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「袖」を「お袖」って言っちゃうはなし|エッセイ

むかーし、むかし、服飾系専門学校の生徒だった私は、今でも袖のことを「お袖」と言ってしまう。

普段は絶対使わないのだが、製図を引く時にだけ、ポロリとでてしまう。

先日袖のパターンを探しながら、「おそで、おそで…」と口にだしていて気づいてしまった。

専門学校の3年目を担当していた先生は綺麗な白髪をふんわりとボリュームのあるヘアーにまとめて、薄い紫の色眼鏡をかけ、いつも全身黒づくめで、ジャケットとフレアースカート、それにしっかりとした革の靴を履いていたお姉さまだった。

あの時の私には70歳くらいのおばあちゃんに見えていたけれど、今考えてみると50代後半くらいだったと思う。

3年目のクラスは専攻科と呼ばれていて、その先生はずっと専攻科の生徒を教え続けている人だった。

スタンダードで伝統的なスタイルを大切にしていた上品な先生で、たぶん彼女が袖のことを「お袖」とよんでいたのだろう。

知らぬ間に染み込んでいた「お袖」。

少しづつ先人達の教えを吸い込み養分にして、私は大きくなってきた。

自分のだけのモノなんてそんなにない。もらったモノを混ぜてなんだか新しいような気になっているだけだ。

それに気づいたことで、また違った道が開けるかもしれない。

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