ナビで誘導された山道
これは、私がライターを始めて間もない頃の体験です。何かを見たという具体的な怖さはありません。ただ、私にとっては不可解で怖い体験でした。
取材の帰り道
その頃、私は某医療系ポータルサイトの仕事を受けていました。私が担当したのは歯科医院の紹介記事10件ほど。院内の撮影と院長へのインタビューを行い、4000文字の記事を書き上げるというものでした。
その日の取材は午後のみで、2件。2件目の取材は診療終了後だったこともあり、医院を出たのは19時近くになっていました。それでも、自宅には20時頃には戻れます。記事を書くのに十分な量の取材を終えて安堵した私は、車のナビを設定し、帰路についたのでした。
車も少なめでスムーズに進み、ほどなくして自宅がある地名が書かれた案内標識も確認。このまま行けば予定通りの時間に到着できます。
ときどき出てくる案内標識を確認しながら、ナビを頼りにドライブを楽しんでいました。
ところが・・・。
1時間近く走った頃でしょうか。私は妙なことに気づきました。
(あれ?目的地までの距離、伸びてないか??)
出てくるたびに近づいていたはずの案内標識の距離が、急に遠くなっていたのです。そのうえ、道も狭くなっています。そういえば、いつの間にか周辺の車は1台も見えなくなっていて、後続車も対向車もきません。
さすがに不安になりましたが、ナビは問題なく案内を続けています。
(方向は合っているし、大丈夫だろう)
私はそのまま進みました。ところが、道はどんどん狭くなるばかりか、周囲は雑木林。いつの間にか山道に入っていたようです。時刻はとっくに20時を過ぎています。深夜ではなくても、街灯も車も民家もない闇夜の山道で怖さはMAXに。左右の雑木林は深く、闇が広がるばかり・・・。私は雑木林に目を向けないようにし、必死で走りました。
(どこかで間違えたんだろうか?でも、どこで??)
(これ、本当に出られるの?)
方向変換できそうなスペースもなく、それより車を停める勇気はもちろんありません。
誰かの声を聞いて怖さを紛らわせたいと思った私は、夫に電話することに。片手でどうにかスマホを操作し、スピーカーフォンで話すことにしたのです。ところが、愛犬と寝ているのか何なのか、携帯も2台の固定電話にも出ない夫。仕方なく時間的に大丈夫そうな友達に電話すると出てくれたので、ようやく安心できました。
帰宅後の違和感
友達とどれくらい話していたのかはわかりません。ひたすら進んでいると、ようやく山道を抜けました。そして、やっと知っている道路に出たのです。友達にお礼を言ってすぐ電話を切り、ひたすら走り続け、やっと自宅に到着したときは22時近い時間になっていました。
帰宅すると、夫と愛犬が迎えてくれました。2人は案の定寝ていて、今起きたと言います・・・。それより、私は山道を出る辺りから違和感がありました。肩から頭部にかけてジリジリとした嫌な感覚が続いていて、
(絶対何か持ってきた・・・)
と直感した私は、夫に塩をかけてもらうことに。玄関で祓い、その日は純米酒と塩を入れたお風呂に入っておきました。
落ち着いてから、一体どこを通ってきたのかGoogle mapで確認。すると、ある山を抜けて予定とは反対側の道に出ていたことが判明したのです。
以前も誘導されていた林道
私が
(気持ち悪いな)
と感じたのは、何かを持ち帰ってきただけではありません。実は、それ以前にも同じ山に誘導されたことがあったからです。しかも、違う場所から。
まだ会社員だった頃で、自社が運営する店舗から顧客の店舗へと移動していたときでした。たしか20分もかからない距離で広い一般道で行ける場所なのに、そのときも山道に入ってしまったのです。道はどんどん狭くなり、周囲は雑木林。夕方の早い時間帯だというのに暗く、気味の悪い山道でした。
そのときも、いつから山に入ったのかわからず、不安で怖かったのを覚えています。同じように遠回りになり、到着は遅れてしまいました。そして、何かを持ち帰ってきた感覚も同じです。
闇夜の雑木林の道は本当に怖くて、もう絶対に通りたくありません。
7〜8年前までの私は妙なものに引っ張られて何か連れ帰ってしまうことが多く、それも悩みの1つでした。
それもどうにかしたくて神仏に頼り、今はそういったものとは一切縁がなく過ごせています。
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