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【映画】リベラルな町おこし映画?「his」感想

 藤原季節と宮沢氷魚、一瞬違和感を感じるけれど、次の瞬間、お似合いかも?と思えるマッチング。と、岐阜県白川町(「白川郷」ではない)の空気感が心地よい映画。男同士の恋愛が、ごく普通に描かれているのが新鮮で面白い。
 映画「his」を見終わっての感想だ。

 宮沢氷魚演じる井川迅が、岐阜県白川町の一軒家に一人で暮らしている。川辺で読書をしたり、近所の猟師さんに肉をもらったりと、質素ながらも心静かに穏やかな日々を過ごしている。
 そんな迅のもとに、学生時代に恋愛関係にあった日比野渚(藤原季節)が、6歳の娘「日比野空(そら)」(外村紗玖良)とともに突然やってくる。渚は離婚訴訟中。プロサーファーになると言って、迅と別れた後、単身オーストラリアに行ったもののプロでは通用しなかった。現地で通訳としてバリバリ働いていた女性と結婚し、主夫として育児もやってきたが、結局結婚生活はうまくいかず、娘の親権も裁判で争っている最中だ。その離婚までのことや、白川町での生活などを描いた映画。

 意識して観る映画を選んだわけではないが、またもや藤原季節が出ていた。映画「わたし達はおとな」に比べるとクセは弱い。が、やはり存在感はある。
 が、この映画では、宮沢氷魚の不思議な存在感が大きい。非日常的な存在感。いつまでも見ていたくなるような雰囲気がある。
 その相手としては、藤原季節は「宮沢氷魚が好きになるのもわかる」と思わせる存在感がある。お似合いの二人だ。配役の妙だろう。二人で並んで立っているだけで、元カレ同士の雰囲気がある。説得力がある。

 不思議なのは、エンドクレジットを見ても、岐阜県白川町が全面協力して撮影している映画のようだけれど、町おこし映画なのだとしたら、珍しいテーマだということ。「町おこし」ありき、というよりは、「映画」の話に対して町が協力した、ということなのか。町おこし主体な映画にありがちな無難さはない。相当攻めていてラジカルだ。が、全体の雰囲気としては、田舎のよさがよく出ている。よさだけを掬い取って散らしたようでもある。実際は、どうなのだろう?こんな風に、「この歳になると、男も女も変わんねぇわ」という根岸季衣のような町民ばかりだといいのだろうが…。

 ただ、見終わって感じるのは、田舎に小旅行をしたような穏やかな気分だ。確かに、井川迅が、日比野渚が、空(そら)ちゃんが、どこかに生きているような気分になる。いい映画だった。
 個人的には、宮沢氷魚演じる井川迅が、日常的に川辺で昼寝をしながら本を読むことができるのが、最高にうらやましい。のどかさの極みだと思った。


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