がんに屈しない決意

父のがんはほとんど濃厚だ。
もしかしたらお正月は越せないかもしれない。
その心づもりで覚悟をしている。
だって、最悪を考えておけば、私たちはせめて落ち着いていられるかもしれないから。

兄は専門外だが医者だ。
その兄も、主治医も、検診で見てくれたお医者さんも、知り合いの医者も、医者という医者が「厳しい」と判断を下している。
そのなかでどう希望を保てというのだろうか。
せめて父が希望を失っていないのだけが救いかもしれない。
たった1年経たずに体を蝕んだ病魔に、父はあくまで打ち勝つつもりでいる。
もちろん私たち家族も同じだ。
まさかここに来て、家族の結束力が試されることになろうとは。
資金援助も出来る限りする。(コロナの補助金10万は全て渡した)
仕事の都合もつけた。
身辺整理もさせて、あとは診断をつけてもらって治療に入るだけだ。
さぁこい、負けてなんかやらない。
家に暗い陰を落とそうったって、そうは問屋が卸さない。
我が家は意外としぶといんだぞ。
私は、一家に一人いれば安泰とその筋の人にお墨付きをもらったんだから。
母は、執念の人なんだから。
兄は、諦めない人なんだから。


あとは、私は彼との結婚をなんとかしないといけない。

昨晩、彼には正直に話した。

がん家系であること
私もがんになる可能性が人より高いかもしれないこと
子どもができた時、もしかしたら子どももそうなるかもしれないこと
だから彼を幸せにしてあげられるか不安なこと

怖い、不安だ、そう言って彼と一緒に泣いた。

それでも好きだから別れられない、そんな理由で別れるなんてできない、そう優しい言葉をかけてもらった。

私がもし親なら、がん家系の可能性が高い子との結婚に諸手を挙げて賛成できるだろうか。
どうせなら健康な子と結婚してほしいと願うのがせめてもの親心ではないだろうか。
差別するわけではない。
がん家系だから今すぐ別れなさい、と言うわけでもない。
ただ、事前に分かっているのであれば、その辛さや寂しさがあることを覚悟して結婚してほしい。

だからこそ、今だったらまだ別れられる。離れられる。別れを言われても受け入れられる。

でも彼は、優しいから絶対にしないと分かっていた。
ずるい私。

母からは早く安心させてほしい、と言われたけれど、さすがにそこまでは言えない。
こんな私を好きと言ってくれるだけで奇跡のようなのに。
でも、本心を言えば、たしかに早く結婚をして心の安定を図りたい。
いつかするのではあれば、早めにして親を安心させてあげたい。(この際結婚は通過点であって目標ではないということは置いておく)

早くしたい気持ちと、別れたほうが大好きな彼を将来悲しませないで済むかもしれないと思う気持ちと、相反する思いがあって忙しい。
どうか願わくば、彼とこの先も一緒にいたい。
けれど、それは私のわがままなのかもしれないから。
彼の本心は違うかもしれないから。


父ががんで厳しい状況だと知り合いに泣いて話せたらどんなに楽だろうか。
可哀想に、可哀想にと悲劇のヒロインになれたら。
口が滑りそうになることもある。
でも、家族で戦うと決めたから。
家族4人で、がんになんて屈してやらないと決めたから。
父の前では泣かない。
母の前では一緒に泣く。
辛い、寂しいと、一緒に泣いて、一緒に頑張ろうって支えるんだ。
それが末娘としての私の役割だから。




Love mitsuha__

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