

そんなわけで、年明けに美容院に行きました。
セットでは訪れたことがあるけど、カットしたりパーマをかけたりは初めて、おまけにカラーまで、ひと通り全部いっぺんにやってもらうことにした。試すなら全部。気に入らなければ元の美容院に戻れば良い。

そう思いながらも実はワクワクしていた。
今までは私がなりたいヘアスタイル、こんな感じにして欲しい、こういうイメージが好み、それを主張してきた。だけど今回は、私に似合うスタイル、髪質に合っていて、お手入れも簡単で、可愛い。それをお任せでやってもらおうってんだから。
これはチャレンジ。おーそうだ、今年の私のテーマは、変化、チャレンジ。これは、最初にしてその一つと考えよう。女性のスタイリストさんというのも、実は久しぶり。高校生の頃に通ってた美容院の担当者は女性だったけど、その後はずっと男性ばかり。やっぱり女性は話しやすいし、好みのわかりみが深い。

さて、チャレンジの感想を一言で言うと、私はあまりにも他の美容院を知らなすぎた。いつものやり方とあまりにも違っていて面食らうことばかりだった。

例えばカット。いつもの美容院は、コームで髪を梳いて揃えて指で挟んでパシャ、また少しズラして梳いて揃えて挟んでパシャ。カラーの時もそう。コームで梳いて薬剤を塗って、少しズラしてまたの繰り返し。とにかく一回一回がゆっくり。良く言えば、丁寧。ところが、今回のお店はとにかくカットが早い。カラーも早い。サッサカ、サッサカと流れるように手が動く。いつものスピードに慣れている私にとってはちょっと不安になるくらいのスピード感。悪く言えば、雑。
シャンプーも違う。シャンプー台からして違う。いつもは、昔ながらの仰向けスタイル。でも今回は、ほぼ座った状態で首だけちょっと後ろに倒す感じ。首の後ろを洗う時はいつもなら頭を持ち上げられてバシャバシャ。今回は、両手でヌルッと撫でられてパシャパシャ。

いつもなら、多分3時間以上はかかるだろう一連の施術が、2時間半で終了。しかも、腰痛持ちの私に、最初に「2時間半ですけど(腰は)大丈夫ですか?」と言われた時間通り、ピッタリ2時間半。

美容院が変わると、こんなにも違うんだって、ビックリしてしまう。

結果、私はとても可愛く変身出来た。ま、“可愛く”は独りよがりな思い入れだけど。

一瞬、雑かと思ったスピードも、仕上がってみたら全然雑な感じは無かった。むしろいつもよりも髪は良い感じ。

家に帰って次女に見せたら、

「やっぱあそこの美容院、上手だわ」

美容院帰りのヘアスタイルがキマっているのは当たり前。ここからが本当の勝負。でも今感じてるのは、もう多分、前の美容院には戻らないかな、って。


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