見出し画像

翌日には忘れる微生物|ショートショート

小さな発見だった。
長い間研究を重ね、彼はついに不思議な糸状菌を発見した。

菌の例に漏れず湿度が高く、暖かな場所でほこほこと増える姿をみつめていると顔が綻んでしまう。

この菌の大きな特徴はその成長速度にある。
顕微鏡で観察している間も、どんどん増えてゆく。
最初のきっかけは彼の不注意で髪の毛を1本、菌の上に落としてしまったことだった。
菌は髪の毛が好物だったようで、そこから爆発的に増えていった。

素晴らしい研究の成果をさらに追及するため、毎日髪の毛を与えて菌の成長速度をみてみることに決めた。

「まだ菌は赤ちゃんの小指の爪くらいの大きさだ。今日はここまでにしよう。」

世紀の発見だが、まだ未確認の部分が多い菌なのだ。慎重に進めなければならない。

次の日、彼はシャーレをのぞき込むと大きな声をあげた。

「なんだこれは⁉ 見たこともない菌だ!」
そこには、子どもの親指の爪くらいに膨らんだ糸状菌が、ふわふわとうごめいていた。彼は世紀の発見に心躍らせながら、一日中研究を続けた。

「未知の部分が多いが、成長速度はすごい。これは明日が楽しみだ」

三日目の朝、彼はシャーレをのぞき込むとまた大きな声をあげた。

「すごい! なんてことだろう!」
シャーレの中央には、大人の親指くらいの大きさに膨らんだ糸状菌が、ふわふわと踊りながらこちらを見上げていた。

「こんなに成長速度の速い菌は初めてみた。これは世紀の大発見だ!今日から観察を始めるとしよう。毎日髪の毛を与えて、菌の成長を観察する実験をはじめよう」


【あとがき】

ショートショートのお題は田丸雅智先生のツールを使わせていただきました。


めずらしい菌を発見しても、次の日には忘れちゃってる!というお話です。
読んでいる人には、最後までわからないように、でも彼は毎日忘れている……というのを書くのがちょっと難しく、面白かったけど、後で見たらへんな所がいっぱいありそうでまだまだ直せるだろうから、ちょいちょい見直ししよう。

菌のことを知らないので、このお話位の増える速度が速いのか遅いのかはよくわかりません……。
こうゆう細かい設定をしっかり調べて数字とか出したりしてリアルだと、物語に深みがでるよなと思う。

最後までお読みいただきありがとうございました! 頂いたサポートは全力で全力で書くことにを続ける力にします。