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1億円の低カロリー

「君はどんなタイトルだって小説が書けるんだって?」
 とその編集者は言った。
「もちろん」
 と僕は答える。
「じゃあ、「1億円の低カロリー」というタイトルで書いてくれるか?」
「無理」
「え?」
「今、何でも書けるって言ったよね?」
「はい」
「だったら書いてよ」
「だから、無理です」
「何だよ、それ?」
「君はプロだよね。何でも書けるって言ったよね?」
「はい」
「だったら無理って何だよ? それでもプロか!?」
 編集者は怒り出した。
「だから「1億円の低カロリー」の小説の本文が「無理」なんですって」
「え?」
「「無理」です」
「え? たった二文字?」
「はい」
「確かに410文字以内だけれども」
「駄目ですか?」
「いや」
「じゃあ僕はこれで」
 と言って、僕は打ち合わせをしていた喫茶店を去った。

 僕の彼女を寝とった奴のところで誰が書くかって言うんだよ。
 だけど僕はプロだからね。
 書くよ。
 何でも書くよ。

 タイトル 1億円の低カロリー
 本文 無理



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