StoM 第3話 読了3分 (全5話)
前回までのあらすじ
付き合っている感じ?の桜田まりなからSMを強要されている雄太郎。SMを勉強しろと言われSMのDVDを見ているところを母親から見られてしまう。
雄太郎がまりなに言いなりにならなければいけない理由が明らかになった。友人に貸したお金を返してもらったつもりが、会社の経費を盗んでいたことに?なっていた。まりなはそれをネタに雄太郎を誘ってくる。
StoM 第3話
「ただね」
「ただ?」
「お願いがあるの」
「お願い?」
力の抜けた俺はただ彼女の言葉を復唱した。
「今度デートしてくれない」
「今度デートします」
まるで魔法にでもかけられたように俺は桜田まりなとデートの約束をしていた。
社内でもたぶん5本の指には入るだろうと言われる美貌の持ち主の桜田まりなとデートができるのだから、交換条件にしては悪くはなかった。ただ俺は年上より年下の方が好きだし、そこは今後も譲るつもりはないから、ほんの少しだけ遊べばそれでいいと思っていた。
そんな下心を持つから人は失敗するのだろう。
まりなは最初のデートから俺をホテルに引っ張りこみSMプレイを強要したのだった。
俺はロープで縛られ、ムチで思い切り打たれ「もっと激しくしてください女王様」といったたぐいのセリフの練習もされられた、俺は生きているのさえ許され難き奴隷として、調教されようとしている。
もしかしたら性に合っている人なら、最初から気に入った役回りなのかもしれないが、俺はどうしても叩かれるのには慣れない。痛みは体だけでなく心までダメにしている気がするからだ。負け組の頂点に居座るのは嫌だ。
たぶん今日も叩かれるのだろう、それでもきっと俺は慣れないはずだ。勉強しろ、と言われてDVDに挑戦したが、最初からつまずいてしまっている。というよりなぜ俺がSMに慣れる必要がある?俺のやりたいことをやればいい。2回目の調教の際に、そんなことを口走ってしまった。
「なに?あんた口答えするの、ん?誰に口答えするのかなあ、ゆうたろう」
とすごまれるとなかなかそれ以上は言えない俺がそこにいたのだった。これは逆に性に合っているというのではないか、そんなくだらない疑問が浮かぶ。
「そもそもまりなは既婚者なのに、こんなことをしていていいのかな」
会社では独身のような雰囲気を醸し出していたから、まさか結婚しているとはおもわなかったので、最初に既婚者だと聞かされたときに勇気を出して質問してみた。
「あのね、私、結婚して10年になるけどもう8年も旦那と体の関係ないんだよ。だからといって飢えているというわけでもない。だから雄太郎とも体の関係はないでしょ。いいのよ、精神が満たされればさ」
SMで精神が満たされているのか、そういわれるとSMも捨てたもんじゃないなと思ってしまう。
「でもね、うちの旦那さん弁護士なのよ、だからこうやって会うときは、ほかのアリバイをちゃんと準備しているの、誰かに目撃されてね、似ているとか言われてもアリバイがあるから、大丈夫よ」
そういうまりなは、いつもマスクにサングラスをかけていて、たとえ見つかってもごまかし切れる風貌だが、まりなは用心に用心を重ねアリバイ工作もしているようだった。
まりなはこのことが旦那にばれると、旦那のいいように離婚や財産の移動などをさせられるに決まっている、だからばれるわけにはいかない、というようなことを言っていた。それなら、こういうことをしなければいいのにと思うが、とても言えない。
待ち合わせの公園に行くとまだまりなは来てなかった。
公園には大きな池があり、池の周りにはところどころにベンチが設置してある。
俺は、ベンチに座って時間をつぶすことにした。ベンチに座って無心で池を眺めていると、母親に見られたDVDのことが頭に浮かんだ。
あの時、俺は母親と話をした方が良かったのかもしれないな。今更ながらに少し後悔しはじめていた。帰ったら伝えよう、あれは俺が希望してみているわけではないということを、そう考えると気持ちが少し楽になった。
そんなことを考えながら立ち上がった瞬間に横から走ってきた3,4歳くらいの男の子と接触してしまった。男の子は俺の体にぶつかると、大きく飛ばされ転んでしまった。
「大丈夫?」
思わず駆け寄ると、後ろからものすごい形相をした母親が走ってきた。母親は俺の横まで来て立ち止まったので、お詫びでも言われるのかと思っていると
「なんてことしてくれるのよ」
その母親は子供に注意するのではなく、俺に文句を言い始めたのだった。
「どうしてくれるの?うちの子がけがをしたら。将来はピアニストになるのよ、どうするの?手を骨折でもしたら、補償してくれるの?」
母親の大きな声に、公園にいた人たちが足を止めた。
「あなた、責任取れるの?まだ若いわね、責任取れないでしょ」
周辺にいた人たちが動きを止め俺たちの話を聞いている。というより、聞こえるのは母親の声だけだが。
「どうしたんですか?」
そこへ落ち着いた感じのおばさんがやってきて、仲裁に入ってくれた。
「落ち着いてくださいよお母さん、この人もわざとやったわけじゃないみたいだからね、ほうら子供さんも怪我一つないみたいよ、だからねここは大きな気持ちで許してあげてくれる?」
「お母さん、ぼく大丈夫だよ、ほら」
おばさんがそう言うと、転んでいた男の子が立ち上がり、お母さんの前でジャンプして見せた。
そういわれた母親はちょっと気まずそうな顔をしながら子供の手を引きながら去っていった。
「とんだ災難だったわねえ、怒らないでね、あの人は子供のことになるとちょっとおかしくなっちゃうの」
2人は知り合いだったのだろう。
「いいえ僕は大丈夫です、それより助けてくれてありがとうございました」
俺が丁寧にお礼を言うと、周りを囲むようにして見ていたじゃじゃ馬たちも、それぞれの方向へ歩いていった。
今日は運がいいのか、それとも悪いのか、ベンチに座りなおしてそんなことを考えていると視線の先の広い芝生の上で女子高生がダンスの練習をしているのが目に入った。
ダンスか、目の悪い俺は目をこらさないと良く見えない。少し腰を浮かせて目を細めると、女子高生は制服のまま踊っていて、ひらめくスカートの下から白い下着が見え隠れしていた。
おっと、やばいな、まるで覗き見をしているおやじみたいになっているぞ、と思ったときはすでに遅く、近くにいた女子中学生3人が、俺を指さして噂をしているようだった。女子中学生たちは俺の方を見ながら楽しそうに会話していた。
やばいな、これじゃ、パンチラをのぞき見しているみたいじゃないか。
俺はもう一度ベンチに座りなおすとバッグから読みかけの小説を取り出した。これもSM系の小説だ。本当は読みたくないが、のぞき見をしているように思われたくはない。
頑張って活字を追っていると、そこへまりながやってきた。
StoM 第4話へ続く
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?