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眠れぬ夜のためのプレモータム

不安の正体は、やるべきことに手をつけられないことからおきるといいます。日々なんとなく不安を感じることが多い方のために今日はプレモータムという手法をご紹介したいと思います。

プレモータム(premortum)とは事前検死という意味で、その名の通り、将来に問題が起きると想定して、その原因を先に検証することでリスクを明らかにして先に対策をできるようにするような手法です。

これに対してポストモータム(postmotum)という事後検死という言葉の実際に起きた問題に対して原因を検証するという意味の用語があるのですが、こちらの方が有名かもしれません。

私は新しいプロジェクトを始めるときや、漠然としたことがあるときこのプレモータムを実施するようにしています。
プレモータムには気分を楽にする効果や実際にトラブルを予防する効果もあると思いますので、特に眠れぬ夜をすごすことが多い人で何も対策がない人にはお勧めです。

プレモータムの進め方

私がプレモータムをはじめるときは、主に下記のようなカテゴリで懸念事項を洗い出します。

大けが・・・取返しのつきにくい大きな問題
小ケガ・・・大けがほどではないが、発生すると困る問題
かすり傷・・・大した問題にはならいが起きうるトラブル
不安・・・問題ではないが、漠然と不安に思っていること

具体的な例がないとわかりにくいと思うので、クリスマスパーティを例に進めたいと思います。

まず、上記のカテゴライズで項目を出していきます。
項目をあげていくポイントとしては、落とし穴として、何を準備してやるのかという小悪魔的な視点でどんどん書きだしていきます。
まずは、問題領域とよばれるこの部分をできる限り悲観的に洗い出します。ポイントとしては、回避策などはまぜないことです。回避策やその他対策については、別途あとで行います。

今回はXmindという無償で使えるツールを使ってロジックツリー形式で記載していきました。ツールについては、特になんでもいいですし、紙に書いても別にいいと思います。


問題領域の洗い出し

次に対策(解決領域)の記載を行います。
解決領域については、3つにカテゴライズします。

準備・・・問題が発生する前に問題発生をなくす、もしくは抑制するために実施する内容です。
代替・・・準備がすでに間に合わない場合に、問題の前提自体を見直し、問題発生を別の対策で置き換えるために実施する内容です。
諦観・・・すでに問題が発生してしまうことを想定した上で準備しておく事後的なフォローです。

対策の質としては、一般的に準備で防ぐ方が価値が高くなります。問題発生のタイミングが近づくほど、できることは限定されるため解決方法の策は価値が低くなっていきます。解決策としての価値の高さは、高い順に「準備」→「代替」→「諦観」という順序になります。

問題と解決策の関係

特に代替や諦観を実施する場合、問題の発生した影響を完全に抑え込むことが難しいときがあります。そういった場合には、「遺憾」というようなラベルをつけておくようにします。


こんな感じで対策、準備、代替、諦観で解決策を記載し、できれば回避したいアイテムには遺憾と入力

当然、このラベルがついている対策は、できればよりよい対策でなんとかしておきたいので、別の対策を選択しておきたいところです。一般的には準備の対策をとれるように計画を立てます。

こんな感じですべて入力していきます。


全部入力

これで終わりではなく、「準備」で入力したタスク項目を自分のカレンダーに全て入力します。何月何日の何時というレベルで入力します。当然その日がきたら淡々と実施します。

そして、ここがポイントですがそこまでできたらすべて忘れます。
また、追加で不安なことを思い出したらロジックツリーに追加して同じことを繰り返せばよいのです。自分はやれることを洗い出している、できることはすべてやっているという心理になり完全に忘れることで不安を感じないように開き直ります。

品質保証などでやるリスク管理との使い分け

プレモータムに類似したリスク管理を仕事の中でやられている方も多いのではないでしょうか。私も品質管理の一環として業務的にやっていたことがあります。ただ、こちらで紹介したプレモータムはもっと日常的に利用してほしいなと思っていてその理由を以下で説明します。

対策へのアクションが励起されにくい

業務的なリスク管理ですと、過去からのチェックリストが再利用されることになっており、多くの項目は過去に問題がおきたときに「対策された」ことになっています。そのため、対策を考えるというよりそのアクションをやるためのTo Doリストのようになっており、やっている人も儀式的にやっているいわゆるブルシットジョブになっていることが多いです。そもそも何百項目もあるときもあり、追加する項目は最低限にしたいというインセンティブが働き、些細なことなどは書かないような気持ちになることが多いです。プレモータムは、新しいどんな形の業務でもあてはめることができるので、「自分」の不安に対して有効なアクションをきちんと抽出することができます。

私的なことが書けない

プレモータムはチームでやってもいいのですが、個人レベルでも別で実施してほしいです。業務的なリスク管理では、私的な不安がかけません。例えば、「課長がなかなか提案を承認してくれない」、「新人の〇〇さんが失敗しそう」、「〇〇さんが初めての経験」、「〇〇さんが長期休暇をとる」、「クライアントが無理な前倒しを要求してくる」など公のドキュメントに書くには気を遣ってあげられないような項目があります。ただ、不安の多くはこのような人間関係の中から発生するので、これらの内容を除外するとあなたの不安を完全に取り除くことはできないのです。
私はプロジェクトレベルやちょっと大きい商談など、ちょっとしたことに対して小さくプレモータムをやるようにしています。

自分の想定を超えてきた問題を記録

プレモータムした後に自分の想定を超えてきた問題が発生した場合、それらの問題をきちんとリストに残しておくことが大事です。
「実際に起きた問題」のような形で別で記載しておくとよいでしょう。
どんな想定をすり抜けてその問題が起きたのか考えることで自分の中の不安を洗い出す軸が強化されていきます。皆さんもこのような経験をご自身でされている方も多いと思いますが、それらが帰納的に自分に蓄積されるほど、自分の業務能力が向上することにつながると思います。何か問題がおきたとしてもそれは自分の成長につながっていると思えると不安は和らぎますよね。むしろ、ゲームのようにそうきたかぁ、それは思いつかなかったなぁみたいな感じで楽しく自分の経験として蓄積していくようにしましょう。

このようにとても有用なプレモーテム、是非皆さんも日常的に取り組んでみてください。


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