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2020年4月の記事一覧

蜂の巣

真夜中、次第にどの家も灯りを落とすであろう時間に男は書斎にいた。髪は濡れて、息は酒臭く寝間着姿で文机と向き合っていた。男は小説家の類ではなく、寧ろ筆無精ではあったが、男の母親の教育方針のおかげか幼い頃から習字を習わされ字は綺麗な方だった。
酔っ払ったまま部屋に帰り、その勢いでシャワーを浴び、テレビを見ながらソファーで寝る。そんな男に先日恋人ができた。顔立ちが整っていると言えなくもないような男に対し

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赤と白に散らつく雨粒

私にとってそれが初めての失恋だった。中学時代にも勿論恋愛感情というものはなんとなく持ち合わせていたはずだが、それが上級生の憧れの先輩へ向けている感情と何が違うのかをきちんと説明しきれなかった。

高校に入学して、オリエンテーションで千葉にある牧場に行くことになっていた。その時は出席番号順で適当にグルーピングされた男女数名を班という括りで指定された場所を周回させられた。そのオリエンテーションで同じ班

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