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短編小説

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僕の短編小説集です。
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#note

なしくずし

「初めてってさ、すっごく考えて、すっごく悩んで、なかなか前に踏み出せないのよね。だけど一回しちゃうともうどうでもいいやって思って、もうなしくずし的にどんどんするようになっちゃうのよ」  と彼女は言った。 「で?」  僕は彼女の話の続きを聞く。 「共同マガジンもさあ、最初は悩んだんだけど、一個入ったらもうなしくずし的にいくつも入っちゃったし、サポートも一回したら癖になっちゃってどんどんサポートするようになっちゃったし、メンバーシップもいくつも入ってるし、フォローもスキもじゃん

私の気持ち

「noteでエロい記事があるといいなあ、って思うんだけど、自分がそれにスキしたって知られるのが恥ずかしいからスキをできないの」  彼女は僕にそう言った。  僕と彼女は喫茶店でコーヒーを飲んでいる。  ときどき会って、こうしてコーヒーを飲んで、他愛のない話をする。そんな関係だ。   「気に入った記事があってスキするんだけど、コメント欄に他の人が書いたコメントがいっぱいあるからコメントできないの」 「うん」 「好きなnoterさんがいて、メンバーシップに加入したんだけど、その人が

ぱるるーだフォン

 僕は高級キッチン家電メーカーの「ぱるるーだ」が発売したスマートフォンを買った。  僕はそれを彼女に自慢する。 「この「ぱるるーだフォン」は何と言ってもスケジュール・アプリが最高なんだよ。さすが「ぱるるーだ」だよ」 「スケジュール・アプリならアプリ・ストアからダウンロードできるじゃない」 「だからさ、「ぱるるーだ」のスケジュール・アプリは他のスケジュール・アプリなんか比べ物にならないくらいに優れているんだよ」 「だからその「ぱるるーだ」のアプリがダウンロードできるのよ」 「

短いのがいい

「Twitterは短いからnoteみたいに読まずにスキするとかないのがいいわよね」  と彼女は僕に言った。 「うん。ツィッギーのスカートは短いのがいい」  と僕は答えた。 「短いからちゃんとぜんぶ読んでからイイネするし、良いと思わないとイイネしないし」 「短いから綺麗な足がちゃんとぜんぶ見えているし、良いと思わないとあんなに人気はなかったよね」 「忖度がないのよ」 「損得勘定がないんだよ、あの魅力には」 「noteでときどきものすごく長い記事があるけど、短く切って記事を分けて

お疲れ缶コーヒー

「お疲れ様」  と言って、彼女は僕に缶コーヒーを差し出した。  仕事で失敗して落ち込んでいた僕を励ますためだ。  僕は「ありがとう」と言って、缶コーヒーのプルタグを開けて、缶コーヒーを飲んだ。  ほんのささやかな優しさが嬉しかった。 「そう言えば、最近noteどう?」  と僕は彼女に尋ねた。  彼女はnoteを始めて、毎日更新をしていた。 「うん。なんだかなあ、って感じ。もうやめちゃおうかなって思ってる」 「僕は毎日読んでいるし、スキもしているよ」 「うん、ありがとう。でも