今こそ伝えたい、高齢者の穏やかな人生の締めくくり方「平穏死」
現在の様子
私は、日本の「看取り」の文化を変えたい。
そんな思いがあります。
超高齢多死社会の現代において、毎日4300人もの人が亡くなっているのに、日本人には「死」の教育が無さすぎます。
昭和51年を境に、病院死が在宅死を上回り、病院で亡くなる人が80%近くなり、同時に核家族化も進み、日本人の生活から「老い」と「死」が遠のいてしまいました。
「死」は100% どんな人にもやってくるのに、学ばずに医療に依存してしまうことで、平穏で穏やかな人生の締めくくり方が出来にくい世の中になってしまっています。
高齢者が「死ぬ」ということ
それは、とても当たり前で自然な事。
ずっとずっと昔から繰り返されてきた自然の摂理。にもかかわらず、生活の場から「死」が遠のくにつれて、「死」は「縁起でもない」とか「不吉」と忌み嫌われ、人々は避けるようになりました。
回復の見込みが無く、すぐにでも命の灯が消え去ろうとしているときでも、現在の医療は人を生かし続けることが可能です。
しかし、積極的な延命治療を望まない人も実は多い現状です。
特別養護老人ホームに就職した理由
高齢者の自然な看取りを支えるために、10年前、私は特別養護老人ホームに
就職しました。
それまでは、訪問看護でご自宅でのお看取りをしていたのですが、多くは癌の末期の方でした。ゴールがある程度見えていれば、頑張ることができる在宅介護も、高齢者の老衰の介護を延々と在宅で支えるのは難しく、受け持ち患者さんは施設入所される方が多かったのです。
その方たちが、施設で人生を全うすることができたのかと思えば、実は最期、肺炎などで病院で亡くなる人がほとんどでした。
老衰が進行して亡くなることは自然な事のはずなのに、自然に亡くなることができる環境が少ない、と感じ、それならばそういった施設を作ればいいのではないかと言うことで、現在の施設の立ち上げから関わり、最初から「高齢者の自然なお看取り」を行うと宣言し、仲間を増やし現在に至ります。
特別養護老人ホームでの看取り
施設では、高齢者の自然な生命の営みに任せて、その進行を邪魔することなく、日々を快適に、日々を穏やかに、日々を幸せに過ごしていただけるように、スタッフ一同で協力しています。
施設で目指すは「平穏死」です。
もちろん、思いもよらない急変、痛み、苦しみ等、施設で対応できないことは医療に頼り、症状を改善するための治療をしていただいています。
症状さえ落ち着けば、速やかに施設に戻っていただき、出来るだけ快適な生活に戻すことをしています。
大切なのは「整えて維持すること」そうすると、本来ご本人が持っている力で生き切ることができます。
老衰の平穏死はとっても穏やかです、自然です。
食べなくなって、飲まなくなって、よく眠るようになって…
眠っているように亡くなっていかれます。
息を引き取る瞬間、その空間には「感謝」の空気が流れ、温かい気持ちに包まれます。
明るい死生観
高齢者が亡くなり、次に向かうステージは、きっと明るくて良い所。
先に亡くなった夫(妻)やご両親や、友人などに会える場所、この世を生き切って、きっと素敵な場所に行かれるのだろう・・・そんな風に考えています。明るい死生観を持っています。
絵本に思いを込めて
こんなに自然で、素敵なお看取りの現場がある事を、たくさんの人に伝えたい。そんな思いで2021年、絵本を出版しました。
「ありがとう…わたしはあの世へ、光の国へ」
人は生まれてから、人の手と愛情をかけてもらって成長したように、亡くなりゆく過程でも、人の手と愛情が必要です。その仕事をしている介護職員さんにも、自信と誇りを持ってもらいたいという、応援の気持ちも込めました。
オランダやカナダでは、10歳になれば「死」の教育があるそうです。日本人である私たちは、もう少し「死」を学び、今の「生」を深く考える機会を持ってほしいと願っています。「死」を考えることは「生」を考えることなのです。
かなえたい夢
今まで閉ざされてきた「死」
どうある事が望ましいのか、そして、たくさん経験させていただいたケースをお伝えしながら、「死」を自分事として考えられる人が増えてほしいと思います。つまりこれ、ACP(人生会議)です。
少しでも多くの場所に出向き、出来るだけ平穏死の実態をお伝えして歩きたい。多死社会の日本において、ある程度の年齢になれば「平穏死」が最も安楽で自然な姿だということを広めていきたい。
施設は「平穏死」のお手本になりたい。
絵本を携えて、全国行脚が私のかなえたい夢です。
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