見出し画像

忘れるという技術

最近覚えた技術があります。
忘れるという技術です。
正確にいうと、忘れる技術と忘れるための技術です。

意図せず拘束される気持ち

忘れることが有用だと気づくにいたったのには理由があります。
以前の私は朝起きたらその日何をするか考え始め、仕事が終わっても抱えている問題をずっと考えているような人間でした。

その結果、軽い不安症や睡眠障害みたいな状態になっていたようにも思います。真夜中に次の日のことを考えて、目が覚めることもよくありました。こんな日々をなんとかしたいなというのがきっかけでした。

タイムマネジメントやタスク管理のことはよく勉強していて、以前は有名なGTD(Getting Things Done)をベースにしたバレットジャーナルというノートを使ったタスク管理をしていました。ただ、終われないタスクが積み上がっていったり、思いついたタスクが追加されていき、一定の効果ややってる感はあったのですが、ストレスが解消されることはありませんでした。

そのため、いろいろと工夫を重ねて最終的にはほぼストレスフリーな状態になりつつあります。
究極的には忘れる技術に集約するのですが、そこに至る今までの取り組みについて紹介します。

タスクの作り方

まず、何が問題なのか分析した時にタスクが構造化されておらず、完了見込みを立てるための標準時間を考慮していなかったということがわかりました。そのため計画が不安定になっていました。

また、発生するToDoリストに対する必要性の吟味が甘いということもわかりました。

当たり前ですが、ある目的(目標)がある時に、目標へ向かってのプロセスがあり、各プロセスがどれぐらいかかるのかあまり考えずに作業していました。そのため、直前まで慌てて作業していることも日常的でした。
プロジェクト管理のイシューとかに対しての見積時間とかはきっちりやる方でしたが、あらゆる作業に対して因子分解して標準時間を持つようにしました。こういうと、あらゆる目的に対してそれは大変ではないかと思うかもしれませんが、業務としてやるタスクはあるていどパターンがあるので、このプロセスをモデリングする作業は、思ったほど、大きな作業にならないことに気づくかと思います。

大事なところは、タスクを大きなチャンクにせず分割することです。
計画に必要な時間が感覚とずれていることにも気づきやすくなります。
タスクを頼まれた時の見積精度も上がりました。
また、副作用的な効果として業務プロセスの各時間を計測し、改善することができるようになり作業時間は確実に短くなっていきます。

苦手なタスクを頼める人を作っておく

こうやってタスクを分解していくと、簡単な作業なのに自分が嫌いな作業があることに気がつきました。例えば何かを郵送するというような作業です。大した作業ではないのですが、作業に移すための心理障壁が高く、作業が停滞する原因になっていました。不定型で判断が難しい業務は流石に自分がやるしかないのですが、こういう軽いけど、苦手な作業は上司と調整して営業アシスタントの人に、依頼することにしました。宅配便の手配などもです。

他の人に頼めないことも、自分が苦手としているタスクを認知して、把握して、それをなくせないか、無くせないとしたら標準時間を大きめにとるようにしました。


これは立場によっては難しいかもしれませんが、無駄なストレスが減るので検討する価値はあると思います。

ToDoはカレンダーのスロットに入れる

To Doリストをカレンダーに入れている人は多いと思います。タスクを入れる時に時間を指定せずに入れていたのですが、プロセス分解で標準時間を持った後に、きちんとタスクをカレンダーの時間を指定して登録するようにします。
大きなタスクは1日の中で実施できる作業に分解されている必要があります。また、タスクがつながっていくタスクチェーンが確認できます。
こうすることで、タスクがあふれてしまうのを防ぐことができます。

コアタスクバッファー

この時点でカレンダーには、タスクが登録されていくのですが、重要かつ不定型、未経験なタスクに関しては、タスクバッファーを持ちます。
タスクバッファーは1日の中や、複数日持ってもいいです。また、何から手をつけたらいいかがわからなくなりがちなので、プロセス分解の粒度を細かめにしておきます。

作業時間は、ミーティングなどで圧迫されがちですが、ミーティングをどれくらい許容できるのかもはっきりとわかります。

プレモータムと計画的集約

自分の計画を壊すのは急な割り込みの作業だったりするのですが、割り込みの作業には、防げるものとそうでないものに分類できます。

こういった作業を洗い出すには、プレモータムが有効です。自分の不安を洗い出しておき、不安の対策となるタスクもカレンダーに入れておきます。割り込みの原因となるトラブルは、リスクに対しての監視や備えを放置することによって発生します。また、残念ながらトラブルメーカーと想定しやすい人も割と事前に目星をつけることができるので、しっかりケアしておきます。

KPI、プロジェクトの進捗もリアルタイムにアップデートしてるファイルや場所(Notionのページ)にまとめといて、まずはそこみてねとステークホルダーに依頼しておきます。

上司などに「あれ、どうなった?」と言わせたら負けです。計画的に軽い報告を入れます。
計画的に報告してないと、割り込みっぽく上記の言葉がやってきて、不意なタスクが発生しがちになります。タスクの発生タイミングはコントロールしておくことが大事です。

自分が上司の立場でも「あれ、どうなった?」と聞いたら負けです。上記のように基本の状況を把握できる場所と、定期報告してもらえる場所をきめておきます。バッドニュースを広いあげるアラートの感知方法として、週次の予定工数に対して急に工数が膨らんでいたり、全く消化できてないタスクがあると少し詳しめに状況確認すると、大体何かおきてるので、このタイミングでフォローのタスクを作成します。「何が問題ありますか?」という聞き方では、個人によりばらつきがでやすいのですが、KPIや工数など定量的な数値をもとに確認を行うと、このぶれがなくなります。

1 on 1の時間も定期的に確保して、悩みや相談事、メンバーが最近気になっていることなどを把握したり、対話するタイミングを固定しておきます。

私はハイブリッドワークなんですが、オフィスに出勤する時は、いろんな人と話す時間帯も予定化しておきます。そうすることで、じっくり相手に向き合って雑談ができます。

そうやっていろいろなことを計画化し、突発的に何かが発生する確率をさげます。

ストレスフロー管理

さらに大事な商談や会議など心身に負担がかかるイベントの周辺には、重たいタスクを配置しないようにしていきました。それよりも回復する時間や、元気になるタスクを配置して自分を労ります。

1日中生産性を追求しないようにしましょう。
人間の集中できる時間は3から4時間です。
1日の仕事を生産性を追求する時間と意味を追求する時間に分けましょう。
意味を追求する時間とは、アイデアや戦略、組織活動などのプロセス化しづらいことを考える時間です。こういった類のことを考える時間は非生産的であるという前提でやりましょう。
また、自分にとって意味のある活動、大事にしたい活動を学ぶ時間も意味を追求する時間に入ります。生産性を追求する仕事と、意味を追求する仕事は使う脳のシステムが違います。行動経済学者のダニエル・カーネマンがシステム1、システム2とよんでいたものです。コンテキストスイッチが頻繁に起きないように生産性を追求する時間と意味を追求する時間はそれぞれまとまった時間にしておきましょう。

https://note.com/mitsumunet/n/nae5d4cbe19ff


キーエンスさんのKPIの追求によるすべてを生産性に全振りする仕事のやり方は素晴らしい成果を上げており、私も参考にさせてもらっていますが、自分を機械化してしまうリスクもあります。思考そのものに意味を考える時間が含まれてないようにも思えます。


生産性を追求する時間は、なかなか幸せ感を感じにくいものです。私は意味を追求する時間を持って1日の満足感の収支をよりよいものにすることを考えました。「人生の意味は意味を考えた時に発生する」というV.E.フランクルの意味への意志を毎日実践するのです。

細かなストレス源も把握して回避します。例えば、ミーティングブースで1時間もミーティングしていると息苦しくなったり、自分の匂いや他人の匂いも気になります。これも小さなストレスなので、ミーティングルームが空いてたらそちらを使います。

集中したい作業は在宅勤務の時に固めたり、電車はなるべく始発で座れてゆっくりできる時間のものを選んだり、1日のストレス発生源を抑制します。ストレスが発生したあとに疲れをエナジードリンクや瞑想で回復しようとしている人もいますが、本質的には発生させないようにすることの方が優先順位は高くなります。また、ストレスがよいストレスなのか悪いストレスなのか分別して悪いストレスは徹底的に排除するようにします。自分を成長させてくれるよいストレスという考えもあるので、自分がストレスを感じるときは一歩ひいてどちらのストレスなのか考えるようにしましょう。ちなみに私はエナジードリンクは飲みません。カンフル剤のようなもので、心身に負担を与えてしまうからです。
コーヒーも夕方以降は飲まないようにしてます。

1日のプラス側の感情にも気を遣います。具体的には、家族とゆっくり会話したり、時間があったら散歩したり、ゆったりした気持ちになることも意図的に予定に含めます。意志を持ってやるのです。

そして1日が終わった時に
「今日もよく生ききったよい日だった」
といえるようにしておくのです。

これは、私が最近推進している「ご自愛マネジメント」の一部なのですが、自己愛から他者愛までシフトしていくようなマネジメントのやり方をいいます。ポスト生産性、最適化の働き方として今後考慮されるようになるでしょう。


そして忘れる

ここまできて、やっと本題の忘れるという話です。やるべきことは全部カレンダーに入っています。順番やリスク対策に対してもタスクが入っています。

準備は万端なはずなので、仕事時間外に仕事のことを考えることを一切忘れます。
そして今ここでやることに集中するのです。
トラブル対応など、頭に残りがちなことも対策するアクションをカレンダーに登録したら一旦すべて忘れます。それどころか、目の前のタスクをやっているときは、後の予定ことを全部忘れて集中します。集中してると、幸せ感や満足感が高まります。

失敗したことに対しても、ポストアクションを登録したら忘れます。くよくよして反省してるふりはしません。

こうして今はすっかり目の前のことに集中して、家に帰ってもダラダラ仕事のことを考えることはなくなりました。不安から解放されたともいえます。

最近、注目されている「仕事と仕事以外の境界線の管理」、バウンダリーマネジメントの観点からも忘れる技術は重要な技術になると思います。

それでも何かが起きる

上記で説明してきたように、いろんな準備をしてきても何かはおきます。

だから準備しても無駄という人がいますが、私は違うと思います。

何かは大体自分がおいてるスコープの外から現れます。小さいことだとプロジェクトの前提、大きいことだと部門の視点、その上の経営の視点、業界の視点、コミュニティの視点、社会全体の視点、こういったスコープ外の出来事に遭遇した時、それは自分の視野や視座を広げるチャンスとも言えます。あるいは単純に自分の観点が不足していたことに気づくだけかもしれません。しかし成長の機会であることには違いないのです。

忘れるためにはいろいろ準備が必要なわけですが、その過程でもいろいろ学びがありました。

何かみなさんのお役に立てれば嬉しいです。
ではまた。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?