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ユダ

先週は長かったですが、今週はホントの短編です。

「いや、ちゃいまんねん。誤解でんねん。ウチ、そんな大それたことしてませんねん。ホンマです。信じておくんなはれ。祭司長はんとちょこっと商(あきない)の話しただけですねん」

「人間は汚れるものだと証明し、人間は裏切る生き物だということを初めて地上に知らしめた戦犯だ。お前はイエス様を売ったのだ」

「イエス様を売った?ちゃいますやん。販売した、言うてもらわんと。浪花の商人(あきんど)は売れる物は何でも売りますねん。裏切るなんて、そんな大層なことちゃいますよ」

「お前は首を吊って自死したではないか!それが罪を感じていた何よりの証拠だ」

「ちゃいますって。浪花の商人が自殺しまっかいな。あのロープを買いたい言う人がおってん。何に使いますのん?聞いたら首くくりたい言うさかい『大丈夫でっせー』て、つこて(使て)見せたら、やってもうたんですわ。もう、わややわ〜。それよりなによりイエス様は『お前は私の胸に値札を貼るだろう』言うてたんでっせ。何もかも分かっててウチに付きおうてくれはってたんですわ」

「判決を言い渡す。イエス様がお生まれになるまでの二千二十一年間、逆流する時空の廊下の雑巾掛けを命ずる。十時と三時のお茶は許可する」

「ヒェ〜、そんな殺生な〜。それやったら三日後くらいで裁判してくれたらええのに、二千年も過ぎてから。今更なんでやねん」

「いつまで良い加減な関西弁を使うつもりだ。ノアの洪水まで年数を伸ばしたいのか?」

「バケツと雑巾はどこでしょうか?日曜日は休んでも良いのですよね?お茶の時間に黒糖も横にあると励みになります」
  


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