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JO1 2ND ALBUM『KIZUNA』感想記事〜後編〜

 記事を書くのは久しぶりになりました、ミトラです。最近暑い日が続いていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 今回は、JO1の2NDアルバム『KIZUNA』の感想記事の後編になります。大分時間が空いてしまい申し訳ありません。その分加筆修正を繰り返して良い文章になるよう力は注いだつもりです。
 前編ではWith ungs、ZERO、Walk It Like I Take It、Touch!を書いているので、まだ読んでない!という方は前編記事もご覧ください。


 後編ではLove&Hate、Algorithm、流星雨、Move The Soulの4曲を取り上げます。よろしくお願いします。



スモーキーな音楽が映し出す孤独『Love&Hate』

 この記事を書く上でLove&Hateという曲を何度も聴き直しましたが、「孤独」を主軸として音楽を作っていると仮定すると私の中でスッと落ちる部分が多くなりました。

 最初に孤独を感じた部分はイントロの口笛です。ではここで一つ質問。もし読者の方々の中で口笛を吹く人がいれば、どんな時に吹来ますか?

 これは私が持っている口笛のイメージですが、口笛は周りに誰もいない環境の時に、胸に秘めている感情を気軽にアウトプットする方法として吹くものだと思っています。そもそも口笛自体音量が大きいものではなく、周りがうるさい喧騒だとかき消されてしまうからです。自分が口笛で吹いたメロディーを自分自身が聞き届けるために周りの音量が抑えられている、つまり口笛がある事で誰もいない静かな環境が連想されるのでは、というのが私の考えです。
 このLove&Hateという曲も全体的に伴奏がうるさくなく、口笛が際立ちやすい背景の色味が薄い音楽であるのが分かります。

 Love&Hate以外の口笛を利用した楽曲も伴奏が抑えられていたりそもそも伴奏が無い曲もあるので、この機会に是非聴いてみてください。

 口笛と伴奏の少なさから孤独を連想しましたが、楽曲全体を通しても音数や音量は抑えられていてどこか閉鎖的な環境を想起させる作りになっているように思います。
 それに加えて、伴奏の音符が長めである事やパッキリと輪郭がある楽器が少ないのも特徴の一つであり、宙に漂う煙のようなぼやけて不透明な世界観も見えてきます。
 歌詞の中に「息遣い荒く」というフレーズがありますが、楽曲に広がるスモーキーさがその息遣い荒く=正常な呼吸がしにくい苦しさや詰まり具合を連想させているのではないでしょうか

 では続いてLove&Hateという題名と、孤独という言葉の紐付けについて書いていきます。
 少し話はズレますが、私が以前見ていたとあるゲーム実況動画の中で精神科医の方がこんな事を言っていました。

ほとんどの人間の怒り・暴力は寂しさが根本。自分の孤独・見捨てられた感覚から激烈な怒りが起こる。

【ゲームさんぽ/Detroit: Become Human】精神科医・名越康文さんが登場キャラを分析! 驚くほど繊細なアンドロイドの心理が明らかにされていく...!より引用

 とても面白い実況だったので、JO1は一切関係ないが是非皆さんもご視聴ください。

 この言葉から読者の方は私が楽曲の中に孤独を見出した理由が想像できるのではないでしょうか。

 静かで閉鎖的な楽曲で何度も繰り返されている憎しみ(Hate)のワードは、愛(Love)を失った事で味わう孤独の奥底で燻るものだと私は解釈しています。
 楽曲の題名はLove&Hateで愛と憎しみを並べて対比させており、楽曲内の歌詞も対比の表現が使われていたりしますが、この対比の間にある孤独を口笛や音数の少なさで表現しているように思います。その孤独が強いからこそ、Hateという言葉が使われていながら爆発的な音量の増加や歌い方が控えられているのではないでしょうか。

 そしてこの楽曲は「もう止められない」という一節で幕を閉じます。まるで尾を引くような名残惜しさを含んだ歌声が特徴的です。楽曲の中で世界観の解決を作らずに終わらせているのは、聴き手にある程度の楽曲解釈の自由を与える作りになっています。
 皆さんも是非この楽曲の中に広がる、愛と憎しみの形を想像・解釈してみてください。



実力に裏打ちされる、研ぎ澄まされた攻撃性『Algorithm』



 続いてはKIZUNAの楽曲の中でも最もハードで攻撃力が高いと言っても過言ではない「Algorithm」。作曲、作詞、編曲はMove The Soulを制作したPURPLE NIGHTが行っています(作詞にはPlorogueやDesignを制作したYoheiさんも参加)。

 Algorithmについて書く前にPURPLE NIGHTというチームが作ったJO1の楽曲2つ(Move The SoulとAlgorithm)の特徴を押さえておきましょう。
 この2曲に共通しているのは、メンバーが歌うメロディーラインとラップラインの音程の高低差の幅が広い事、高低差に加えて声質の種類も多様に求められている事、パートとパートの繋ぎ目に隙間が無い事、主にこの3つです。後述のMove The Soulでも言及しますが、幅広い高低差と声質を無限に組み合わせながらメンバーが休む間もなく次々と歌い継いでいく、聴き手を休ませる事が無い情報量の多さと展開の速さが特徴であり魅力です。

 その情報量や展開の速さに鉄の質感を連想させる楽器や地面に響く低音が合わさる事で、一つのハードなダンスナンバーとしてスッキリと纏められてます。

 この情報量の多さと切り替えはイントロ後のAメロ歌い出しからBメロに入るまでで、早速体感する事ができます。お鶴→るるたん→純喜→たっくん…と歌い継いでいきますが、お鶴の少ししゃがれた声からるるたんのサラッと流す軽めの声、そこから一気に音程が上がり純喜が張り上げたと思えばたっくんの少し加工を加えた高音が連なる…と、この部分だけでも大盤振る舞い。特に純喜の音程を急にぶち上げる部分は初見の時もインパクトが強いです。

 また、この楽曲はメンバーが歌っている時間が長いからこそ数少ない間の使い方が良い事も書いておきたいです。その間は主にサビの頭の部分です。

 「Algorithm 身を委ねて」の後、そのまま流れ込んでも良いところだがここで重みのある低音のインストを一発響かせる事で「ここからが区切って一つのサビである」というキメどころを作っています。この間がある事で、楽曲の中でサビがしっかりと印象に残るように浮き立たせられているのではないでしょうか。
 この重くガツンと響き渡る低音はイントロやサビに多く登場するが、まさにこの楽曲のパワフルさを作っている一音と言えるでしょう。印象付けたいところで絶対に現れてくる、まさに楽曲の主導権を握っている一音がこれです。

 最後にもう一つ、この楽曲の面白いところを書きます。

 記事を書くためにAlgorithmという言葉の意味もそれなりに調べてみましたが、「演算手順」「問題を解いたり目標を達成するための方法や手段」という意味があるようです。コンピューターのプログラムを作る時に用いられます。つまり、言葉自体は理性的で無機質イメージが持たれるのです。
 しかし、そのタイトルとは裏腹に楽曲の中には「太陽よりも熱く燃えていけ」といったようなボルテージを上げる感情的な言葉が歌詞にあったり、力強さが前面に出てくる音や歌い方が散りばめられています。

 理性的なテーマでありながら、感情のままにボルテージが上がってどんどん空気が熱されていく。理性と感情、無機質と人間らしさといった相反する要素も楽曲の魅力の一つなのかもしれません。

 AlgorithmはこれまでのJO1の楽曲の中でも比較的ラップメンバーの分量が多く、個人的にはファンの中にあったハードでかっこいいナンバーが欲しい!という需要に少し寄せに行っているのでは?と感じました。Speed of Lightと同様にライブで真価を発揮する曲だと思うので、早くKIZUNAツアーで聴いてみたいです。



聴き手を癒す音楽の形をした夜『流星雨』



 続いて紹介するのは流星雨。新曲の中でもZEROと並んで落ち着いた印象のあるセミバラード曲です。
 制作はYOSKEさんやALIVE KNOB、Yeulさん、イ・ミニョンさんなど、Shine A Lightや僕らの季節、Starlightを担当した製作者が名を連ねています。
 この方々が集まって作る楽曲は聴いていると脳裏に色んな輝きが映ります。夜空に浮かぶ星や光の反射、水晶の煌めきなど、私達が目を奪われる刹那の瞬きが見た目ではなく音で表現されています。

 この流星雨も例外ではなく、その題名に合う通り夜空に散りばめられた星々の輝きが流れる音から想像できます。しかし、前述の3曲よりも少しコンパクトに感じられるところもあります。楽曲の中に広がる世界の広さはどちらかというとWith Usに近く、ZEROほど広くはない。個人的にはBlooming Againと少し近いものを感じました。
 星のように輝きたい!と強く焦がれているのではなく、遠くの星を眺めながら休んでいるような、「休息」のイメージを楽曲の流れから抱く事ができます。
 配信されたアルバム順に聴いていくと、流星雨はちょうど過去の楽曲のまとまりに差し掛かろうとする少し前に置かれているので、聴き手がアルバム順に聴いた時に少しでも耳を休められるような順番にしているのかもしれません。

 この曲で言及したいのはサビの部分。例えば一番だと「永遠に君といたい」「闇深まる空」のフレーズだったり、サビ後半で追い込んでいく「我慢できない君を求めて 宇宙漂っているみたいだね」の所。
 ここはメロディーの音が急に高くなる部分があり、地声で力強く歌うのではなく裏声に切り替えて歌っています。この切り替えが何とも絶妙で、この裏声が地面から足が離れて重力に逆らって浮いたような、不思議な浮遊感を漂わせています。ここが聴いていて少しくすぐったく、それでいて楽しい。

 流星雨のボーカルディレクションでどのような指示がされているかは不明ですが、聴いていると低音のメロディーは近くで囁くように、そしてサビなどの高めのメロディーは力強く遠くに向かっているような印象を受けました。音程差もあると思いますが、低音部はすぐ近くにいる聴き手に語りかけているように、高音部は空に向かって高らかに、明確に歌いかける方向性が違うように感じます。

 Blooming Againに近いものがあると前述していますが、エネルギーのベクトルが流星雨とはキッチリ分けられています。Blooming Againは楽曲が進むにつれてどんどん上昇傾向になって盛大に終わりますが、流星雨にはそれほど明確な上昇傾向は感じられません。盛り上がりはありますが、曲を始めた時の透明感ある情緒は一貫して守り抜いています。その一貫して通された温度感が、流星雨にしか与えられない癒しに繋がっているのでしょう。



進化した11人11色に彩られたJO1の春『Move The Soul』



 感想記事の最後を飾るのはMove The Soul。JO1の楽曲の中で初めてアニメOPのタイアップを飾ったダンスナンバーです。
 楽曲制作にはAlgorithmと同じくPURPLE NIGHTが参加しています。このチームが初めてJO1に提供した楽曲です。

 Algorithmの章でも言及していますが、PURPLR NIGHTの楽曲にはメロディーラインとラップラインの音程の高低差の幅が広い事、高低差に加えて声質の種類も多様に求められている事、パートとパートの繋ぎ目に隙間が無い事といった特徴が見えます。Move The Soulも同じくこれらの特徴が垣間見えますが、特に声の高低差と声質の種類の多さは他のJO1の楽曲と比較しても飛び抜けているように思います。
 例えば1番Aメロ。お豆→蓮さん→景瑚→よなぴ…とたった15秒の間にメンバーが変わるがわる歌い継いでいきますが、各メンバーの特徴的な歌声がリズムに乗って歌い継がれていく疾走感は驚かざるをえません。
 まず最初のお豆は若々しくて甘い色が差した声が爽やかに歌い上げます。ここは一瞬調性がEminorからEmajorへと長調に転じているので、さらに開放感がプラスされています。その次は蓮さんの少しざらついたスモーキーな声が滑らかに歌い上げる。それを受け取った景瑚が少し発音を跳ねさせたりグルーブを作りながら、持ち前のサラッとして少し乾いた触り心地の良い声で歌い継ぐ。最後によなぴの幅があって湧き上がるような訴えかける歌声が収めてそのままエネルギーをラップに渡す。
 文章に起こすだけでも色とりどりで興奮しますが、このような色とりどりの声や歌い方が一瞬の間に耳に流れ込んでくるその疾走感と情報量がMove The Soulの最大の魅力であり、聴き手を唸らせて止まない所以ではないでしょうか。
 1番Aメロだけに止まらず、その後のラップも聞きどころです。つるきま2人の、音程が低くて少したがを外したような荒いラップが、まるでエンジンを吹かすように楽曲全体のボルテージを上げます。そこで少し手がつけられなくなった暴れっぷりが見えたと思えば、その後のしょせがメロディーの付いた3連符のラップでリズムと音程を整えて軌道修正し、その後のつるきまも少し落ち着いてラップを繋いでいく。

 このように、歌い方や声でメンバーのキャラクター性がしっかり見えつつ、高速の掛け合いがある事で本当に楽曲の中でメンバーが会話して物語を作っているような、そんなストーリー性も少し見えてくるんです。そこまで想像できてしまうのはやはり、この楽曲の最大の武器である「情報量」あってこそでしょう。
 この楽曲自体のレコーディングは短時間で終わったと作曲者のインスタライブで言及されていましたが、これほどの情報量を声で出せるようになったという事実はJO1メンバーの進化を感じますし、声を声ではなく楽器として扱えるようになっているのではないでしょうか。

 さて、歌声について言及しましたが、続いては題名に書いた「JO1の春」についてです。JO1が結成されてから彼らを見ていますが、私はJO1にとって春は特別なものだ、という風に考えています。何故なら、色濃い楽曲との出会いが多いからです。
 例えば2020年の春はデビューの春。無限大という楽曲を携えて夢を掴んでデビューしました。アイドルになった推しがこれから見れる!とワクワクしたのもとても懐かしいです(その後すぐコロナに見舞われてしまいましたが…)。そして2021年の春は意気込みの春。なかなかできなかった渡韓を行なって作ったBorn To Be Wildはファンに大きな衝撃を与え、強く愛される曲になりました。韓国でのオンコン、エムカ、KCONは本当に滾った思い出です。
 このように、JO1の春はインパクトの強い楽曲と出来事があるんです。そして2022年の春、3年目の彼らが出してきた春の曲は前述した通り彼らの真価を発揮させるこのMove The Soulという楽曲でした。

 実はこのMove The Soulという楽曲は、過去の春に出た無限大、Born To Be Wildと近いものがあるんです。

 まずは調性。楽曲内で転調も一部あるので一概には言えませんが、共通して3曲共Eminor、ホ短調の楽曲です。そのため楽曲全体を通して香る雰囲気、色合いのベースは同じところにあります。そしてMove The Soulは伴奏でベースがグリグリと動き回っているのが特徴的で、これはBorn To Be Wildと共通します。おそらくMove The Soul自体がBorn To Be Wildとほぼ同系統のジャンルに位置しているのではないでしょうか。そして無限大との共通点はダンスブレイクの存在です。そしてただダンスブレイクがある、というだけでなく、そのダンスブレイクを構成する音が楽曲の中で初めて登場するような、完全に別ジャンルがミックスされているような突然の展開となっているのも共通しています。
 このように、Move The Soulは聴けば聴くほど、自然と過去のJO1の楽曲の香りも漂ってくる構成になっているんです。これは狙われたものではなく偶然の産物かもしれませんが、JO1にとってもファンにとっても大切であろう2曲を自然と感じ取る事ができるのはとてもエモーショナルだなと思います。


 まさにこのMove The Soulは、新しい姿を見せていく3年目のJO1の春に相応しい、彼らとファンを後押しするファンファーレのような楽曲なのかもしれません。



総括


 これにて、KIZUNAのアルバムに収録された新曲8曲の感想記事は終わりになります。前編と後編の間が空いてしまったのは反省すべき点ですが、なかなか良いものになったのではないか…と自分を褒めたい部分もあります。
 今ちょうど渡韓していてファンをびっくりさせる準備をJO1はしてくれているみたいなので、彼らから贈られる楽曲も楽しみですね。KIZUNAツアーも次の音盤の活動も良いものになるのを願っています。

 読んでいただきありがとうございました。縁があればまた会いましょう。



ミトラ

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