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透明人間

「私、透明人間なの」
 と奈央子は僕に言った。
「え? 何」
 と僕は問い返す。

「これを見てよ」
 と奈央子はスマホの画面を僕に見せた。
 それは、インスタグラムの写真だった。
「これが何?」
 と僕は奈央子を見る。
「これは、翔子のインスタなんだけど、ここに私がいたのに写っていないのよ」
「何、何? ドラキュラとか妖怪とか、そういう感じ? 肉眼では見えるけど写真に写らないとか?」
「そうじゃないのよ。グーグルのスマホを使うとね、写真の中の要らない人を指でタッチするだけで、簡単に消せるのよ。そうして私は消されたの」
「まじか」
「これはね、康太のインスタなんだけど、ここにも私はいたのよ。だけど消されたの。映えばえないから。ひどいと思わない? 私は透明人間なのよ」
 奈央子はインスタの写真をスライドしていった。
「ほら、ほら、ほら。どっこにも私が映ってない」
 ああ、これはかわいそうだな、と僕は思った。
 だけども僕は何か違和感を覚えた。

「あれ、この写真。僕もここにいたんだけど、、」

「ああ、あなたも透明人間ね」

おわり。

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