読書感想「モモ」

今回はミヒャエル・エンデ作の「モモ」です。

同作者の有名な「はてしない物語」は以前に読ませていただきました。

人が物語を楽しむ手段に、なぜ本という形が存在するのか。そして、物語が人にもたらす影響力について、とても考えさせられました。

エンデの作品は勧められて読み始めたのですが、今回の「モモ」もそのうちの一つです。

「はてしない物語」同様、大きく、そして普遍的なテーマを捉えていました。

時間という概念について触れている「モモ」では、児童文学でありながら人生というもっとも長い時間について考えています。

しかし、そこは児童文学らしく、難しい表現や描写よりも、印象深い場面を読者の思考にきちんと届けることで、生と死、未来と過去の在り方に結びつける部分が流石だと思いました。

そして、主人公・モモの敵として現れる灰色の男たちは、私たちの心に知らず知らずに住み着いている、漠然とした恐怖のような気がしました。

何かに追われながら生きる私たちは、次第に考えたり感じたりするよりも先に、効率的に動くことを選ぶ。時間を無駄にする余裕がなくなると、自然に生き急いでしまう。それは、自らの意思に関係なく、死に近づいているということ。そうして後をついてくる存在が、灰色の男たちのように思いました。
この辺りは、大人になってから読むからこそ、大きく痛感する部分でもありました。

個人的には、終わり方がとても好きでした。

モモが人々の時間を取り戻した勇姿を知る人物は、モモ以外は作中には登場しません。

しかし、最後の一文で、モモの活躍を知るのは、モモ以外にも読者のあなた自身がいる、ということが示唆されています。

そして物語は終わり、エンデによる短いあとがきが始まります。

エンデは「モモ」というこの話を、夜行汽車の中で出会った、年齢の読み取れない謎の人物から聞いたと言っています。

年寄りなのか若いのか、それとも子供なのか……。
その人物は、モモという少女の勇姿を知る、いつかの時代の私たち「読者」に当てはめることができるのではないでしょうか。

本を読むことを純粋に楽しむ。
エンデのこうした姿勢が、長い時を経てもなお、語り継がれる物語になる要因になっているのかもしれません。

それでは、またいつか。

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