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エンターテイナー・ストリート

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甘野充プロデュースの共同運営マガジン「エンターテイナー・ストリート」です。  共同運営マガジンは、みんなで作るマガジンです。  小説、詩、エッセイ、絵、音楽、動画など、想像力と創… もっと読む
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2023年3月の記事一覧

ないよ、ない 【詩】

それはこころの問題だ といわれたが (どこにあるの 出してみなさい) 途方に暮れて自転車に乗った 川べりを走っていると 向こうから見たことのない動物たちが (やあ ようこそ (あなたにはあるの (ないよ なくてもいい (そう わたしにはない (あなたにもない (見たこともない (なくていい さわれない いらない 初めての街に来て 初めての経験を 肯定してもらえると嬉しいものだ 嬉しくて速度を上げる (君の自転車には あるみたいだけど (まさか ないよ ぜったいにない

新しくなる 【詩(擬似関西弁)】

新しいなあこの街は どこを見てもピカピカしてる 雨に洗剤でも混じってたんやろか 朝日がキラキラやんか すがすがしいなあこの街は 横断歩道わたるときなんかいっそ思うんや すべってころんで 大口あけて空を見る スルッと冷たいのが喉に滑り込むんや爽やかなんやとても 昔なあ 暗愚羅とか天井とかいうてたなあ とんでものう真っくれえ顔が昼間から酒盛りしとったな ゴホゴホ咳が止まらんかった雑穀ビル それが今はどうや どんだけ換気扇まわしとるんかなあハイソすぎるやんか 世間は変わったん

ドップラー効果 【詩】

ひと言も口を聞かないで 彼女は働いた 朝も 昼も 精巧なレジスターのように オフィスビルの5階 一本の蛍光ペンのように 遠くから 快速列車の音/光 やがて日が傾き 街並みが 薄汚れたランプに見えてくると (お先に失礼します とだけいい残し 電源の切れた 非常階段を降りていく エレベーターは使わない (使ったことがない 息をひそめて 影になって 使い古しの鉛筆の転がる 街路の隅を歩き 孤独が深まっていく その時刻 警報機がまたたき 遮断機が降りている (5分以上  前

硝煙 【詩】

ぶっ放した後の 硝煙のにおいで 幸せになれる 窓枠を這っている むすうの蜥蜴と その影の交錯 弾丸を装填しながら 八月を憶い出す 棕櫚の暗がりで 気の荒い芸術家のように 動物の白骨を撫でる 狩に憑かれた ノーベル賞作家のように チーターに狙いを定める 撃ち抜いた後の 幸福感に焦がれて 両手が震えた (もう子どもじゃないだろう) その瞬間 大統領の頭から 溢れ出す爬虫類 あの暑い夏の日の朝からずっと 射程に捉えていた ショーウインドウに並んでいたものは 鍵束 宝石

「血と泥と」

「血と泥と」 俺はコールタールのような大気の中をもがきながら進んでいる。  変質したのは空気だけではない。想念や感情や何気ない日々の光景、そのあらゆるものが粘り、へばり憑く悪意でこの俺を潰そうとする。  俺のひとつひとつの行為そのものに渾身の意志が要求される。  安らぎの眠りすら与えられぬ。何もかもが意識的な行為、必死の決意が普通であると、誰が信じえよう・・・・・・。  眩暈、吐き気、激痛が俺の全存在に猛威をふるい責めたてる。  ああ、俺はこの状態に何処まで、いつまで耐

「錬金術」

「錬金術」                           感覚の門を開きたるもの秘儀をすべて坩堝にて変容せり 滅々たる厳粛静謐空間の秘儀 死や眠りすら剥きだしにされたるおのが神経に震えつつ冷酷なる意に成す術なく従うのみ 魑魅魍魎共姿無き眼差しに怯えおののき凍りつくばかり   地獄の王その光景に憤怒と嫉妬羨望の閃光を放ち悶え狂い 自らの業火に灼かれ太陽黒点の涙となり銀河を超えて星々を砕く 嵐の如き流星群に四大の霊ども狼狽え乱心乱舞せり   人類と呼ばれしものそ

「告知」

「告知」  人々が深い眠りに墜ちる時、その時に密やかに語られる言葉がある。本来、その言葉は昼夜に関わり無く語られているのだが、感覚界の鈍重な知覚のベールがそれを常に阻んでいる。ゆえに夢の中でさらに意識的に夢見ることが可能なほど強靭なる魂しかその霊妙なる言葉を日常のなかで聞くことは出来ない。    一体、何だ?さっきの妙に生々しく鮮烈な夢は。不思議な郷愁とおぞましさが混淆していた。            それにしても、この冷徹なおれがたかが夢ごときにおののくとは、、、。

【エッセイ】孤独は贈り物だ~Isolation is the gift~

Isolation is the gift 中島らもの記事やランブルフィッシュという映画の記事を書いている時に度々チャールズ・ブコウスキーという作家/詩人の事に触れているが、私の中では海外の作家と言えば、バロウズ、ケルアック、ギンズバーグと並んで外せない人物なので、記事にしておきたいと思った。  この記事のタイトルとした”Isolation is the gift”は彼の「Roll the dice」という詩の一節である。 ”孤独は贈り物だ”この詩を素材にした動画は多く存