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コンビニ強盗

 しまった、不織布マスクを使い切ってしまった。
 たくさんあるからいいやと思って油断をしてた。
 そうだ、コンビニで買おう。
 近くのコンビニに行って、さっと買ってすぐに装着すれば問題ないだろう。
 僕はすぐに家を出てコンビニに向かった。

 コンビニに入ると、マスクの男が僕を見た。
 男はコンビニ店員に拳銃を向けていた。
 僕と目が合うと、マスクの男は僕に銃口を向けた。
「おい、お前、何でマスクしてないんだ」
 と男は言った。
 あの拳銃は本物なのか、と僕は疑問に思う。
 おもちゃだ、きっとおもちゃだ。
 拳銃なんてそうそう簡単に手に入るもんじゃない。
 拳銃を持っていたらコンビニなんか襲わずに、銀行を襲うはずだ。

「いやその、マスクを切らしてしまったので買いに来たんです」
 と僕は正直に言う。
「だったらそこに売っているマスクをとって、すぐにしろ」
「いやでもまだお金払ってないんで」
「いいから早くしろ! まずはマスクだろう。このご時世でマスクをしないなんて非常識だろう! お前は俺を殺す気か?」
 いやその、コンビニ強盗に非常識だとか、殺す気か、とか言われたくないし。
「でも会計前のマスクをしたら、へずまりゅうみたいに逮捕されちゃうから」
「何いってんだ! 後で払えば良いだろう」
「いや、だって、後で払うつもりだったって言ったって、どうせ誰も信じてくれないんだ」
「俺が信じるから早くしろ!」
「犯罪者の言うことなんか誰も信じないから」
「誰が犯罪者だ!? お前舐めてんのか?」
「いえその」
「早くしろ!」
 僕は仕方がなく棚にぶらさがっていたマスクを手にとって、袋を開け、マスクをした。
 ああ、これで僕も犯罪者だ。


「手を消毒しろ!」
 とコンビニ強盗は言った。
「え?」
「そこの消毒液で手を消毒しろ!」
「はい」
「早くしろ!」
 僕は消毒液を手にとって手を擦った。
 僕は入念に手を擦った。
 そうしなければまた、コンビニ強盗に怒られるからだ。
 だけどこんな状況でありながら、僕は何だか変なことを思いついてしまい、思わず笑ってしまった。

「何を笑っているんだ!?」
 とコンビニ強盗はイライラしながら言った。
「いえなんでもないです」
 と僕は答える。
「なんでもなくないだろう? いいから言ってみろ!」
 としつこくコンビニ強盗が言うが、これを言ったら絶対にまずいと思い、ためらった。
「僕は小説家なんで、ついつい色々思いついちゃうんです。くだらないことを思いついちゃうんです。だから気にしないでください。ただの思いつきなんです。くだらない思いつきなんです。これはもう職業病みたいなもので、どうしようもないんです。だから許してください」
 と僕は必死に言い訳をした。
「いいから言ってみろ! 気持ちが悪いんだよ。お前が何を思いついて笑ったのか気になってしょうがないんだ。だから思いついたことを言ってみろ」
 そう言ってコンビニ強盗は僕に銃を向けている。
 僕は渋々思いついたことを言った。


「やれ撃つな、俺が手を擦る足を擦る」


 僕は撃たれた。
 だから言ったじゃないか。
 本物だったんだ、、、。


おわり。

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