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不思議の森のお化けのお話。happy birthday to ぽんころちゃん。|ショートショート

あの時は「ああやっと終わった。」

それが1番の感想だった。
少しづつ、少しづつ中から育つ意味はわからなかったけど、どう感じるかはその人次第ってことが、ここまで顕著なものってないと思う。

ほらみんなやってるじゃない?ねえ、目の前にいるあなたのお母さんもよ。

まさに命懸けの危険な所業だって、みんな知ってた?わたしだって知ってたよ。でも知っているってのは、安全なお部屋のソファーの上で丸くなってテレビを見ている状態なわけ。

でも、やってみるってのは、ほんとに違うもので、例えばわたしのアレルギーが一切なくなって、どんなものでも素手でさわれるビニールの手をゲットしたり、どこでもりんごを出し入れする体になったりすることなんだ。

あとは、足も大きくなったよね。うん、生魚とはケンカ分かれしたし。

中からのアルコール消毒は、まるっと三年しないことにしたのは画期的だったな。

私の住んでいた鷹の飛ぶ森は、不思議なお化けがよく出るのだけど、私もだんだんとあのお化けに似てきて、最初は変な感じで慣れなかったけど、まぁ最後まで慣れなかったよ。

足、手、お腹に錠前をかけられて動けなくなる時期もあるから、そんな時は、逆にしっかりと森へ向かう。

ただ光とか、風とかをもらうことでまた少し眠くなって、わたしの今1番やるべきことに全部集中するようになるんだ。

りんごの出し入れも完璧だったけど、いちごもよかった。特にすっぱいやつ。普段は果物の酸を恐れて触れることもないけれど、ビニールの手を持っていたから触れることも、取り込みもできる。

森のそこらかしこに、職人がいていつでも新鮮ないちごが手に入ったのはラッキーだった。

「とんとん。もうそろそろいいですか?」
「いえいえまだまだ。もうすこし。」

4月27日に扉を叩いても君はつれない態度だ。

それならばと、黄金の道をすすみはじめたら、君はここが良いと大きな声で叫んだ。

2016年5月4日。私の特別な10ヶ月が終わり、君が君を始めた日。

お誕生日おめでとう。


【あとがき】


今日は娘の誕生日なので、妊娠中の思い出を不思議な森の中のお話風に書いてみました。

当時東京都三鷹市に住んでいて、ほんとにあの街が大好きだったなあ!いいところ。

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