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自己実現に必要な意外な態度

マズローの自己実現欲求は有名ですが、自己実現を達成する人が持つ自己実現的要素についてはあまり知られていません。

マズローは、自己実現者が持つ特徴として次の15の特徴を挙げています。

① 現実の正確な認知
② 自己、他者および自然の受容(ありのままを受け入れることができる)
③ 自発性
④ 課題中心性(自己にとらわれずに課題に集中できる)
⑤ 超越性(周囲に巻き込まれずにプライバシーを保てる)
⑥ 自律性
⑦ 鑑賞力の新鮮さ
⑧ 神秘的体験
⑨ 共同社会感情(人類との一体感)
⑩ 少数の友人や愛する人との親密な関係
⑪ 民主的性格構造
⑫ 手段と目的の区別(倫理的感覚)
⑬ 哲学的で悪意のないユーモアのセンス
⑭ 創造性
⑮ 文化に組み込まれることに対する抵抗

榎本博明「自己実現の罠」より

全体的に割とふむふむという感じですが、
超越性、神秘的体験など一部「?」というような内容もあります。

その中でもちょっと意外だったのは一番最後の「⑮ 文化に組み込まれることに対する抵抗 」という項目です。なぜ、この項目が含まれるのでしょうか。

文化とは?

ここでいう文化とは、広くいう他者との関係性で構成される共通の認知で、その時代に流れる空気感であったり、自分が住む地域を支配するイデオロギー的なものでないかと推測します。

もっとわかりやすく身近な例としては、例えば所属している組織のカルチャーと置いてもいいかもしれません。

ではなぜ、その文化に組み込まれることに抵抗すべきなのでしょうか?

それは、例え善意の行為にみえる企業のモチベーション•マネジメントであっても内発的動機づけの仕組みを把握した上で、巧みにこちらを動かそうと働きかけてくるからです。
具体的には給与などの外的報酬である程度満足させつつ、熟達感、成長感、充実感、達成感、責任感、使命感、好奇心などが満たされるような工夫をあらゆる手段をつかい働きかけてきます。
それらに抗う必要があるというのです。

拒絶ではなく、組み込まれることに抗うという表現になっている意味は、例えどれだけまともそうな論理であっても自らの所属する文化(職場)を客体化して吟味し、自分の意思と照らし合わせた上で自己決定、取捨選択する姿勢が必要になるということです。
受動的に受け入れないという態度ですね。

ここで注意が必要なのは、ローバート•キーガンの発達段階でいう、利己的段階、道具主義的なマインドではダメで、少なくとも自己主導段階、自己著述段階のマインドである必要があることは他の特徴(自己、他者、および自然の受容)からもわかります。

要するに他者の視点も加味したマイルール(自らの規制)に従って動くということですね。

会社のパーパスと個人のパーパスが完全一致することはまれです。会社だけでなく、生活全体を通じて個人のパーパスが達成できるようにバランスをとる必要があるのです。

会社は自己実現のためにと、常に能力の向上と発揮を求めてきます。
しかし、肯定性しかないその要求を無自覚に受け入れると待っているのは終わりのない消耗だけです。

自己実現とは全体性を持つものです。
与えられた価値観が、自分にとってどんな意味であるか、今この瞬間に自分が何を感じ、何を思っているかを察知し、新鮮なこととして受け止めることができる人が自己実現に近づいていく人のように思います。

自己実現という言葉にはポジティブな響きがありますが、そのポジティブな印象を利用して悪用されているケースもあります。

会社の中で自己実現という言葉を聞く機会があったら、この話を思いだして下さい。


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