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日記 第4話 (読了3分)

前回までのあらすじ
緊急救助隊に勤務する西澤祐樹はパワハラをする上司と喧嘩になり、会社に辞表を出すが、人事の頼みで長期休暇で気持ちを収めることにした。離婚をしたばかりの祐樹は一人に耐え兼ね、結婚相談所に面談に行くことにしたのだった。

日記 第4話

ブースでアンケートを出された。今までの経歴や好みの女性を記入するようになっていた。

その下に仕事の経歴欄があった。入社年度と今の状況を書く。

“上司から殴られそうになったが、足蹴りをして殴りそうになって辞めた、全てが嫌になったが、退職はせず、ただいま長期休暇中“

と書いた。

結婚歴のところには離婚歴のありなし、理由などを記入しなければならない。

離婚歴はあり。

離婚理由は“SMクラブの道具を見つかった。熟女パーティのパンフ100部が見つかった。しかしそれは俺じゃない誰かだ”

と記載した。ここで木村の名前を出すのはフェアじゃないと思ったからだ。

好みの女性のところに

「結婚していた妻は2つ下だったが年上もまんざらでもない。でももっと若くてもOK」

と記入した。結婚の時期と理由のところには

“すぐにでも“に○をした。理由は”夜になると妻の怨念が部屋を彷徨っているから”

と記入した。

祐樹は全て記入すると誇らしげにペンを置いた。新しい女性との生活しているシーンがいやでも頭の中で膨らんでいる。女性の顔は目の前の近藤さんだ。

「ありがとうございます」

近藤さんが細くきれいな指先でアンケート用紙を引き寄せた。手元のプレートに乗せ静かに目を通す。近藤さんの周りだけ室内の喧騒から切り取られていく。静寂の中で近藤さんの目が文字を追う。祐樹はじっと近藤さんの様子を見ていたが、だんだん表情が険しくなるのがわかった。

「西澤さん、最近はお仕事が忙しいとか、何か問題をかかえているとか、困っていることなどはございますか」

近藤さんがさっきまでとは違う表情で質問する。何かまずいことでも書いたのかと思った。

「いや、会社はただいま長期休暇中であります。問題は妻が逃げるように出て行ったことです、いや、夜の方が困るかな、暗くすると特に」

「わかりました」

近藤さんは何かに納得したように立ち上がった。

「少しお待ちくださいね」

アンケートを手にした近藤さんがパーテーションの裏に消える。

会社の中は大きな花がところどころに置かれていて、室内に甘い香りを撒き散らしている。夜の店の開店祝いに来たようだ。おそらくこれで結婚をイメージさせているのだろう。

そんなことを考えていると近藤さんが、もう一人の女性を伴ってデスクに戻ってきた。近藤さんに引けを取らないくらいきれいな人だ。髪の毛を後ろでしばっておでこを出している。色白で女優のようなたたずまいだ。

「こんにちは西澤さん。私、メンタルカウンセラー担当の三上と申します」

「はあ」

祐樹は思ってもいない展開にあっけにとられていた。

「あのー実はまことに申し上げにくいのですが、パートナーをご紹介する前に、別の部署でご相談に乗らせていただけませんか、幸いにも当社のグループ会社にはそういう部署もご準備がございます」

「はあ、まあ、いい人を紹介してくれるならそれでもいいですが」

「では早速、あちらの部屋にいいでしょうか、私が直接担当させていただきます」

そう言われ、いったんその会社の出口を出て、並びにある別会社のエントランスに入った。出口で近藤さんが笑顔で見送ってくれた。

別会社のエントランスに入り、案内されてブースに入る。移動しながら近藤さんには悪いがこの人でもいいかな、とまた妙な妄想が頭をもたげた。

広いエントランスにブースがたくさんあったが、さきほどの相談所より相談している人が少なかった。ブースで三上さんと向かい合う。

「奥様は逃げるように出て行ったとか」

「そうなんです、こっちは悪くないんですが、なんか勘違いしたみたいで」

「SMをしていたと」

「はい、ああ、私はしませんよ、趣味じゃないし、熟女パーティもいったことないし、でも年上でもいいとさっきのアンケートには書きましたが」

三上さんがまじめな顔で聞いているから、祐樹は少し恥ずかしくなった。

日記 第5話に続く

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