見出し画像

【映画】藤原季節の存在感「わたし達はおとな」感想

藤原季節が圧倒的にカッコいい。
そして、イヤーな感じがする。すっごく引っかかる。存在感がすごい。悪い人に違いないと思っても、こっそり盗み観てしまいたくなる感じ。関わりたくはないけど。
映画「わたし達はおとな」(加藤拓也監督)を観終わっての感想だ。
2013年に、紀伊国屋ホール「ぬるい毒」で初めて見た池松壮亮君から受けた衝撃に似ている。これからビッグになる匂いがする。
大学生の優実(木竜麻生)の、直哉(藤原季節)との新しい恋愛や元彼(桜田通)からの執着され方、友達関係等を描いた作品。
主人公の女の子優実(木竜麻生)は、可愛い(時々綾瀬はるかに似ている感じがした)。普通の人が一線を越えてしまう感じの「手ごろな狂気」みたいなものもよく表現していると思う。が、藤原季節に比べると、インパクトはあまりない。むしろ女医役の片岡礼子が、ほぼ映らないのに存在感があって「さすが」と思う。「クズの本懐」で存在感抜群だった桜田通も脇を固めている(もっと目立つ役で見てみたい)。

印象に残ったのは、主人公の女の子がトイレにこもってしまった時に、出てこいと言っても出てこないのに対して、藤原季節が電気をカチカチするところ。殴ったりしないのに、これほどDVみを感じさせて怖い人柄を表現する方法があったのか。すごい。こういうことする人っているのか?いないなら、誰かが考え付いたなら、考え付いた人はすごい。そして、こんなことする人は、ホント嫌だし怖いし、付き合えない。速攻別れたい。(後でパンフレットを読んだところによると、監督のアイデアらしい。)

ほどよく嫌なささくれを味わうような映画。カンヌほどではないけれどカンヌみがある、というか。恋愛も、大恋愛というわけではなくて色々ひっかかりつつの付き合いだし、友人関係も、仲が悪いわけではないけれど確固たる信頼が築かれているわけではない危うい4人組の友達。
でも、ドロドロに救いようがないわけではなく、モヤモヤと不快な感じ。この世界にいるような、現代の空気感をパックしたような。後味がいいわけではないけれど、好きなタイプの映画だ。「主人公=正義」ではないところも、現実味があって、いい。
ただ、時系列をシャッフルするようなタイプの編集は、あまり好きではない。それがイマイチ。あとは、かなり好きで、見終わってからも反芻してふと思い出してしまう。

最後、主人公の女の子が一人で、映画の冒頭では二人で食べていた朝食と似たようなメニューを食べる。その「少し変わったけれど、あんまり変わらない日常」で終わる感じも、いい。

ちなみに、この映画は、「(not)HEROINE movies」(何ドンもされない。胸キュンもしない。恋とか愛とか生きるとか自意識とか、考えすぎてこんがらがって。それでももがいて生きている”ヒロイン”になりきれない”ヒロイン”たちの物語)という、等身大の女性のリアルを新進監督が描くという企画の第一弾らしい。
第二弾は「よだかの片想い」(安川有果監督、島本理生原作、松井玲奈主演)9/16公開とのこと。楽しみだ。

この記事が参加している募集

映画感想文