新連載:PS. ありがとう 第1話 (読了2分)
”艶やかな肌を保つなら、これ一つでオッケー。見てくださいこの方、年齢いくつだと思います?”
どうせ50代だろう、太ももをマッサージしながら瑤子はテレビに向かって悪態をついた。こんなのは30代とみせかけて、たいてい20歳くらいは上だ。そんなことを考えながらテーブルの隅に置いていた小瓶を手に取り蓋を開ける。
「これいい匂い」
鼻をぴくつかせながら一人つぶやく。買ってきたばかりのアロマエッセンシャルをオイルに溶かす。エッセンシャルオイルは自分へのご褒美だ。バラ色とまではいわないが、新しいエッセンシャルを購入してマッサージをする時間は瑤子にとって至極の時間となった。祐輔がやってくれるともっといいんだけど。ふくらはぎからひざに手を流しながらそんなことを考えているとテレビから歓声があがった。
「これで69歳なんです」
瑤子の手が一瞬止まった。メイクを落とすと、シミの付いた顔が現れた。
「まじ?」
とうとう30歳もサバ読める時代になった。30歳サバ読むなら私は5歳だ、まあなんて若いの。そんなことを考えて居るとリビングのドアが開いた。
「ねえおしっこ」
スマホを確認すると12時を過ぎていた。
「はいはい、一緒に行こうね」
5歳の美羽は毎晩この時間に目を覚ます。子供は2人いた。美羽は次女、長女の晴香は小学5年生だ。
ぼさぼさの髪の毛をかきあげながら美羽がトイレから出てくる。明らかに寝ぼけている。
「ママ、寝るよ」
「はいはい一緒に寝ようね」
そう言って床に入り横になると、ものの3分で寝てしまうから楽だ。
そろそろ祐輔が帰ってくるころだ。このご時世に終電で帰ってくるような仕事があるのだろうかと、つい疑ってしまうが、本当らしい。
PS. ありがとう 2話につづく
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