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骨折治癒 2ヶ月と10日

1ヶ月もしたら、スタスタ歩けるんじゃないかと思った骨折ライフの始まり。

歩けない、ってこんなに不便なのかと驚き、松葉杖での移動は、結局片足ケンケンで無理!体力ないです!となって
コーヒーひとつ自分のために淹れることが出来ず、人に自分の欲望を満たしてもらうのって、なんかなんかなんかなんか〜、とじれったい
我慢しちゃう入院患者さんの気持ちがわかる。
「あれやりたい」と思って動ける身体があるということ
頭で思ったことを叶えるのは身体さんのおかげなのね、と、あたりまえなんてないんだなぁと感じた骨折初期

キャスター付きスツールで家の中を高速移動出来るまで進化した頃
意外と料理は作れることがわかったり、
箒で、一寸法師みたいに掃除したり、
お風呂を片足で入ることにも慣れた

欲望を満たすということでは、
ベランダの葉っぱたちに水をあげられなかっあのは、すごくストレスだった。

人にお願いしてたけれど、
ちゃんと様子を見て、それぞれに適した水をあげてくれてるだろうかとか思う
すると、水をあげながら話しかけながら癒されていたのは自分の方だと気づく

何かのお世話をするのは、自分のためなんだなぁ

ゆっくりと物語を読んだり
漫画を読んだり、ドラマを見たり
家から一歩も出ない引きこもり時間は
豊かだった

ぷわー、と、魚がゆっくり泳ぐように
何の力もいれず
水の流れに身を任せるように

何にもしばられず
何の予定もなく
ただ、自分のための時間

本の内容をノートに写したり
読んだ言葉から発想する脳の記憶に
まどろんだり

日差しのやわらかさは、
小さく切り取られた窓を見上げた中で
いただくプレゼントみたいだった

たまにタクシーで病院に向かう時
空の広さに驚く

出窓からの小さな空が一気に広がり
世界が大きく動き出す

見えてるのに見えてなかったもの
こんなにも世界は美しい

ギプスが外れて
お風呂につかったら、
全身の血が流れるのがわかる

片足はずっと冷たくて
驚くほど、冷えていた

歩かないということ
筋肉が無くなるとは
寒い、ということ
血が回らない

そうかー、と思う
入院していた恩師は、うんとうんと
寒かったんだろうな

血が回り出して
両足をつけて地面を感じる
立つ、ということ
立てるということ
両手が自由になるということ

こうやって、人は進化していったんだなぁ

歩くということ
歩けるということ
自分の身体を自分で運べるということ

それだけでもありがたいと思うと同時に
人は欲深いから
すっかりそんなありがたさも
忘れてしまうのだろうと思う

だけど、
気づかせてくれたこの時間は
何よりありがたい

自分の中で、
意識しなくても心臓は動き
身体は、生かそうとすること
治そうとすること

治るとは希望なんだ

「2ヶ月と10日 もう骨は95%までくっつきましたよ。治癒です」

カルテに、治癒と書かれる

あー、すごいなぁ

宇宙も生成していく
いのちが生まれ、流転していく
花が咲いて、枯れて、他の栄養になって
新しいいのちのもとになる

わたしは、誰かのいのちの先に生きている

自分の中の宇宙のことが、はじめてわかった

あたまではなく、細胞レベルでわかるとは
そういうことなんだ

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